てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

長い20世紀/ジョヴァンニ・アリギを読んでちょろっと思ったこと


長い20世紀――資本、権力、そして現代の系譜/ジョヴァンニ・アリギ
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北京のアダム・スミス――21世紀の諸系譜/ジョヴァンニ・アリギ
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前から読みたかった、ジョバンニ・アリギの長い20世紀なんですけども、うーん。アマゾンレヴューなんかしっかりまとめてありますので、わざわざ己がそのレビューの上に付け足す必要もないんですけども。アメリカの覇権・資本主義が終わって次に行くんじゃね!っていう内容です(ざっくりすぎ(笑))。この本自体は評価高いですねぇ。三つしかないですけど、やっぱりそれほど読まれては居ないかぁ。600~700ページで辞書並だもんなぁ。

 というのはですね、この世界システム論とか景気循環論、長期波動論とかあるいは覇権システム移行論とかそういう流行り、を取り入れていて、まあ己もそういうのは結構好きな方なんですけども…。

 なんかこう、既存の学説の延長・付け足し・整理しただけでそこまで面白くない。帝国のネグリとハートみたいなのもそうなんですが、このネオマルクス主義的な人たちってなんか肝心なところ・議論の核となるところがあんまりわかってない気がするんですよね。

 アメリカ→日本!とかアメリカ→中国!とかちょっとでも東洋・東アジア諸国の政治状況とか、現状・政治課題・社会問題を知っていればそんなことにならないってすぐ分かると思うんですけども。なんというか国際関係論でよく知られた人たちを列挙すればそういう結論になるんだろうけども、ちょっとジャンルを外れたところ、あるいは否定的・反対的な意見をいう人の声を聞いてない気がするんですよね。お仲間だけの研究業績・狭い範囲で完結してないかな?

 East Asiaなんだっけな?Rising Peace Chinaだっけ?忘れちゃったけど、その人なんか中国の台頭は諸国と調和する、危険ちゃあ危険だけども、わざわざ対立する死活的利益があるわけじゃないし、構造変動もないからそんなに問題にもならんだろうと。まあ中国が領土問題のように覇権的思考を露骨にしたら別だけどさ。

 そんなにおかしいとも、間違ってるとも思わないんですが、無難にありきたりなこれまでの説をただまとめた幕の内弁当ってかんじがするんですよね。諸説を読んだら、うーん、まあそうなんだけど、果たしてそれで正しいかなぁ?とオランダとかイギリスとかそういう欧州的なものの内部での移行と、そこからはみ出して資本主義のロジックが完全に備わっていない日本や中国に移るかっていう問題設定・テーマ設定するのはどうかなぁ?だったらまだ新しい形の次代の資本主義を考えるほうが面白い気がするんだけど。民主主義的なエトスがないから、ローマ帝国が東方専制体制を取り入れたように、以後は民主主義・資本主義もそういった変種モデルになる!とかのほうが面白いと思うんですけどね、話としては。

 さらには一極から無極、覇権なき世界のほうが世界制度的に安定度が違いますから、ソッチの方に行くと思うんですよね。あるとすれば。日本にしろ、中国にしろ覇権が出来ると思えないですし、日中協力なんてまず無理ですから。大局的にそう動いたほうが理にかなうのに決まっているんですが、政治力の欠如がそれを許さないでしょうから。

 という感じで優先順位が高い本とは思わなかったのでとりあえず、スルー。ぱらぱら~っと素読しただけ。ブローデルにしろウォーラスティンにしろそこらを踏まえるなら、諸先人の学説をさらっとまとめたり、アリギ自身の言葉でわかりやすくまとめる。ああ、なるほど、そう考えればより簡単に理解できる。あるいはそういった観点から新しく読み取れるとか、そういうのがないんですわな。

 諸論文・引用がところどころ出てきて、まあよく調べてますわね~となるんですけども、多くのものを引きずり出してくるにはまとめ、要約、彼なりの独自視点による新分析というものが少ないし・弱いという気がするんですよね。なんか事実の羅列・教科書ちっくというか。学者病、俺はここまで知っているんだぞ!すごいだろ!とデータ自慢をしたくなるという例の病気かなぁという気がしました。論文書いてみると分かるんですけど、調べたことを、書きたくなって無駄にしたくなくって羅列しちゃうんですよね。そこをズバッと捨てるかどうか学者の一つの決断力でもあると思うんですけど。別に今なんかいくらでもネットで公開できますから、無駄データでもいいから、メモ的に残すだけでいいと思うんですがね。己みたいに無駄ノート・メモはダメですが(^ ^;)。

 久しぶりにウォーラスティンとかシュンペーターでも読もうかなぁとか思った。やっぱ今でもマルクスの古典的影響が残ってるんですよねぇ。資本主義を論ずる上で。変な形でしみじみ感心してしまった。

 ※ウォーラーステインブローデルブローデルとかウォーラーステインとか、あと10万年の世界経… そうか、この人この二人の系列なんだなぁ…。やっぱそういう影響があるのかな?イタリア系のネグリとかハートも何言ってるかわかんないし、