続、ルトワック『自滅する中国』
- 自滅する中国/芙蓉書房出版
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ルトワック氏は小沢についてあやしい政治家、中国に媚びへつらう政治家としています。中曽根についても中国の天下システムを良しとする人物というような評価があり、日本政治についてあまり詳しくない、よくわかっていないのでは?という感じがします。中国文化の解釈も微妙な感じを時々受けました。
己が小沢を評価するから、否定的な評価をされて「なんだと!」となったわけじゃなくて、マイナス評価をするならするで、根拠をしっかり提示して欲しいんですよね。明確な依拠する文献・学者の見解がない。中国から賄賂の噂という印象論なんですよね。根拠が明示されていない点で、かなりマイナスポイントですね,
ココらへんの分析は。
東日本大震災における米軍と空母のプレゼンス、そして中国の怪しい挙動が民主党政権の外交方針をひっくり返させた。何度も指摘していますが、中国に好意的とされる民主党政権時代に、愚かな反応を示して、米日関係を強化させてしまった中国外交の愚かさは、いくら指摘してもし過ぎることはないですね。
ASEAN国防相会議ADMM(ASEAN Defence Minister's Meeting)で、+6から、+8=米露が加えられたのは、中の軍事的影響力の低下を狙って行われたもの。中国がASEAN諸国の懸念を招くと必然的に他の強国の干渉を招くことになる一例。
ルトワック氏は韓国を(中華)天下システムの従属者としています。ひょっとしたら「韓国がこうなのだから、日本にもこういう勢力があって当然」という類推をしているのかも?「従軍慰安婦」は脅威である北への無策に対して、そうでない国をいらだたせる「現実逃避」だと指摘していますが、その通りでしょうね。
当然外交の論理を無視して現実逃避をすれば同盟国からの信頼を損ないますね。しかし、韓国のこれが現実逃避でないとしたら、日本の同盟国としての復活への準備と見ることも可能ですね。日本の傘下で拒否権を行使するための国民の反感というカードがいる。その準備、反日感情を絶やさないことをしている。―となると、反日という感情・ロジックはつまるところ根底に「日本への恐れ」を見出だすことが出来ると言えましょう。
インドネシアは非同盟運動や東ティモールなどのことがあって反米だった。ところが98、99年の南沙諸島占領があって、ベトナム・フィリピンなどとの衝突もあり、米に接近する。05年津波の援助が反米的なイスラム国家に海軍への尊敬を抱かせた。06年豪が補完する安保強力枠組みに。
10年には対南沙でCARAT、イネ・ブルネイ・マレ・フィリ・シンガ・タイで対中枠組みに至ったと。かと言って完全に反中姿勢というわけでもない。インドネシアは天下システムの韓国と、対中国で国家を建国したという神話を持ち、中国に対抗的なベトナムの中間にある中立モデルとみなすことができようか?
ポイントはアジア太平洋安保・外交にポイントになったのが「空母」というところですね。軍事要素ではなく、万一の災害救助に大きく機能する空母・海軍の存在の重要性。これを見ると日本は空母なければ対米自立は不可能といえそう。
現実味のない仮定の話だが、米空母がこの地域から撤退して、中国が海母を持てば、万一の危機(有事であれ災害であれ)の際、中国がそれについての責任を追うことになるということ。この地域への影響力拡大を狙う中国は空母保有を絶対に進めて放棄することはないだろう。
外務省でも財務省でもどこでもいいが、官僚が民主党政権を「危険な火遊び」と見なして、米を向いていたとしても、それは正しい判断であろう。万一の際に日本単独で有事に当たる能力がないのだから、「対米交渉能力」のない政権に抵抗するのは当然だろう。
日本は「民主主義国」でもなければ、「独立国」でもない。ゲームの基本前提を無視したところに、民主党というか55年体制崩壊後の政治改革ムーブメントの失敗の本質がある。この改革の中心にあった「小沢一郎の失敗」の本質も同じだろう。ゲームの前提を誤認したことにこそ、失脚・失敗の要因があると己は思う。
議会政治や民主主義ルールで戦って選挙で勝てばいい・政権交代すればいいという楽観、現状認識の誤り。誰か一人優れた政治家がリーダーになれば世の中を大きく変えられるという認識がそもそもの間違いだったということですね。
05/09フォーリン・アフェアーズで鄭必堅が中国和平崛起という言葉を唱えて以来、中国は国際秩序を守る路線を取っていた(のち崛起から発展へ修正)。新秩序を打ち出さない、現秩序への参加とルールの遵守、地域覇権を唱えない、領土問題に軍事行使しない、軍拡の最大化をしない、経済ルールの遵守香港・マカオの平和、台湾が独立を唱えなければ直接叩くことはしない。
―これら諸条件が、胡錦濤時代の国際協調時代の基本路線で、国際社会もこれを歓迎していた。しかし今見て分かる通り、それら諸条件について中国は守るかどうか怪しい姿勢を見せている。将来的に習政権が挑戦的な路線を打ち出す可能性もアリか…?
米には対中アクターとして①財務省②国務省③ペンタゴンとそれぞれ違った見方をするアクターがあると。それ故統一された長期的戦略は難しい。まあそれはどこでも大体同じですね。国防系インサイダーである氏は優秀で参考になりますが、それ故の問題もあるという感じですかね?
特に分割する必要もなかったかもしれないけど、まあいいや。
※追記、英海軍から海自が連絡官を受け入れるという話がありました。こういう米以外からの同盟圏にある諸国との関係を強化するのが、日本外交にとって非常に重要なポイントになるでしょうね。