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てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

小林至著 『僕はアメリカに幻滅した』

今月の読んだ本コーナーでまとめるつもりでしたが、長かったので単独で。
僕はアメリカに幻滅した―繁栄の陰でいま何が起こっているのか?/太陽企画出版


 アメリカでは携帯電話の契約などしっかり確認して契約書をコピーして取っておく必要がある。電話でも請求書でもお釣りでもなんでも、きっちり確認する必要がある。そういうズル・ごまかしをしたほうが悪いという社会ではなく、やられた方がLooserという価値観だから社会でそういうズル・ごまかしが当たり前となっている。電話で間違った請求でボラれるのは日常茶飯事。すべてを市場に任せるが故の歪んだ現象。
 株はプロではないと勝てない。デイトレーダーが15万人いて少なくともその8割が負けている。射幸心を煽っているからそれでも参入する人が後をたたない。優秀な人間は、一番収入が多いウォールストリートを自然と目指す。
 所得格差が広がり、73年頃まではどんな階層もほとんど平均的に収入が増えていたのに、所得の上位20%しか伸びていない。そして上位5%は圧倒的に伸びている(出版当時2000年だったので99年までのデータ)。このような上位階層に偏っているのは戦前の日本に似ていると言われる。戦争の原因と解体した米がそのシステムにそっくりになってきている。
 本当は自分の手で子育てしたいが、収入が足りないために共働きを選択せざるを得ないという現状がある。夫婦共働きは、必ずしも男女平等の結果というわけではない。
 勤労者を代弁すると言いながら当選したレーガンは、労働組合を攻撃してそれ以後労働組合は弱くなり賃金が伸びなくなった。
 選挙で大衆・庶民が勝てないのは選挙献金があるから、実業界から献金を受けたブッシュが7000万ドル。これではまともに戦えない。献金を受けないと勝てない以上実業界の言うことを聞かない大統領は当選しないということになる。中産階級が絶滅して、貧しい大衆・無知無教養な下層が誕生すれば、そのコストは社会にとって非常に大きい問題になる。にも関わらず、大衆はそういうことに目を向けない。「米国教」とも言うべき、リンカーンの言葉、人類の最高の希望という観念を捨てられない。米の正義を信じているから、侵略戦争だと言われても動じない。ほぼ間違いなくゴルフで白人男性はズルをする。勝利至上主義が根付いているからズルも平気。
 レーガン政権で富裕層は減税、庶民は増税。米は弱肉強食世界の賭場かジャングル。2000年に遺産相続税が撤廃されてしまった。日本は所得税減税、庶民増税と米のようになろうとしている。累進課税を強めればスウェーデンのようになって、高額所得者が出ていってしまうというのは極論、スウェーデンはサラリーマン世帯で税金が年収の4割という国で、日本とはまるで違う。
 マケインは米のタブーである金権政治、産業界に喧嘩を売って人気を集めたが、ブッシュが宗教右翼・悪魔に魂を売ると資金力の差で劣勢に立たされる。宗教右翼が強く、選挙に影響力を持っているという構造は日本の創価学会に近い。マケインは最後の賭けに出て宗教右翼というタブーに触れるが、これが逆効果になった。
 投票日が火曜日と登録制という二重のステップがあって投票率が上がらない。98年下院選挙は36.4%という先進国中最低の数字。登録者の数字だと70%になるからその低さに気が付きにくい。96大統領選挙は49%
 個人に献金の制限はあっても政党にはない。大統領選挙のために政党ルートで個人へ献金がなされ、使用用途の公開義務がない。この「ソフト・マネー」は92年に8600万ドル、96年に2億6000万ドル、00年に7億5000万ドル(予想)。企業としては税金対策にもなって一石二鳥と。移動が飛行機で金がかかるからこういうことになる。こういう構造におかしい!とメディアが疑問の声を挙げないのはCMの放映時間を買い取って、テレビも潤うからOKということなのだろうか…。どこかの国で似たような話を聞いた気がするが…社会主義者と言われ民のための政策を打ち出したクリントンも、ソフト・マネー=資金がなければ誰もついてこないから、献金を受けざるを得なかった。錬金術ジョージ・ブッシュよりも3倍近く上回る2000万ドルをえた。
 98年まで会計監査がろくに行われていなかった。行ってみるとカラ領収書、ヤミ給与と汚職まみれ。ミサイル発射装置がない、メディケアの支払超過などが発覚。日本のように政治資金に規制がないから裏金自体が発生しようがない。透明ではあるが、透明で汚職があるという現状。

