てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。

中国と現行の国際秩序について

ちょっと、中国の戦略というか、国際秩序についての話を。

 中国は韓国と同じように、国際秩序・国際力学を理解していないのか?それともしっかりわきまえた上で行動をしているのか?ロシアなどは「力の信奉者」と言われるように、国際力学・国際法を踏まえた上で侵略行為などをしていたように、パワーゲームをする上である程度は近代国際法・国際社会のルールに則って行動をしていました。では、中国はどうなのか?

■中国の行動原理=中華秩序

 おそらく、中国もそれを全く理解していないということはありえないにせよ、基本的には、自分達の論理を優先して動いていると考えていいでしょう。理解しているいないよりも、その自分達の論理が先に来るという感じでしょう。

 韓国が、憲法にそもそも日韓併合を違法だ、無効だという前提で構成しています。それが国際法や近代国際秩序をあまり理解していない。誤った前提から戦略を構築している(事実と当為を混同している)と言えるポイントなのですが、中国の場合は前提がまず「共産主義革命」「世界革命」ということなので、今でもそれを追求しようとしているとは考えづらい。北朝鮮ならそういう誤った前提の上に戦略を構築していると言えなくもないのでしょうけど、中国はそれはないでしょう(まあ、北もさすがにそれはないですが)。

 中国は「社会主義市場経済」と言われるように、その前提を放棄し、修正していると考えられますからね。で、それを達成する=経済成長をするために西側と自由貿易をするわけですが、その範囲内においてはしっかり(一応)ルールを守っているわけですよね。経済面においては。ところが政治・外交面では怪しいところがあって、今それが他の先進国が批判し注目しているポイントになっています。この点中国はどう考えているのか?

 近代国際秩序、欧州が近代法や主権などのルールで世界を動かしてきた延長上に近代国際社会のルール・秩序が構成されているわけですが、中国も必要以上に、あえて破ることはないのでしょう。しかし、それよりも自分達の「中華秩序」という目標があるために、それを達成するのに現行国際法・秩序が邪魔をするなら、それに衝突するのもいとわないというのが現中国の外交姿勢、基本スタンスではないかと思われます。

 ですから、まあよく言われる「政冷経熱」。経済上では良好な関係だけど、政治・外交上米日としばしば問題を起こすわけですね。

 たまに中国VS米!覇権戦争!みたいなのもありますが、そこまで大々的な野心・野望があるわけではないと思われます。彼らは領土的欲求に未だにこだわっているように、大中華=中国の最盛期の領土・価値観にこだわっていると考えられます(まあ、この点は条約・国際講和などによる国際体制が確立していないので、未解決余地が大きいという要素もありますが)。

 かと言って現代国際秩序を壊して、力づくで中華秩序で世界を塗り替えられるほどの国力もありませんし、まあせいぜい東ア秩序を昔の朝貢による中心国と周辺国のような序列に置きたいということでしょうね。これを武力でなく、平和的に達成するというChina's Peace Rising論があるくらいですし。というか軍事力でそんなことやったら、そもそも外需依存の経済になっている中国自体が絶対持たないでしょうからね。

 過去の栄光を取り戻したい!「中華秩序」よ!今再び!というのが中国人の悲願であり根幹でしょう。当然「中華秩序」というのは前近代的価値観に基づいたものですから、現国際秩序=近代化というルールを前提とした国際秩序とは相容れず衝突を起こす可能性が大きいわけですね。

 「中華秩序」を成し遂げるのが第一で、欧米主導の現今秩序がそれを邪魔するのならばそれに従う義理はないというところだと思います。よく言われるように、欧州と日本の侵略で栄光ある大中国が「傷つけられた」=中国は帝国主義的侵略の被害者だ。そのときの被害にあったものを取り戻したい!というのが彼ら中国人の行動の原理になっていると考えていいでしょう。

 取り戻したい!というどっかの国の首相のような思いが行動原理としてあるわけですが、だからと言って、実力でそれをねじ伏せる事もできないので、隙あらば、チャンスが有れば中国が望む形にしてやろう。秩序を掠め取ってやろうというところでしょうか。そうやって少しづつ現国際秩序の範囲を狭めて、「中華秩序」の範囲を広げていこうというものでしょうかね。

 確実に勝てる、優位に立っているという状況にならないと冒険には踏み切れないでしょうね。そういう時の戦略もある程度はあると思いますが、中国の場合国内問題の比重のほうが大きいので、それを第一戦略・トッププライオリティとして行動していると考えるのは避けるべきかと思います。リソース・国力が全然足りませんからね、到底不可能でしょう。

 中国にも強硬派や国際協調派など色々いるわけですが、強硬派はともかく協調派は国際秩序にケンカ売ってまでそんなコトする余裕はないと考えているでしょうね。基本的に中国の国内情勢は不安定で構っていられない。なにか揉めて経済的な制裁されたり、そうでなくとも外資が危機を感じて逃げてしまったらそれで経済が潰れて、中国はあっという間に混乱してしまいますからね。

 大国に特有のことですが、異国・異文明理解が足りない。興味関心がないというものがありますが、そもそも中国って自分達の国のことにしか興味がなくて、海外の思想などにあまり興味が無いんですよね。

