てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

山本太郎、園遊会で天皇陛下に手紙を手渡し。天皇独裁の可能性


 今回の山本太郎手紙手渡し事件で色々気付いたことがあったのでそれを。例のごとく短いので二本まとめて(と思ったら、もう一本あったので三本まとめになりました)。

 そもそも、今回の出来事が天皇陛下の政治利用に値するかどうかということを置いといて、天皇陛下の政治利用ダメ!絶対!っていうのは保守派の一部の認識だよね。今の殆どの人は戦前の日本人と違って、天皇が綸旨の一つでも出したら馳せ参じて命をかけて闘うという人間では最早ないと思うし。むしろ多くの人間が「いったい何が問題なの?」とポカーンとなったでしょう。もしくは「山本太郎って常識ないな、ばかじゃないの」ってくらいの感じで。少なくともこういうことによって天皇陛下が何か政策の実行を内閣辺りに嘆願するor命じるとかで政治に一大ショックを与えかねないとは誰も思わない。これこそが戦後導入された象徴天皇制の成果の一つなわけで。
 『敗北を抱きしめて』を読んだ時思いましたけど、当時の日本人にとって「国体護持」の重みは現代人からまるで考えられないものですからね。そういう意味で当時の日本人と今の日本人て殆ど別の民族と言っていいくらいなんですね。

 天皇陛下の政治利用が行われるとそれによって政治の根底が吹っ飛ぶ、憲法から外交から議会から全て何もかも吹っ飛びかねないという状況が戦後すぐにはあったわけです。当時の日本人にとって天皇という存在こそが権力・権威の源泉だったという時代があったわけで。当時の日本人は、天皇陛下が政治的発言をしたら間違いなくそれに追従するような人達でしたからね。無論、全員が全員ではないですが。少なくとも国政を揺るがす存在であったことは間違いないわけです。

 天皇陛下の政治利用は絶対ダメ!っていうのはそういう時代があってこその話で、今の時代に一体何を言っているのか、全く理解できない発想なわけで。そもそもあれが政治利用っていうのが意味分からないですけどね。山本太郎氏がやった出来事も意味がわからない行為ですけど。アホな行為に対してアホな行為で反論、反応をするという一番最悪な事例になったという気がしましたね。

 そして、この騒動で気付いたことは、天皇陛下が独裁者になるという可能性。今は未来の天皇陛下になりそうな男子が少ないからありえない話ですけど、四~五人天皇陛下になりうる男子候補者がいて、一旦天皇位に就いた今上陛下が皇位を次男とかに譲ると退位する。そして皇籍から離脱して一民間人として政治家になった場合、独裁者になる可能性が非常に高いということ。

 今では到底ありえない話だとしても将来的に全く起こりえないという話ではない。もし元天皇が政治家になったら、天皇陛下バンザイ!という保守派政治家達は絶対逆らえない無敵の存在になるんだが、そういうケースで今の保守政党天皇陛下万歳的な自民党はその時どうするんでしょうかね?誰か質疑してくれないかな?
 彼の行動は軽率なことは軽率なんだろうけど、天皇の政治利用には当たらないでしょう。そもそも戦後、天皇陛下が自らの意思で政治関与を図ったことがないですし、何を周りの人間がやっても天皇陛下が自らの意思を発露させようとすることはありえませんよ、常識で考えて。仮に天皇陛下が政治的にこういう政策が行われるべきだ!この法案を実現して欲しい!という思いがあったとしてもそれが握りつぶされるようになっているんですから、全く意味ないですよ。

 それがいいものであろうが悪いものであろうが、個人一人の意思に左右されるのであればそれは王政・独裁(ここでは単なるシステムという話でマイナスの話ではない)と変わりがない。戦前の政治を見ても、天皇陛下が個人の意志で戦争に反対しようがなんだろうが、内閣の意見が通っていた=天皇機関説が機能していたんですからナンセンスですね。有名なところでは日清戦争の開戦で明治天皇が外交交渉が充分でないと開戦の伝統的儀礼(と言っても近代国家としては初でしたが)先祖への報告の祭祀を拒否した。が、結局内閣に押し切られてイヤイヤながらも行かされたという話からし天皇には拒否権がない。自発的に政治関与することができないというのは明らかですね。

 政治利用というのを禁ずるというのは、戦前の背景天皇陛下が政治に大きな影響を及ぼし得た時代あっての話ですからね。そして戦後新制度、新憲政という移行期においての混乱を避けるためのものですから、今更何をか言わんやの話。現代で天皇陛下に直訴をしたとしても、もはや何の意味も持たない時代ですからね。というか、まあ天皇陛下に=なにか超常的な存在に、訴えでもしないとイケない世の中であるという心理状態にはかなり意味があると思いますけどね。

