てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

小室直樹の中国分析、ソ連分析を応用して考える―中国経済は深刻な危機にある

元は10/10に書いたものです。今から見るとおもいっきりではないですが、ちょっと予想を外していますね。まああたっていると強弁することも出来ますが、思っていた方向性と少し違いますね。G2構造なんかすぐ崩壊するとは思っていましたが、その後アメリカはバカみたいに、経済改革の圧力をかけると思っていました。が、そうなりませんでした。流石に学習したのか?それともチャイナロビーみたいなものが功を奏したのか?中国経済についても丸山教授の分析があるように、一応中国のイノベーションという視点もあるわけで、今の中国観・中国経済観とは異なっていますけど、まあ当時の時代・拙分析の未熟さを反映するものとして改めて書くのもいいでしょう。あと例のごとく長いので分割しています。する必要性あるのか?という感が否めませんが、まあ一応。


 本編、メインディッシュに入る前に中国を巡る色々なことを先に書いておいたほうが好ましいであろうと思って、先にこちらを書くことにした。最近、小室博士のソ連崩壊についての分析を今一度読み直している。中国の行く末を読む上で、当時のソ連崩壊を振り返ってみることは有意義この上ないだろう。

 博士のソ連崩壊シリーズ、つまりソ連・ロシアものはソビエト帝国の崩壊*1ソビエト帝国の最期、ソビエト帝国の復活、ソビエト帝国の分割、ロシアの悲劇と五冊ある。まだその半分しか読んではいないが、重要なのはソ連崩壊の引き金が

 ①経済崩壊闇経済が表の経済を凌駕してしまい、二重経済システムが限界に来たこと。
 ②急性アノミーによる国家理念の崩壊(=資本主義諸国より社会主義国家・共産主義国家のほうが豊かに暮らせるという国家のテーゼの崩壊)。
 ③国家機構の暴走:下部組織の機能要請が国家の組織要請を超えて動くこと。本来国家の目的が最優先となって、下位の組織を動かすのに、下位組織が勝手に行動をすること

 ―およそ、この三点に集約されよう。そしてこの博士の分析を有益な補助線として、中国の未来を占ってみることにする。まず重要なことは中国の経済についてである。中国経済は今後も成長し続けるのか?答えはノーである。それは成長性、生産性の問題ではなく、根本的な矛盾がそこにあるからである。中国経済は内部に根本的矛盾をはらむ。それをなによりも理解していただきたい。②、③の問題も何より重要であるが、①ソ連のような闇経済の心配はないが、深刻な経済モデルの矛盾に突き当たる。このことを指摘したい。

中国経済の脅威の成長性の理由はたった2点である。
 ①膨大な農村人口の都市流入、都市化
 ②単純低賃金労働による雇用の創出。21世紀版(もしくは中国式)セイの法則の作動。

 圧倒的な低賃金で世界中から雇用を奪っている(この表現が悪ければ押し付けられている)ことにある。決して、中国企業の技術革新によって急激な成長を遂げているわけではないのだ。証拠にカーネギーメロン大学の誰かさん(忘れた。フランスのソルボンヌ大だったかなぁ…どっかの教授)氏の研究によれば、中国GDPの60%以上が外資によって作られているとのこと。この一点を見るだけで中国経済の本質がわかるといえよう。さらに中国経済は内需が30%ほどしかないのである。外需依存どころか、もう外需主導、外資主導経済としか言いようがない。このような経済モデルは過去に存在したことがないために、どの経済学者でも未来予測は非常に難しいのが現状である。また、参考になるのは中国人経済学者である胡鞍鋼
氏(たまに?という分析アリ)、関志雄氏などを参照されたし。特に関氏の分析はわかりやすく、本質を突いている、読みやすいのでオススメ。*2


 ここから引き出される結論はたった一つである。中国脅威論など幻想に過ぎない。少なくとも経済的な点では全くありえないことになる。今中国で生み出されている膨大な富は中国人が創っているものではないのだ。付加価値で分解してみるとよくわかる。アメリカ経済が経常収支の赤字で苦しんでいるのは何も今に始まったことではない。日米貿易摩擦の時代からそうだった。では日本企業が何でもかんでもアメリカを上回っていたのか?答えはノーである。

