てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

アジアインフラ投資銀行AIIBの話

アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank)について。

 大体出資比率が中国30%、インド10%、インドネシア・独・韓国が4%に少し足らない程度と。アジア域内に75%で、それ以外が25%だと。欧州なども参加表明した影響があって、それでちょっと変わるかもしれないけれども、取り敢えず当初の数値で概算して、そこにGDP比率で60%・PPP=購買力平価40%で出資比率を計算したらこうなるという話みたいですね。

 ロシアがアジア扱いになると、中国の比率も落ちる云々言われていますが、まあそんな大した話でもないので。

 このAIIBについて参加するしないが一時話題になっていましたが、果たしてそんな話題にするほどのことか?と思いました。中国が新しい機構を提唱したと聞いて、ああやっぱりねくらいの感想でしたね。

 中国は、ドルがだぶついている。それを有効に使うには独自の組織を作ってそこで使うのがいい。で今回はそれが開発系銀行となったという形ですね。ドル建てでただ投資したり、貸与したり、ドル建てで決済をするよりも、元建てで決済をした方が影響力が強まることになりますからね。いきなり元オンリーにするよりも、ドルとかユーロとか円とかおててつないで協調して信頼性を高めるのがいい。

 中国の覇権奪取だ!なんていうのを見ましたけど、その魂胆がないわけじゃないにせよ、やってることは既存経済体制のおんぶにだっこなんで、取るに足らない話しですよね。

 現在だと、ADBですか?アジア開発銀行という既存機構が既にあって、わざわざ新設する必要性がない。そこへのガバナンスに関与すればいいだけですからね。その関与でもなく、既存問題点への「改革」が失敗したので、新制度による補完的枠組みの提唱とか、筋道通った大義名分のある「挑戦」でもないですし。単純な地域的影響力のためでしょう、これは。

 既存のだと、基準が厳しい。だから中国流の新基準でやることになるのでしょうけど、それで成功しますかね?大失敗する!コケる!とはいいませんが、成功する反面、色々なトラブルを引き起こすことは当然予想できますよね。*1

 欧州の場合、今ロシアとギクシャクしていることがあって、対露外交上中国との関与を深めておこう。出資比率が低くとも儲け話には乗っておこうというところでしょうか。当然、ガバナンスに問題があれば、彼らは脱退を検討することになるでしょうね。

 中国人は「面子」を重視する。一度参加した欧州勢がガバナンスがなってない!不透明だ!と非難されて集団離脱されれば面目丸つぶれ。彼らの参加によって、国際制度・機構として面目が立ったわけですから、彼らの批判について敏感にならざるをえないでしょう。参加しておいて「離脱」をカードとして利用するというのはうまいやり方だと思いますね。


 【韓国のAIIB参加、カギは「北」だった…】 www.sankei.com/world/news/150

 こんな記事もありました。米に「韓国がAIIBに参加するなら、米韓の信頼関係を壊す」とまで言われているのに、よく参加したもんですなぁ。米中協調&北の取り込みというのが可能だと考えてるんでしょうかね、韓国さんとしては。中国に対して過剰なまでの思い入れがある気がしますね。AIIBが張成沢処刑以来の中北関係の改善につながるんでしょうか?

 例のごとく、台湾をこの試みから排除することで、中国の政治的主張を浸透させようというのが面白いですな。もう一つついでに、最近従わない・扱いにくくなっている北朝鮮についても自分たちの意見を通させようとする試みでもあるのが面白いところ。融資を受けたいなら中国の審査基準をクリアしろよ=中国の言うことを聞けよということですからね。

 経済力を政治力に転嫁しようというのは当然の発想であり、うまい試みだと思いますが、中国の力をあまり押し付けすぎると当然、やり過ぎだと反発を招いてしまうので、そこまで地域経済覇権確立につながることだとは思えませんね。そりゃやらないよりは影響力が増すのでいいのでしょうけどね。


 中国が日本に参加要請して断られていますが、そりゃそうでしょうね。どうなるかわかりませんから、参加して安全安心となってから後追いすればいいだけで。AMF・アジア通貨基金構想を潰された日本が、それに協力しなかった中国に、AIIB参加を提唱されて「ハイそうですか」とすんなり参加すると考えるほうがおかしいと思いますけどね。多分日本の企業とかが「参加を!」なんて煽ってるんでしょうけど。

 まあ日本のお偉いさんには「あの時米さんがAMF潰さなければねぇ…」と嫌味の一つでも言ってやればと思う所であります。日中が協力して地域機構を作って安定化させていくのが地域秩序にとっていいことですから、もっとお互いにとって相互利益になるような試みを色々進めていくべきでしょうね。


 『自滅する中国』に、パワーを行使して逆に周辺諸国が反発して反中包囲網が形成されると書いてありました。この力学故に、中国は自滅するだろうというロジックがあるわけですが、AIIBについては日本主導で地域機構設立をやらせておけばそういうことにもならなかったとも言えなくもないわけですね。

 アジア通貨基金があるんだから必要ないだろで却下される可能性がなくもなかったと思います。作っても、アジア通貨基金と比べられて、それを意識したものにせざるを得なかったでしょうからね。日本の試みを「地域覇権を唱えるつもりか!?」なんてナイーブになる必要性はどこにもなかったですからねぇ。まあ自滅する米?


 そういえば安倍さんの談話に、中国の領海侵犯についての非難がありました。いわく、「力による一方的な現状変更」はやめるべきだと。個人的にAIIBは脅威でもなんでもないと思っていますが、AIIBのような取り組みも「力による一方的な現状変更」というロジックで捉えられるとすると面白いですね。

*1:長谷川さんの本だったかな?で、書いてありましたけど、当然既存の基準だと既にアジア開発銀行などで融資が済むので必要ない。AIIBはそれよりも基準をゆるくしてリスク高いものに手を出すことになる。それがノウハウ・当該地域とのパイプが豊富でもない限り失敗する可能性が高いわけですよね。ですから、まあ別に驚くことでも何でもないですよね。損失見込んでの投資、それが見事に外交力や政治力にちゃんと反映されるかどうかでしょうね、ポイントは