てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

日米同盟は不平等条約 『China Rising』の感想として

過去記事の再掲です。元は10/12に書いたものです。

 公開するの忘れてました。【洋書】 China Rising: 著David C. Kangの感想ですね。*1


【基本的に日米同盟は不要、必要最小限に縮小すべし】
 はっきりいって朝鮮戦争以来、日本の安全保障には直接的な危機がなかった。そしておそらく今後もそうでしょう。基本は、緊張があっても実際の危機・戦争勃発には至らない。こういうふうに見ていいでしょう*2。日米同盟は要らないですね。少なくとも日本の負担が大きい安保はいらない。こういう結論になりますね。鳩山さんが主張した「東アジア共同体」という構想は畢竟、こういうことでしょう。鳩山流の脱戦後レジームですね。

 自制的な中国、抑制的な中国の誕生に力を注ぐべし。そもそも中国以外安全保障上の危機など存在しないのですから。そこさえ構造的に抑えてしまえば、日本にとって日米同盟・安保の比重はぐっと小さくなる。アメリカ一辺倒になる必要がなくなるわけですね。日米同盟、特に沖縄に大きな負担を強いている今の日米安保は絶対に矯正・修正されなくてはならないでしょう。勘違いする人がいそうだから、書いておきますけど破棄しろって言ってるんじゃないですよ。もっと合理的なもの、日本有利なものに変えよって事です。

中共を交渉の対手とせよ】
 中国共産党は基本的に日本のパートナーなんですね。ほとんどの人は誤解していますが、メディアがあの体たらくだから、一般人が誤解するのも仕方ないですけれど。中国人がいかに日本を嫌いであろうと、戦略上、首脳陣は経済安定が至上命題です。そのために戦争などできるはずがない。特に尖閣とか、台湾とか、領土問題では、国内上強硬な態度をとらなくてはならないが、戦争までする気は絶対にない。むしろ中国共産党の指導力が落ちて、軍が台頭したときや、内戦になったときのほうが日本にとってリスクが大きい。中国の崩壊は周辺諸国に波及して、ミャンマー&北は確実に崩壊しますからね。この話は重要なので、いずれ書きます。中国は戦争するどころか、経済上深刻な危機に直面します。(参照→
ソ連崩壊と比較して中国経済分析続き*3 )

 

【主体的選択で日米安保国益に叶うものに組みなおせ】
 中国共産党は基本的に日本のパートナーという話はさておいて、中国や北が万一攻めてきたらどうするんだ!という話になるでしょう。こういうことを言っている時点で、安保というものが根本からわかっていないといわざるを得ません。まず、攻めて来る危険性・可能性が圧倒的に低いのです。相手の戦略目標を分析したら、そんなことありうるはずがない。
 次に、それを理解したうえで安保条約は、圧倒的に日本有利にできること。日本の今までの安保政策はアメリカの言いなりでした。外交・安全保障政策はこちらが主体的に選択するものであるという発想に改めなくてはなりません。アメリカの世界戦略上、沖縄の基地は必要不可欠です。沖縄に基地があることなしに、アメリカは何もできません。「文句あるんだったら、手前らに以後基地使わせねぇぞ」、そう言えばすむだけです。もちろん決裂したら元も子もありませんから、交渉の駆け引きとしてね。今の条件は日本に不利すぎる。対等な条件に戻すように強い態度で交渉に出なければならないの言うまでもないことでしょう。

【沖縄の基地はアメリカの世界戦略に必要不可欠】
 アメリカの世界戦略に沖縄の基地は必要不可欠―これを理解していない人間がどれだけ多いことか*4。補給なしで中東で戦争できるのか!といえばよろしい。沖縄に基地がある。ただそれだけで日本のアメリカに対する貢献は想像を絶するものがあるのです。そんなことがなぜわからない。なぜ主張しない。この国の外交官と政治家のレベルはいったいどうなっているのか…。
 安保=同盟を以前説明しましたよね。「見捨てられ」と「巻き込まれ」だと。同盟を結んでいるから、日本は100%基地を使わせなくてはいけないんだ!なんてことはありません。トルコ・サウジ・フィリピン、その他諸々の例を見て御覧なさい。基地を使うとき、それぞれ国家が判断する権利を持っています。その戦争が 同盟に値する事項かどうか、判断する権利は当たり前にあるのです。
 三国同盟を見て御覧なさい。ヒトラーは日米戦争で、自動的にアメリカとの戦争に踏み切りましたか?アメリカと戦争するしないは、最終的に総合的判断によるのです。ヒトラーがもしこのケースは三国同盟の範囲に値しないといえば、ドイツはアメリカと戦争する必要はなかったのです。また第一次世界大戦の際の独の、英の参戦理由を見て御覧なさい。バランスオブパワーから言って、まさか全面戦争にならないだろう。死活的な利益じゃないからと、まさかこれが参戦理由にはならないだろうと、どの国も明確な意志決定、この戦争・権益ならば!といった明確な意思は微塵もありませんでした。第一次大戦は偶然の結果起こった全面戦争でありました。論文忘れたな…。なんだったっけ?確か日本人だったが、まぁいいや。この手の論文は有名な研究なんで、トップの意志にかかわらず誤解が誤解を生じて全面戦争・世界戦争なんていうのはいくらでもありますしね。ナイなんかも『国際紛争』で書いていましたしね。

【日本は計り知れない対米貢献をしている】
 沖縄の基地を使わせない。一言こういえば、対米関係は簡単にひっくり返ります。常時侵略目的で使わせることは国民感情から出来ない・理解が得られない。この錦の御旗を掲げれば、対米譲歩なんてあっという間に引き出せるでしょうに。イラク戦争、中東における戦争のどこに日本の死活的権益・危機があるでしょうか?安保ただ乗りはいったいどちらなのか。「基地を勝手に使っているのはお前たちのほうだ、得をしているのはお前たちのほうだ。使用料を払え、不平等条約を解消せよ」―そう言わなくてはなりません。

 武器輸出三原則も、海賊退治・海外基地建設もこの主張のための前振りとしか思えませんね。でもまだまだ狂瀾を既倒に廻らすにはいたらないでしょう。今のところ日本の政治家で最も理解している小沢氏にして、外交についてはあの程度でしょうから。短期的にドラスティックに変わることはありえないでしょうね。

*1:

China Rising: Peace, Power, and Order in East Asia (Contemporary Asia in the World)

China Rising: Peace, Power, and Order in East Asia (Contemporary Asia in the World)

 

 気になって今見たら、何冊が本出てましたね。読もうかな~、VictorChaさんとの共著もありましたしね。時間さえあれば…ぐぬぬ

*2:無論、安全保障の空白を生み出せばそれが危機を誘発する。自ら戦争を招来しかねないので無防備になるべきだ、軍縮せよとはいいません

*3:まあ元高などによって中国経済はいずれ停滞・崩壊ということになるという話ですが、国際情勢などもあって米の圧力もさほどではなく、今日まで中国経済は余裕でしたね。まあ今後成長率も鈍化してきて大変なことになると思いますけど(負け惜しみ)。

*4:例えば今トランプが話題ですが、日本はアメリカを守らない!ふざけるな!なんて言ってますが、では沖縄から出て行って下さいといえば、あっさり黙るでしょうね。外交の「が」の一文字も知らないド素人だということが、あの発言だけでもわかりますね