 彼のやってる行動が非常識である!アホだ!という意見の他に間違いなく、だれでもいいし、どんな手段でもいいから、一刻も早くこの世の中を良い方向に変えてほしいという閉塞感を感じている人間がこのような非合法的行動を承認するという世相が読み取れるでしょうね。山本太郎の行動には間違いなくそういう思いがあったでしょうしね。無論、そういう行動の結果がマイナスになるとは考えられない時点でちょっとアレなんですけどね。というか陛下にそれを伝えて何がどう好転すると思ったのか不思議でしょうがないですね。

 天皇陛下にこういう大事な問題があります!と知ってほしいという行為自体は別におかしくも何ともない。唯陛下がそれを知らないと思っている事が失礼極まりないわけど、問題だとするとそちらが問題なんでしょうけどね。

 繰り返しになりますが、現代の政治制度・ルールを考えれば、陛下にそれを伝えることで何か好転する、プラス材料になると判断する思考が問題。そのような発想をする人間が(民主主義政治を理解していないという点で)議員であることが問題であって、陛下にあのような振る舞いをする非礼を咎める程度で終わる話です、今回の騒動は。

 それを政治利用だ!って大騒ぎする方は山本太郎と同じレベルですね。だってそういうヒステリックな反応をするということは、山本太郎の行動によって、政治に影響があると考えているわけですから。現代で陛下が本当に自民党の政治家に命令を下したら、彼らは唯々諾々と従うのでしょうか?そんなメンタリティなら上で書いたとおり、天皇陛下が独裁することになっちゃいますよ。

 なんちゅーか伝統芸能の人が自分たちの内輪の感覚で不遜じゃ!と騒いでる感じですかね。自民党さんがたのヒステリックな反応は。まあ他の野党の議員も騒いでますけどね…。

 今回の騒動は、少なくとも日本的な騒ぎ方、独特の反応であることは間違いないですよね。英の議員はそんなことしないでしょうから、芸能人みたいな人が英女王に同じようなことをしたらと考えると面白いんじゃないかと思います。英社会に詳しいわけではないので、どうなるかはわかりかねますが。

※追記で書いた3本め。3本を一纏めにした3本めです。分けて書こうかなと思いましたが、別に大したものではないので一纏めで。
 この話は次々変な反応があったので、また追加の話を。山本太郎原発作業員の待遇改善を直訴したあと、実際待遇が改善される・手当が高くなるということがありました。

 自民党・内閣がどう考えていたのか知りませんが、こういうルール外の行動があった場合、相手に論理整合性・正統性があってもすぐに応じてはいけない。こういうことをすると、「なんだじゃあ陛下に直訴したら問題解決に繋がることがあるんだ」―となってまた第二・第三の山本太郎が出てきてしまう。仮にそうした方がいいということになったら、かなり間をとってあとからさかのぼってその時の手当を補充するというようなやり方にしないといけない。少なくともルール違反が問題解決に直接的な影響をもたらしたんじゃないんだよ!という形を取らないといけない。

 そうでないと、次から次へと後追いが出てしまう。真似する人間、模倣犯が出てきてしまう。なのに何をやってるんでしょうね…。これは内閣の行政不手際を認めたも同じですからねぇ…。


 また、山本太郎に対する脅迫事件がありました。当然陛下はそれに対して身辺について変わったことがないかと配慮をするということがありました。たまに右翼の中でも皇室の権威をことさらに強調している変なのがいますが、そもそも皇室をことさらに崇めて自己の権力に利用しようとする集団の行動を天皇陛下も皇室も認めていないでしょう。あれって名誉毀損に当たらないんですかね?勝手に家紋使って暴力的な宣伝活動をするってどう考えても迷惑極まりない、名誉毀損だと思うんですが。

 まあ山本太郎がルール違反で不敬に値するとしても、それをもって殺してやるとか脅迫すること自体、陛下にとってけしからん、迷惑千万、言語道断なことに違いないわけで。そういう存在が社会的に明らかに許容されるものでないと、自分たちが掲げている大義名分そのものに、真っ向から否定されるという珍事も見られるという、なんとまあ…という話がありました。

 以前書いたよりも、面白い反応が幾つも出てきて、まあ本当天皇制の話になると、リトマス試験紙のようにハッキリした反応が出てきますね。主に痛い反応ですが。今後も時間が経ったらこういうことが起こりそうですね。

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守るべき分