 米なんかもそうですよね。そういう事情もあって自分達の論理だけで行動して暴走しやすい、外交的ミスを犯しやすいという性質があるわけです。相手国に配慮した行動ができない。米と違って世界を動かすためにという戦略を志向するというよりか、いかに「中華秩序」に好ましい結果を達成するかくらいの視点しかない気がします。「島国根性」ならぬ「中華大陸根性」とでも言えましょうか。

■弱い中国から強い中国という構造の革命的変化

 そして中国を語る場合、やはりなによりも念頭に置いておかなくてはいけないのは中国はこれまで弱かったということでしょうね。これまでの中国の基本戦略というのは「強国」に立ち向かっていく「弱者」だったということですね。

 日中戦争で日本という強敵にベコベコにやられましたし、今度は中ソ対立でソ連いう太鼓kとの危機にあって米日と同盟組んだくらいですし。そしてソ連という仮想敵国が消えて、そして今は仮想敵国として日米がいると。何より世界最強国家米と対決しているというのが今の情勢です。

 この間に「弱者」「小国」が力をつけるための経済成長が必要だったわけですね。そして今それが達成されて「大国」になったという図式です。基本「弱小国」がなんとか「強大国」に立ち向かって勝ち抜いてきたという歴史があるわけです。ここで彼らの見方には善意の弱者が悪意の強者に立ち向かってきたという視点が構築されるわけですね。善悪はともかく、中国が基本弱い対立構造にあるということがポイントですね。

 今は一応上海協力機構のような形でロシアと同盟関係を維持できていると言えますが、インドも基本的には米というより現行国際秩序側にあるので日米印の三カ国とEUに中国は戦わないといけません。とするとロシアが本当に味方してくれるのか怪しいものです。まあ、これで味方になるか中立するか敵になるかの話はさておき、少なくとも中国の味方よりも敵側の勢力のほうがはるかに大きいだろうということは間違いないわけですね。

 で、中国は基本的に「弱小国」としての戦略・価値観なので今自分達が「大国」として世界政治上にあるという事を経験したことがないわけです(近代国際政治以後という意味で)。そのギャップが今の中国の迷走、国際政治を混乱させているということが出来るでしょうね。また米との深刻な対立も経験したことがないですしね(共産党成立して以後は現代ほど深刻な対立ではありませんでしたから)。

 我々からすると「中華秩序」という原理によって国際秩序を侵食しようとする不届き者ですが、乏しい生存圏のなかで悪戦苦闘している中国という視点を見逃してしまうと中国の意図や戦略が読み取れなくなってしまうので注意が必要でしょうね。

 いかに経済・軍事的に成長し、大国として変貌を遂げようとも、中国というのはアメリカや日本に経済的に大きく依存している。この点世界経済に組み込まれてしまっている以上、冒険というのはまず出来ないこと。次に国内情勢が相当に不安定であること。実際津上さんの中国台頭の終焉とかデータで読み解く中国経済なんかでも、斜陽とまでは言わずとも転換期にあって今後経済成長が落ちていく。落ちないとしたら無理やり公共事業などで成長を押し上げているので、経済的問題が先送りされていることになる。そういう選択を取れば、より危機が高まるとしていますしね。

 おそらく中国共産党体制というのはいずれ深刻な危機に直面すると予測されていて、持たないだろうと考えられています。いつかはわかりませんけどね。政治改革をして民主主義的な体制を導入して透明性を確保したり、民衆の不満を組み上げるようなシステムに変えない限り、間違いなく民衆の不満によってひっくり返されるでしょう。

 そのために民衆の不満をそらす、ガス抜きするという点で対外的に強硬な姿勢に出ている、ルールを無視するという要素が大きいかと思われますね。「愛国」という独特のメンタリティが中国にはあるくらいですしね。強硬に出ないと民衆が爆発してしまいかねませんからね。

 まあ、内政上の不満、不安定がある故に不透明な、野心的な外交に映るというところでしょう。今回のADIZもなんで中国にはADIZがないんだ!という不満があったところに端緒があるみたいですしね。

 基本的に二つの枷があると見ていいでしょう。国際秩序という枷で西側先進国から国際ルールを守るように中国の手に枷がかかっている。次に国内の民衆から腐敗や生活を何とかしろ!という欲求、または「愛国」的対外強硬姿勢を望むことによる暴動。民衆圧力という枷が中国の足にかかっている。そういう枷をかけられてもがいている、あっちにもこっちにもいけない巨獣というのが現在の中国でしょうかね。どちらかを無視しても死んでしまうという感じですね。

■結論・所管

 個人的には、中国がこの先生きのこるためには、現行国際秩序を遵守するしかありえないと思っています。資本主義を導入した以上、民主主義を導入しなければ絶対に上手く生きませんからね。その近代化の原則を理解していないという点では、あまり近代化や資本主義などを理解できていないのでしょう。資本主義の理解が怪しい以上、中国が痛い目を見る。国際力学を無視したしっぺ返しを食うように、莫大な被害が反動で中国に来ると見ています。

 中華秩序というものが、近代的秩序と異なり、なにか特有の理をもち、独特の論理が成立するならば話がわからなくもないですが、中華秩序に近代化のような経済発展を約束し、かつ社会を安定させる論理構成はないので、中華秩序でうまくいくとは思えません。『China's Peace Rising』や『リ・オリエント』の人などはそのようなもので上手くいくだろうという節がありましたが、これは近代化・資本主義などの原則をあまり理解していないがゆえのことでしょう。