大前研一分析、日本の対米黒字の構造】
 詳しいことは大前研一氏の『大前研一の新・国富論』を参照していただくとして、当時の経済構造・対米赤字の根本的な問題は最終的に円として決算されたことに過ぎなかった。同じく今の中国の巨額黒字は中国で最終的に決算されているだけのことでしかないのだ。日本どころか韓国・台湾・フィリピンに至るまで、対米黒字を計上していた。それはなぜか?アメリカは国策として強いドル政策を追求しており、その結果不当に吊り上げられたドル、高いドルを利用して、相対的に安い現地で生産するようになったからだ。もしくは最終的にそこからアメリカへ輸入しているだけ。アメリカの経常赤字を作っているのは世界中に展開しているアメリカの多国籍企業なのである。アメリカが世界中に積極的に進出していった結果、もしくは世界的に展開しているアメリカ企業がどこの国からアメリカへ輸入すれば、通貨為替上企業が得をするか考えられた結果である。決して日本の経済政策が卑怯なものでも、日本企業が著しく生産性が高いわけでもなかったのである。無論、一部のジャンル、自動車・家電などは当時から今でも生産性はアメリカをしのぐものであったが。


【虚妄の中国経済脅威論―民主主義という難題】
 中国経済は日本を越えて世界第二位の規模となった。しかし、スターリンの重工業集中によって世界第二位の経済を誇ったソ連に、アメリカを震え上がらせた戦後経済大国となった日本。いずれも世界第二位という名誉を得た後で一体どうなったか?停滞と苦悩にさいなまれているではないか。日本はともかく、ロシアは言うまでもない。日本は未だに資本主義経済の原則、古典経済学をチーっとも理解していないが、日本には優れた製造業、技術能力、資本主義経済において優れた美点が数々あった。
 しかし中国はどうであろうか?日本以上に優れた美点を持った国民性であろうか?何より資本主義というものをどこまで理解しているといえるのだろうか?そして資本主義と民主主義は双子の兄弟である。その双輪の車で走るものである。どちらか育てば、どちらかも必然的に成長していく、どちらも欠かすことの出来ない存在である。日本が文化の問題と情報の公開をせずに世界中から総スカンを食った例は以前述べた。中国が情報の公開透明性を理解しているなどと一体誰が言えようか!?デモを平気のへの座でコントロールしようとする。バブルを崩壊させないために金融引き締めを当たり前のようにやる。いったいどこに透明性、公平性を理解する余地があろうか。中国経済モデルは根本的に大きな問題を抱えている畸形である。いずれ深刻な事態にぶち当たるのは火を見るより明らかなのである。
 中国脅威論とはつまるところ、経済成長の果実が軍事力に転化することである。経済力=軍事力という公式である。ただでさえ中国の軍事技術は米日に比べ著しく低い。近い将来高い成長は起こらなくなる。つまり中国脅威論は成立しないのである。

【深刻な通貨問題=アメリカ問題】
 中国がバブルであれば、アメリカも基本はバブル経済である。どんどん市場を活性化させ、経済成長を国是としている。赤字を減らすどころか、根本の大本の国家経済規模を膨らまして、相対的に国債の比率を減らすという形で国家財政の危機を糊塗してきた。アメリカは冷戦後、国策として日本叩き、対日財政赤字を減らすことを追求してきた。自由貿易と民主主義を追及する権化のはずのアメリカが市場原則を放棄して、日本に輸出数字、自動車の台数を設定したり、牛肉・オレンジを数値を設定して一定の量を強制的に買わせようとするなど、最早どこの国なのか全くわからない。なりふりかまわず管理貿易に舵を切ったその姿は世界中から嘲笑を通り越して、空恐ろしさすら感じさせた。

【次は経済単独主義化か!?】
 世界を支配する、ルールを決めるアメリカが自由貿易を放棄して管理貿易に舵を切るということは、世界のルールが根本からひっくり返ってしまうことを意味する。世界中の有識者が、これに震えたとか、震えなかったとか。まだ閉鎖性を強く疑われる日本のことであるから、なんとかなった。というか日本だけの話であろうと大方予想はついた。しかしサブプライム以後バイ・アメリカン法など、最早アメリカがてめえ勝手な経済体制、ルールを追求するのは間違いない。ネオコンよろしく軍事の単独主義の後は、最も怖い経済の単独主義である。

【G20の本質、世界経済新時代(BROCsの台頭)】
 まだまだ、幾分も先の話であろうが、アメリカは中国に圧力をかける。アメリカはイデオロギー、自由と民主主義を唱えながらも中国に対してはそれを強く要求してこなかった。安定した中国、共産党こそアメリカや日本の国益にかなうと見てきたからである。経済発展させて、民主化していくという大まかなヴィジョンを描いている。それはともかく、世界中の有識者共産党が崩壊して広大な中国をコントロールできない方が恐ろしいと考えている。しかし、その中国の経済成長をある種容認してきた、包み込んできたアメリカがその方針をいよいよ転換させる段階にはいってきたのだ。このインパクト、衝撃はいくら語っても語りすぎることはない。米中関係がいや、世界の経済体制が根本から変わりうるからだ。それが今回のG20のなによりの意義である。

