てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

世界平和=国際秩序を軽視する日本

 『米欧同盟の協調と対立』 渡邊啓貴著 今度はこの続きです。

 さて米欧秩序、米国と欧州の間に存在する外交関係について気づいた現行国際秩序のポイントなのですが、末文において欧州がその機構としての対外関与を深めていることが重要だということを書きました。一体何故これが重要なのか?

 欧州が独自のロジック・軍隊によってPKO治安維持なり、破綻国家の救済、また時には欧州や地域の秩序を脅かす危険な軍事行動を取るということで制裁を加えることを欧州が単独で出来れば、米に依存する度合いはグッと下がるわけです。

 米に軍事・安保に置いて、依存度が下がれば、経済でも政治でも米の意向を伺って色々な問題において譲歩する必要がない、また米の独自の価値観に基づいた不当な要求を受け入れる必要がなくなるからですね。今回の捕鯨の調査が禁止されクジラがとれなくなったというのは、米ではなくオーストラリアから起こったことですが、まあこういうような不当な要求を米から出された場合、一方的に日本が受け入れなければならない、甘んじて受け入れなければならないという必要性がなくなるわけですね。

 要するに、軍事的に米に依存している現状においては、属国構造を引きずる日本は、米の不当な要求に直面した場合はそれをのまなくてはならない。そしてそうなりたくなければ軍事的な力を拡大させる必要性があるということですね。

 小泉政権は対米重視で自ら率先して協力しましたが、もし他のトップでその時の総理がNoと言ったとしても、米=イラク戦争においていかに侵略戦争だ!国際法違反だ!と言ったとしても、日本は米の決定、戦争に協力せよ!という主張を受け入れなければならないということです。仮に官僚がサボタージュをして首相交代に手を貸さなかったとしても、米は戦争協力を拒んだ報復措置を取ってくることは間違いないわけです。そこら辺は確か脆弱性とかそんな言葉でナイさんが説明していましたね。


 米のユニラテラリズム、単極構造において米は好きなことをなんでもできる。米の暴走を止めるためには、欧も日も軍事、諜報などを強化して置く必要があるということです。

 まあ、そんなことは以前どこかで書いたでしょうし、普通に目にすることもある意見でしょう。こんなことはそんな珍しい主張でもないかと思います。今回書いておきたい重要な事というのは、クリントン政権時、国連主導に任せてソマリアで失敗したこと。国際法に則った結果、米兵が犠牲になってしまったこと。ルワンダベトナム化を恐れて介入をためらったという話。

 国際法を守ることは、いわば検察が刑事訴訟法を守るようなものであり、冤罪を出さないことを目的とした民主主義の裁判においては必要な無駄、コストではないか!国際法を守れ!わがまま言うのもいいかげんにしろ!と米の傲慢さ、単独主義を批判したくなるのですが、それは一面において的を射ているのですが、ポイントは、冷戦後国際秩序維持に力を入れた国は米だけだったということです。

 正確に言えばそういう軍事力を持っていたのは米だけだった。世界の警察官という言い方は好きではありませんが、米の軍事力を除けば世界の色んな紛争にコミットメント出来る国はない。そして強者・社会の上層にあるものは、その社会における問題を率先して引き受ける必要がある。その役目を果たしていたのは米だけだということです。

 現代国際秩序は、民主主義国家で先進国=パワーがある国家でなければ、そのような世界の紛争問題に取り組む事はできません。露や中のように大国であっても、非民主主義国家は現行の米欧主体の秩序・人権を中心とする米欧の価値観を重視しませんから、自ずと権威主義的な政権を支援しやすくなります。まあ、必ずしも米欧が独裁政権をしないわけではありませんが(というかその点がまさに問題になっているんですが、まあそこは置いといてください)。

 ですから、米以外の民主主義でパワーが有る国が米一国に任せずに、国際秩序の維持に責任を果たすようにならなければいけないわけです。日本であれ、インドであれ、大国が国際秩序維持にコミットメントして、より良い方に秩序を作る・支える。そういうことがなければ、米のユニラテラリズムを糺すことなどは絶対にできないということ。

 口だけで!この侵略者!国際法違反!と言っていても解決しないということですね。責任(義務)を果たさないものに、権利なしということです。余談ですが、中ロのような自己主張のみで国際秩序維持・遵守に貢献しない国が今後報われることがないこともまた言うまでもないことですね。秩序に参加していないんですから、必然的にその地位は不安定になりますからね。好ましくない秩序であれ、参加してそこで努力して変更させるくらいのことはやらないと、待っているのは悲惨な未来だけでしょうね。

 一昔前に国際貢献みたいな言葉が流行りましたが、要するにそういうことなんですね。それは素敵やん!とか美徳とかそういう話ではなく、そうしないと米が、世界がおかしい方向に行く、必然日本もそのおかしい米&世界に巻き込まれておかしくなっていくということです。米がおかしいなら、米の信頼を勝ち取って、助言を聞いてもらえるようにならないと、米も世界も何も変えることは出来ないということですね。まあ、今の流れは、何故か米の主張を聞き入れて、忠実な子分になろうとしている。根本的に勘違いしているのでは?と思わなくもないですけどね。

 9条守れ!という人達はそういう意味においては、非常に矛盾しているんですよね。そうすることで、米はおかしいままになるし、世界は不安定化・混乱する。9条は確実に世界の平和に逆らっている事になるんですけど…どういうことなんですかね?ちょっと良く理解できないですね。戦争という外交手段をなくしていくべきだ、精神としての9条を守り、世界に広げていくべきだということなら理解できるですけどね。