てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

ロムニー大統領で日米新時代へ ~2012年アメリカ大統領選を追う~ 日高義樹

ロムニー大統領で日米新時代へ ~2012年アメリカ大統領選を追う~/徳間書店

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 ロムニー大統領で日米新時代へ ~2012年アメリカ大統領選を追う~ By日高義樹を読んだ感想をちらほらとつぶやきます。メモがてらに。レビューといっても書くことないから、スッカスカなんですけどね。

 まあ、タイトル見て分かる通りおもいっきり予測を外したものなんだけども、長年アメリカでジャーナリストやっている氏の論評が通じなくなっているという現状があるのかな?アメリカ政治・経済・社会が根本的に変わりつつある時代の節目と言える転換点にあるんじゃないかな?という感じがしました。

 アマゾンレビューでは外したからm9(^Д^)プギャーってのがありますけど、予測・分析では当たり外れはさることながら、そこに至るまでの筋道が重要ですからね、そこを読まないといけません。かといって、それがいいかどうかまあ、微妙なところ。というのも既存の共和党、アメリカ保守の見方で説明して、論じているだけですからね。

 ニクソン以来8人の大統領選を見てきた。オバマは前回大量の資金を集めることができた。結果当選したのだが、今回は全く資金が集まっていない。資金が集まらない大統領候補は負ける。オバマは経済がわからない、ロムニーは資本・民主主義を理解している。彼なら経済を立て直せる…。

 p30アメリカの予算は大統領案をそれぞれの委員会が審議をする。しかも小委員会が中にあって個別に審議をする。委員会の委員長は年功序列で独裁的な権力を持っている。いわば独立した城を持つ城主であり、個別に対応をしくてはならない。2010年の選挙で共和党が下院で躍進した結果が件の予算停滞。

 議会のシステムを理解していないから、共和党のトップベイナー下院議長と話しをつければ、それで済むと勘違いしていた。マッカーシーやカンターといった生きのいい若手が動かしていることを理解していなかった。予算の紛糾は上院議員を二年務めただけの議会政治の素人であるがゆえの混乱。

 議会運営は慣例としきたりでなっている。交渉の結果妥協を図るものなのに、政治経験が浅いままホワイトハウスにはいったからそういうことがわからない。議会の実力者と知り合う機会もなかった。アメリカ大統領には国家安全保障法に基づいて世界を動かすためのスタッフと国内向けのスタッフが居る。

 議会政治や選挙のためのスタッフがいるが、オバマは就任早々ロビイストは使わないと明言した。子飼いの信頼出来るロビイストがいないことが今の混乱の原因。ルーズベルトルームのスタッフも20代と若くキャリアを積んだスタッフがいない。このような特殊なホワイトハウスはカーター時代のそれに似てる。

 これが議会政治の停滞をもたらすか、それとも新しいオバマ的な慣習を成立させるのか…といったところでしょうか。しかしまあ、そういうものが作り出せるか、オバママジックがあるかどうかといったら…うーんって感じですけどね。

 p38ウィスコンシン州スコット・ウォーカー知事が12年6月のリコール選挙で勝った。史上リコール選挙で再選された例はなかった。次の大統領候補とまで言われる大騒ぎ。公務員組合「聖なる牛」の自己中心的な動きに対する有権者の審判。氏はNHK時代の労組の傲慢さと比較している。

全然関係ないがNHKの痴漢で捕まったアナの人は原発関係の陰謀云々よりも、NHK内部のこうした改革だったり、労組の人だから排除したかったという流れのほうがよっぽど納得できる気がする。あの事件に関する話あんまきかんなぁ。結局どうなったんやろうか?

 p49ハリーレイド上院院内総務が与党民主党を取り仕切っており、彼はオバマに次ぐ権威と実力を持っている。その彼が側近の不祥事で失脚。上院&与党の要人の失脚でますます窮地に(実際はそうならなかったわけだが、別の上院のトップがうまくまとめる力を持った人物だったのか)。

 p51にもチラッと書いてあるけども、そもそもアメリカは州の独立性が強いんだよなぁ。豪族の集合体、豪族たちはそれ故必要最低限の権力しか大統領に持たせようとしなかった。英が世界を動かしてきた「覇権」を担ってきた頃はそれで良かったが、第二次大戦後覇権をアメリカが担うと話が変わってくる。

 そういった歴史的経緯伴った政治システムを、アメリカが世界を動かす・覇権を担うことを前提とした政治システムに一から作り直す時期に来ている気がするんだよね。以前述べた東西正副皇帝化でもいい、ポスト覇権体制でもいいし、とにかく抜本的に新情勢に併せた形に、システム改革をすべきだと思う。世界帝国としてのアメリカという制度と、国内政治を動かす国民国家としてのアメリカという制度の内部矛盾が非常に大きくなって、調整つかなくなってきているという気がしますけどね。

 p77ヒスパニック系の票を取り込むために、彼らでも家が買えるようにブッシュはサブプライムローンを作った(今回の選挙でロムニーが敗れたのはその痛い目を見た人が共和党はノーという反発があったからではなかろうか?)。

 p78女性と若者はオバマを支持している。特に女性は50%超。 ポイントは中間票、普通のクラスを取り込めるかどうかで、結局ロムニーは取り込めなかったわけだ。前回のブッシュの失敗で結局共和党の信頼が地に落ちた結果ではなかろうか?ブッシュを押した共和党長老たちに対する決定的不信というか…。モルモン教は一体今回の選挙にどう作用したのかねぇ?

 p94これまでの大統領候補と違い宗教的経歴が異端という点では共通。ビジネスでの成功、マサチューセッツ州知事としての赤字削減などの功績があるが、州知事の父に上院議員候補の母と毛並みがいいという点では全く違う。案外こういう毛並みの良し悪しで、よりアメリカン・ドリームに近いオバマか?

 p113中国は政治的にも軍事的にも大国ではない―なのに軍事がウンタラカンタラ言う変わった人だなぁ。単に言われるほど強くないって言いたいだけな?

 p238イメージ戦略がうまい。支持率は40%ぐらいでも個人への好感は60%。資本主義否定発言など従来の価値転換がオバマ再選のポイントか。

 p254オバマに対する出生証明書偽物疑惑。これなども毛並みの悪さの延長か?

 p265ペンタゴンのトップ、統合本部参謀議長が軍事費削減の前に戦略を決めて欲しいと大統領を批判。これはヴェトナム戦争以来のこと。まあこんなところかな、気になったポイントは。

 しかしまあ伝統的というか共和党よりの視点から書かれているわけだけども、変わりつつある現状、アメリカの変化とかこれまでに見られなかった声というものを見落とした結果じゃないかな?ロムニー敗北を読めなかったのは。最近色々戦略論じられているけど、アメリカの新戦略、世界戦略を見事に説いてるものってないもんな。