書評―ユニオンジャックの政治パワー/河合 宏一
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書評って程ではないんですけどね。読んで気になったところをいくつかメモ。
○政党本位の選挙が行われる以上、マスコミの影響力は非常に大きい。ディリーテレグラフ、ガーディアンと言った高級紙は80万部、35万部といったところ。しかし大衆紙が大きな影響力を持つ。97年労働党政権の誕生はザ・サン(300万部)の支持が大きかったといわれる。
つまり我が国の四大、五大新聞というのが、高級紙でも大衆紙でもない異常な巨大権力を持つことは絶対に良くないことですねぇ~。少なくともタブロイドと高級紙はもっとはっきり分かれないといけません。署名記事形式ではない、高級紙なんてありえないですよ。
○車社会で通勤中のBBCラジオでの影響力が大きい。そこで政治家はスキャンダルなどの弁明を行える。
○増税=高額所得者に掛けられるものであり、サービスに見合ったものなら歓迎する向きがある。
○大学に青年部があり、政党の下部組織となってそこで人材育成が行われる。下院は世襲なし、実力主義。政府・党のポストも実力競争で獲得するものであり、年功序列はない。
○公務員も現職のまま立候補可能で、地方議員も国会議員と兼務が許される。労働流動性が高いために、落選してもリスクはさほど大きくない。
○官僚OBはいない。シンクタンク、医者、弁護士、税理士、郎組み、教員など実に人材輩出層が多様である。シンクタンクは政策を提案しながら、将来の政治家候補となる。
○五時以降は働かないから、選挙末一ヶ月の運動で十分であり、新人議員が地元に帰れず不利になるということがない。?ここの因果関係が少し?
○選挙費用の上限が決まっており、経済負担は少ない。戸別訪問中心であり、そこで議論は当たり前、反対政党支持者はあえて時間を潰そうとふっかけてくるから、それをいかに裁くかも議員の見せどころ。
○駅前で演説はない。一議員もボランティアと同じ活動をする。
○失敗やスキャンダルでも、メディア・野党は何がなんで引きずり下ろしてやると言った風土はない。だからこそ10年に及ぶ長期政権が珍しくない。より大きな国益を守ると言った観点から行動する。
○首相同様閣僚も長期にわたって就く。ポスト=出世競争と同じだから。議会秘書官、ジュニア・ミニスター、閣僚といったステップを踏んでいく。
○ウィルソン首相は政策室を作って、各省庁主導になりがちだったものを、首相トップダウンに強化成功。
○上院は世襲や貴族、下院が650名に対し、上院735名。我が国の議員削減がどのくらい暴挙かよく分かる話。
○上院はマニフェストに対して基本的に賛成するというソールズベリ慣行によって、下院の優越がなっている。
○改革は調整をいちいちしていたら、何もできない。だからマニフェストがある。そのマニフェストが通ったら、それに反対しない。
○上院改革、任命が大幅に減って、公選が増えていく。いずれにせよ、20%は非政党で、いかなる政党も多数派を占めないようにする。