 弁護士と訴訟が非常に多い。子供がはじめに覚える言葉がI sue you(お前を訴える)と言われる。文書主義、多文化・多人種をまとめるには成分法しかない。これも慣習法なき国家所以の現象なのだろうか…?こういう人工国家で慣習法を育もうとする場合どうしていくべきなのだろうか?メジャーは昔は一家四人50ドルで試合を楽しめたのが、今は外野でも150ドル。代理人制度で年俸が高騰。弁護士同士の法廷闘争でストライキに突入し、上がった年俸は入場料に転化されている。弁護士は所属が変わるほど有利だからFAを進める。NBAのストも同じ。
 タバコの喫煙訴訟など、本来どう考えても本人の責任を会社の責任に弁護士の話術ですり替える。そしてそれをいい加減な陪審員が支持してしまう。ナチスドイツの強制労働の被害・補償を、利益を得た企業に課すことが出来る法律がカリフォルニア州で通ると、それでドイツを訴える裁判が起こり、不意打ちを食らってまともに対応できなかったドイツは結局50億ドル払うことになった。これに味をしめた弁護士は日本を標的に訴訟をおこすことになるサンフランシスコ講和条約が成立しているので、裁判しようがないはずだが、ナチスドイツの同盟国という点から切り込んで、上院に法案を提出。当然却下。諦めない彼らは諸外国を巻き込む作戦にチェンジ。フィリピン・中国と被害者を探し出してきてカリフォルニア州裁判所に訴訟にという流れ。なるほど、米の歪んだ正義心というか、戦前の日本批判のようなそれは、根源にはこういう弁護士文化があって、訴訟で儲けようとする勢力が生み出したわけですな。弁護士文化は人気ドラマだけでなく、実際の法廷を中継するほど。プライバシー関係なく実際の事件をスリリングに中継するから専門チャンネルまである有様…。
 アトランタ・ブレーブスの抑えの切り札ロッカーという選手が人種差別発言を行って、国母のような形だけの謝罪会見をした。謹慎後の試合でスタンディングオベーションで迎えられる。裕福な年配の白人が住むフロリダの土地柄もあって、よく言ったという反応だった。リンカーンは人種差別主義者で、黒人は決して白人と同じ土俵に上がってはならないという考えの持ち主だった。そのため黒人の増加は国を滅ぼすとして国外追放を考えていたが、受け入れる国がなかった。結果、低賃金労働者として奴隷解放に至ったと。麻薬密売人と疑われるから父親が息子に携帯を買うことへ反対、激怒したという。黒人への偏見は根強く、心理学の授業で最初にナイフを持った白人の写真と何も持たない黒人の写真を見せて、授業の最後にどちらがナイフを持っていたかと聞くと、黒人と答えた学生が多かったという。
 社会の4割が貧困層で、人口の80%が白人だから自ずとアファーマティブアクションのような優遇措置を憎むようになる。自分たちが貧しいのはそういう制度によるものと考えやすい。KKKのような白人至上主義の団体が、今の苦境・貧しいのは有色人種のせいだよと吹き込むと信じてしまう。こういうレイシスト的な勢力の伸張の話を聞くと、昨今の日本社会の問題のほとんどすべてがアメリカ病が感染ったかのように思えてきますな…
 白人はとにかく自己主張が激しかった。それは自己武装をしていないと行けない、常に緊張を強いられるのがアメリカだから。多人種の中にいると、マイノリティであると緊張する。その緊張を解くために同じ文化のもの同士で集まりやすい。
 ゴルフは白人エリート社会のスポーツ、ゴルフ場が黒人に会員になることを認めなかったり、ケーシーマーティンという障害持ちのプレーヤーのカート使用を認めなかったり、エゴ丸出し。有色人種に厳しくジャンボ尾崎に無礼な仕打ちをしたこともあった。

 医療・弁護士と言った事業が金儲け、アメリカンドリームの対象になった結果の社会の歪み。高額先端治療は発達しているが、社会に還元されていない。また医療で愛人を囲って優雅な暮らしをする階層の保障となっている。医療のひどい現状は周知のことなのでカット。治療の請求までも、平気でふっかけるようになっている。保険が下りなかったり、受けてもいない診察料を請求される。これでは安心して治療を受けられない。パワーゲームになっているので、相手が負ける可能性が高いとなれば、保険屋は契約を平気で踏みにじる。車の運転で絶対怪我できないと慎重になる…。モダンアートの巨匠アンディ・ウォーホールは散歩して銃で打たれてもう助からないと救急隊が諦めて引き上げようとしたところを通行人がアンディ・ウォーホールだと知らせて態度が一変。一命を取り留めたという。銃・金持ち・医療と米を象徴するようなエピソードですね。医療が自己負担で金がかかるなら皆献公に気をつけるから良いだろう!的なことを言う人もいるんでしょうけどね、どう考えてもこれは行き過ぎ・やりすぎですよね。社会保障の削減は不可避な課題ですが、そういう社会全体で治療を減らす努力と国民医療=社会全体に良い治療を安い値段で受けられるようにするということを出来るようにするにはどうしたら良いのでしょうかね

 奨学金は充実していない。ローンでヒイヒイ言っているのが現状。花形フットボールの選手を優遇するくらいなく学生を援助したら?という状況。選手は字も書けないレベルということが珍しくない。授業に出ないのが普通。一族郎党の将来を背負っている人間はともかく、大抵はマリファナ吸ってSexして四年間を終える。貧しい環境の人間をフルスカラーシップで大学に行かせるよりも、スラムのような環境を何とかするほうが先。
 入学審査に有利な情報を500ドル払ってセミナーに参加して手に入れる。ボランティアなどの活動が評価がされたのは昔で、庶民に手が届かないような体験フェンシング・オーボエ・ボートなどが求められる。最初から枠が決まっているかのようなシステムであると。正々堂々と言いながらアンフェアな制度で勝者となる。勝てば官軍、負けても認めないメンタリティが大学入試にも反映されていると。米人が数字に弱いのは16進法オンス、12進法インチ等色々ごちゃまぜになっているから。

 最後は本人の失敗、リストラ体験。このように米を徹底的に批判・否定するからには、そんな強烈な自己責任社会へ行った自分の責任では?と思わなくないですが、まあそういう体験をしたからこそ、こういう「米に絶望した!超実力・競争社会の米に絶望した!!」という絶望先生思想になるんでしょうけどね。学力で、そういう地位を得たものが大きなメリットをえる社会というのならば、各国ともガンガン人材を送り込んで、米の社会を乗っ取って変えてやろうというプランがあっても良いのでは?とふと妄想しました。アジア人優秀、日本・インド・中国とか結託して送り込んで人種差別をなくす!とかやってみれば面白いかもしれません。まあそういう時にあちらさんがどんな態度を取るかは言わずもがなですが。