書評―恐慌は日本の大チャンス 官僚が隠す75兆円を国民の手に/高橋 洋一
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高橋さんの著作は全て目を通しているし、納得できるので毎回新作もチェックすることにしてます。
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しかし↑2冊は読んでないな…。こんなの出てたのか、チェックしてなかった(´-ω-`)。見つけたら読んどこう。
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日本の大問題が面白いほど解ける本?シンプル・ロジカルに考える? 光文社新書
- 作者: 高橋洋一
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/08/05
- メディア: Kindle版
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今日付けの新刊も出てますよ、と。ググったら出てきました。でもなんか毎回かぶってる内容多いんだよな。高橋さん。んで感想とか、メモを。
まず誰もが、上げ潮派・改革派、官から民への代表的論者でブレーンでもあった高橋さんの逮捕に驚いたはずです。一体彼に何があったのかと、本書の高橋さんの説明によれば、疲れていたため、忘れ物を届けようとしたのをうっかり忘れてしまい、それが警察に捕まった理由だと。んでそういう言い訳されると面倒なことになるよと言われて、外に出さないという理由で、書類送検されることを呑んだという。自分は時計の持ち主に興味があったなどと言ったことはないという。そしてその約束にもたがわず、結局高橋さんの件は外に漏れて、大学教授の座も奪われたという。一応納得できる話で筋は通ってる。己としては警察が恣意的に行動することや、マスコミの警察発言を鵜呑みにする傾向からどうしても、高橋さんの主張に納得せざるを得ない。
―ではあるのだが、もし事実がそうであるのならば、高橋さんは約束が違う!はめられた!と主張して、植草さん*1のように戦わなかったらおかしいだろう。何らかの取引を持ちかけられて、それに同意をした結果であって、実際は盗んでいないというのなら、無実の罪で冤罪で離職に追い込まれたのだから戦わないとおかしいだろう。
事実佐藤さんとの対談で、霞ヶ関の人間は計算能力すら疑問があると言って怒らせてしまった。佐藤氏いわく、それが彼らの逆鱗に触れたとハメられた理由を説いていた。さらに警察は情報を漏らさず、検察が情報を一斉リークした。にもかかわらず植草さんほどではなく、扱いは小さかった。竹内さんはそうせざるを得ない状況に追い込まれたと言ってる。痴漢冤罪のように認めれば、逮捕しないと。
というか日本の司法制度は一体どうなっているんだろう、疑われたらもう犯罪者…。痴漢犯罪は知っていたが、こういう窃盗までそんな風に処理されるとなったら冤罪だらけでしょ…。この件書くと長くなるから、書きませんが、とりあえずそう取引したとしても、それが破られたのだから、戦わなくてはおかしい。そこに別の事情があるとしても、それを表に出せない以上何らかの疚しさがあると見ます。そう見ざるを得ません。
しかしそれはそれとして、高橋さんの言説・論理は別の話。氏の内容は傾聴すべきもの、犯罪者であるかどうかなど才あらば用いる=唯才主義の己にとっては竜車の前の蟷螂に過ぎません。長くなったので、以下本編↓
日本経済の需給ギャップは75兆円。政府紙幣発行で25兆、埋蔵金25兆、金融緩和25兆で達成しろ。そして地方分権推進と社会保障を立て直せ!というのが主な主張。
○麻生政権は官僚専制体制の復活、10兆に及ぶ補正予算の内容で基金が46で4兆円に及ぶ。なぜか?それは天下り先であり、規制という権限行使であり、かつ配分された予算を自由に使え、上前をはねられるからである。今後も基金が出来る!となったら注意が必要!というわけだ。景気対策に基金というものの効果は薄い。一気にどかっとつぎ込まなければ効果は出ない。4年4兆より、1年2兆の方が効果がある。
○減税・給付金が基本。エコポイントなどというものは省エネ製品=それを管理する経済産業省&その認可法人がかんでいる。認証機関が天下り先になり、不透明性が増す。普通は民間団体がやる。批判をかわすためにトップを民間人。実際は天下った専務理事が行うから、「専務理事政策」といわれる。
○高速無料は先進国逆行。ETCを配布して走行距離に見合った料金を取るべし。クリーンなら新幹線を値下げした方が良い。むしろ代金を環境税としてとらなくてはならない。世界ではETCはタダ同然。日本はやはり天下り先が絡んで、使わない余分な機能をつけているから高い。
○鳩山邦夫の社長攻撃で、こういう会社に民間の人間が来ることはない。政争の具になって安定した仕事に就けなくなる可能性のある企業に誰が来てくれるのか。さらにかんぽの宿の値段は全部としてみたもの、中には採算の取れないものが混じっているので、かんぽだけの値段を付けてもあまり意味はない。
収益還元方で将来どのくらい利益が見込めるかという上での値段。つまり、金を生めないからあの値段。高橋自身の計算でも、外部でも大体100億程度で、オリックスの落札額109億は妥当。かかわった本人の言だから、信用性が少し落ちるが、以前紹介した小宮さんも同じようなことを行っていたから信用していいのではないだろうか?