【アメリカが新興国にノルマを設定する】
 これまではG7プラス1だとか、何だとか、サミットで話はついた。西側勝ち組陣営、軍事・経済力の先進国で大方話は済むからだ。G2とか、G20が意味するものは何か?その枠組みで解決しなくてはならない問題が出てきたことに他ならない。最早G7だけで世界経済を話し合っても解決しない重要な問題が出てきたのだ。世界的金余りこそがサブプライム問題の本質であり、「ユール」でも、「ドーラ」でも一元化された通貨が誕生しない限り、この問題が根本的に解決されることはないと大前氏が述べているように、アメリカが経常赤字を何とかしようと、国内の雇用を輸出している状況に何とか歯止めをかけようというのが今回のG20の本質である。

ソ連帝国に似てきたアメリカ】
 つまりアメリカの本音はこうだ。「お前ら経済成長してきただろ?そろそろオレっちの懐事情も限界なんだよ。莫大な商品を買ってきたんだから、そろそろ通貨を切り上げろ」ーこういうことである。本来通貨を切り上げて一方的な構造を是正しようというだけで終わるはずだが、日米交渉のときに懲りなかったのか、国内の要請か、保護貿易国化している。かつてのソ連がバーター取引を行ったように、黒字国にアメリカ商品の輸入割当を設けようとまでしている。最早アメリカは世界のソ連と化していると見てもいいかもしれない。

【G20は有効な世界の枠組たりえない】
 本来新興国が台頭してきたとき、旧既得権階層と合流して新しい枠組みを作るとき、取引が行われる。名誉ある先進グループに仲間入りさせてやる代わりに、新興国に対価を払わせる。新興国は名誉あるグループに仲間入りすることで世界のルールを作りかえる実権を持つ。あくまで取引なのだ、一方的に得をすることもなければ、損をすることもない。そうでなかったら誰が参加するだろうか。制度の真価、つまり戦争なき解決を導くのは、台頭するものの不満をいかにくみ上げることが出来るかにある。先進国が台頭国にいかに譲歩することが出来るかで、新興国の台頭を平和的に解決することになる。相手の不当性を責めるだけでは問題は決して解決することはないと、EHカー氏が説いた。これこそ国際政治学の一大業績である。
 新興国に一方的なノルマを課して一体どんな世界を導くシステムが生まれるだろうか。今のところ、アメリカを中心とした先進国が文句を訴えるだけの存在に過ぎない。

【反省なきアメリカ】
 アメリカは自国の悪いところ、誤りを見ないで、相手に押し付ける悪い癖がある。それゆえにイラク戦争なんて愚行に突入したし、日米貿易戦争があったわけだ。決して相手国に輸入割当、輸出自主規制を仕掛けても問題の本質は解決されない。アメリカの消費が強すぎる。つまりはドルの強さ、何より放漫財政&戦争にこそ、その問題があることは火を見るより明らかである。一体アフガン・イラク戦争でどれだけの浪費をしたことか、言うまでもないだろう。

【アメリカの方針が変わらない=中国の苦難の始まり】
 アメリカの問題はさておいて、このアメリカの無軌道が修正される要素は今のところない。イラク・アフガン戦争とはとどのところつまり、イスラエル絶対支持の中東戦争である。今後とも中東から手を引くことはないし、アメリカの中東での混迷はほぼ半永久的に続くであろう。中東政策を根本から見直すこと、戦争をやめること、そして財政赤字を減らすこと。このような当たり前のことがなされないのは、ほぼ一致した見方であろう。変革を予想させるオバマ大統領の誕生からあっという間に、方針転換と支持率失墜を見れば、よくわかる。おそらく次の大統領も民主・共和の誰になろうとも、揺らぐことはないであろう。changeを訴えながら、何のchangeなき四年間であった。

*1:全部リンクはろうかなとも思いましたが、絶版なので省略。再販はよ

*2:

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 論文読んだのかな?胡氏は?中国経済の本で数多く引用されていた気がするが、あんまり読んだ記憶が無い。本自体は読んでなかったかしら?本も12年と14年のものがあるし、読んでないかも?

 

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 多分、関氏の本はこの辺りを読んだはず。新刊結構出てますね↓。久しぶりに注文して読み漁ろうかしら?

 

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 未完の経済改革と、チャイアナズナンバーワンと、経済大論争あたりは読んだ気がするんですけどね。どうだったかな?調べればわかるんですけど、まあいいか。