おかしいと思うなら司法手続きをとれば良い。大臣なのだから資料は手元にある。それを誰かに見てもらえば不正かどうかは一発でわかる。しかも前大臣引継ぎの際、これはおかしくないかといって説明する時間・機関がある。そのときに聞くのが普通。つまりこれは後出しじゃんけんに近い。己はルイージ鳩山さんはあまり評価してきませんでしたが、この一連の流れを見ると…と思わざるを得ない。これを見れば郵政に対する反対運動→後の国民新とのつながりを模索してるのでは?と思われても仕方ないのではないか?
○総務省のご機嫌取り「波記者」。現在最もタブーな改革は電波利権の開放。携帯が切れやすいのは空いている電波が小さかったから、少ないものしかあてがわれていないため、もっと増やすべきなのにそうなってない。電波をオークションにかけるのが普通なのに、オークションが行われてないのは北と日本くらい。空いた電波は既成のテレビなどが持っていく。マスコミを敵に回せないからまともな政治家の言動は世に出てこない。舛添もみのもんたを恐れる。そして高橋さんは、あまり褒めない民主党を、このオークションをやるといっていることで褒めてますね。
○既に役割を終えている政策金融機関。普通はあっても1つか2つ。日本のように8つもある国はない。危機においては恒常的な組織を作らないのが原則。その後もその強力な組織が生き残ってしまうから。麻生政権時、あっさりこの無駄なものを復活させた。日銀がCPの買い入れをせずに日本政策投資銀行がやっている。銀行がやると総量でマイナスになる。日銀ならそうならない。またCPだけでなく、中小企業手形も購入すべき。勉強会で話したら民主党は賛成したらしい。日銀と財務省は効果が薄い策を行うのは、今後の影響力を残すため。
○麻生政権は完全に官僚の僕。社会保障省と国民生活省への分割は、省庁増やして官僚の利権を増やすため。単純に言っても増える=ポストが倍。統合した厚生と労働は未だに仲が悪い。だからこそ、こういう省庁では古い人間は首切って、縄張り争いがない若い人間の方がいい気がすると思うのは己だけか?ナベツナが先導したらしい。舛添さんが大変なのではない。副大臣がいる。スタンドプレーが好きでヒトの使い方を知らないだけ。ところが幼保一元化で権限奪われる文科省が、森を通じて反発・頓挫という利権衝突で幕引き。
○予算は必ず作れるという言葉が財務省にはある。予算を組み替えるか、赤字国債を出すか、埋蔵金を出すか。財務省は民主批判材料を自民に提供しつつ、民主が政権とったら、その予算どおりに作るという二段構えでいる。
○これ以前書いたかな?文科省の教育予算を奪って、親たちに使い方を決めさせる。そうすれば文科省を見ていた学校・教師は親を見るようになるので教育はまともになる。というか教育改革なんてこれ以外にありえないだろう。
○恐慌と不況は違う。歴史的に見て深刻化したのはその後の対策をちゃんとやったかどうか、不況のように対処して恐慌を深刻化させては絶対にいけない。そしてオバマ政権はその恐慌研究の権威ローマー女史とバーナンキを据えた。ローマー女史は共和党の人物だからもしかしたら選ればれないかもしれなかったが、オバマは彼女を評価したわけだ。
○同志社大浜矩子氏は日本がサブプライムの震源地だと唱えたが、実際はそれほどひどい影響を受けなかった。それもそのはず世界的投資をしてないから。世界平均で-0.5%成長なのに、日本は-2.5%成長。何故か?それは日銀の政策の失敗による。06/3デフレ脱却していないのにも関わらず、金融引き締めに踏み切った。そして麻生首相も政府がマネーを供給する決断をしなかった。高橋氏の日銀/政府が適切な対応をしない場合の、潜在GDPと実質GDPの推移は見事に当たったと。
○日銀の適当な予想に対し、マーケットの予想/物価連動国債を見れば今後日本がどうなるかよくわかるBEI=通常国債との差を見ると今後も物価は下落10年で30%以上下がると見られる。高橋氏の試算では半分から3分の2まで下がるという。
○GDPギャップが増える=失業が増える。アーサー・オークンという学者の名をとってオークンの法則という。失業率1%=実質GDPの低下3%。失業→倒産→貸し渋りのスパイラル。
○定額給付金のような効果が不透明なものはいちはやく成立させるのが筋。台湾のように、遅くとも政権発足3ヶ月以内に通すべきだった。大きかったのは定率減税廃止。実質的な増税だから影響は大きかった。予算編成まで景気悪化を黙っていた。その方が都合よく予算を作れるから。
○民主党の経済対策は役人を通さずに直接行うからいいとしても、マクロ経済政策は財政支出を増やすのではなく、組み換えだから総量が増えない=効果なし。
○09/3FRBは3000億ドル=約29兆にも及ぶ国債買い入れ決定。日本に同じことが出来ないはずがない。バーナンキいわく、日銀がいざというときのために損失を気にして動けないのなら存在意義がない。
○政府紙幣は当年でドカンとやれる=有効需要を創出できる。ルーズベルトがGDP5%に当たる30億ドルだから、500兆の5%の25兆円提案。心理効果が何より大きい。経済はスパイラル現象であり、この負のスパイラルを打ち切るために、心理効果から見てこの政府紙幣発行はかなり有効であると己も思う。大久保利通・大隈重信も明治維新政府成立後、太政官札を作ったし、本土復帰前の沖縄にB円が使われていたが、大きな混乱はなかった。米ではリンカーンの時代でも、ケネディ政権時にも、政府紙幣は発行されている。
○政府紙幣=ハイパーインフレ論はアホ。デフレで困ってるのに、起こるわけがない。政府紙幣発行後のインフレ退治で、今度は松方デフレに陥った事例があるが、当時と現在では状況が全く違う。デフレ中和のインフレ策なのに100年に一度の危機という認識がない。深尾慶応大教授が偽薬・粉飾と非難したが、日銀が回収したとき政府が償還しなければいけないという前提に立っている。しないでそのままほうっておいて良い。ここは少し疑問。まぁインフレになったときには政府が回収しなくてはならないだろうが、今後数十年単位で見てあるかないかぐらい、インフレにはなりにくいということだろう。確かに世界的に経済がつながっている現在インフレは殆ど考えにくいだろうし。
○日銀の独立性を脅かすという批判は当てが外れている。日銀の独立性とは、手段の独立性=金利を動かす独立性であって、目標の独立性は存在しない。日銀法第四条にも政府の方針を理解し、それに従うようにとある。日銀が独立して98年から約10年程度だから認識が浅い。
○福田政権時、渡辺嘉美さんとファニーメイ債10兆円を出資証券にしようと提案したがが却下された。結局IMF支援に形を変えた。ブッシュの隣に座るためのテーブル代と揶揄される始末。
○金利がゼロになる流動性の罠状態では金融政策は無意味で、財政政策しか効果がないという定説はいまや通じない。ルーズベルト政権時に有効であるものは金融政策であったという分析がいまや主流。
○先進国でインフレ目標を持たないのは日本だけ。米FRBは物価だけでなく失業率にも責任を持つから、今のところやっていないが、バーナンキ氏が今後導入することは充分にある。米でもデフレ退治は念頭にある。それがないのは日本くらい。
○小泉改革はしたたかな面があり、改革派の竹中=A面と、霞が関派の飯島・丹呉=B面という二面性があった。竹中構造改革は世界の国でやっていて、日本がやってないことを探してくれと小泉首相にいわれたこと。つまりは日本を「普通の国」にすることだった。この点で小沢・小泉という鏡で結ばれた人間像が見えて面白いところ。
○竹中批判は筋違い。竹中さんが主導したのは優勢民営化と不良債権処理だけだから。そのほかの政策で彼を否定するのは論点がずれている。改正労働者派遣法は当時の坂口力厚労省が進めたもの。竹中さんとは関係ない。むしろ官僚主導のB面たちが進めたもの。当時竹中さんが考えていたのはオランダモデル「同一賃金労働」原則に沿ったものだった。現派遣の問題は、オランダのように失業時3年の保険というセーフティネットが充実してないためにオランダモデルが良かった。
○厚労省は改革を六度潰した。2001社会保障個人勘定という一括化~2008社会保障カードと、形を変えてようやく導入するまで、実に六回の提案を拒否された。しかもこれでは、当初の社会保障と税の統合を進める「給付つき税額控除」にならない。これまでは「貧困の罠」、稼いでも税金になるから働く意欲が失せると言われたが、その弊害をなくし、さらに給付でより再配分につながるシステムになる。これを導入しているのは米加英仏・アイル・ニュージ・韓国・ベルギー。特にブレア政権時に導入して高い評価を得ている。幸い自・民ともマニフェストに掲げている。この制度があればいくら年金がもらえるか一目瞭然なので、安心になる。一括化=行政のスリム化、安心、アングラマネーの捕捉と一石で何鳥ものメリットがある優れた策。
○郵政で一番まずいのは民営化でも国有化でもない中途半端なもの。一番都合がよくなって、特定郵便局長も旧官僚も得をする。民営化を装って政治活動も出来る。そして完全な民営化でもないからリストラもない。民主党を試す試金石になる。この話はまさに今の状況をよく象徴してると思う。このまま公営でも民間でもない鵺会社が長期間存続し続けるのはかなり困難だと感じる。
*1:植草さんの著書の内容について触れてはいけない。いいね?