てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2013・11&12

 

フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年11月10日発売号

フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年11月10日発売号

 

合成生物学のポテンシャルとリスク ―人類社会への大いなる貢献か、それとも悪夢か /ローリー・ギャレット

 人工的に生命体が作れるようになった話。効果の大きすぎる細菌・生物兵器も。コントロールして限定的なターゲットのみに使えるようにすることも可能になるかもしれない。H5N1ウィルスの死亡率59%(スペイン風邪はわずか2.5%で5000万人の死者)、これを実験のために人から人へ感染する物を人工的に作り出してしまった。ウィルステロの危険性に、実験であろうとも厳格な基準、国際的取り決めが必要、それが未整備。WHOが国際的取り決めをしようとしたが、インドネシアのH5N1インフルエンザのウィルスサンプルの提供を拒否した。製薬会社がこのサンプルを元にワクチン・医薬品を作れば、米欧の得になるだけだから。根深い先進国の製薬会社への不信があると。エジプトのムバラク政権の時に暴動でこのサンプルが持ち去られている。今も行方は不明。

 ヒトゲノム解析以後、数千ドルの機械で24時間以内に解析が可能になった。これは家庭で可能なレベル。ゲノムコードの伝達は情報の送信なので簡単。アルカイダがポルノ動画の中にメッセージを入れたケースも有るように、ポルノ動画で拡散をさせれば防ぐことは不可能か。悪用を防ぐために、追跡可能になるようにする番号付けが行われるようになる。すべての情報にバーコード化してひと目で分かるようにすることが進められている。

 石油を作り出すバクテリアの研究とか以前話題になりましたが、そういうものもこの研究で進められると。

 

<特集 一体化する現実と仮想現実>

グーグルのXマン ― セバスチャン・スランの思想 /セバスチャン・スラン

インターネットでデータ化される世界 ― 「モバイルインターネット」と「モノのインターネット」の出会い /ジェームズ・マニュイカ、マイケル・チュイ

 グーグルの方は自動車の自動運転とかスマート云々の話ですね。まあテクノロジー関係はいつものとおり特に食いつきませんので省略。

 

 <特集 変化する世界のエネルギー地図>

クリーンエネルギーの黄昏? ― 迷走し始めたドイツのエネルギーシフト政策 /ポール・ホケノス

米原油輸出の自由化を /ブレイク・クレイトン

アフリカの石油ブームと「資源の呪縛」 ― オイルマネー社会還元プログラムの導入を /ラリー・ダイアモンド、ジャック・モスバチャー

 例のエネルギー・資源関係です。これもとくにないですね。

 

大学ランキングが助長する知的孤立主義 ― より社会に目を向けた政策志向の研究を ピーター・キャンベル、マイケル・C・デッシュ

 大学を評価する基準がおかしいというよくある話ですが、まあ別に特に取り上げることもないですね。そういえばウォルツの本が例に出てきて、このものさしだと影響力あるはずのウォルツがランク圏外になってしまう。―という話がありましたが、ウォルツを対した研究成果だと感じない己にとっては、正しいんじゃね?とか思ってしまいました(笑)。まあ基礎的な話として、必ず触れられなければいけないんでしょうけどね。

 

共産主義後のキューバ ― 経済改革とキューバの未来 /ジュリア・E・スウェイグ、マイケル・J・ブスタマンテ

 キューバとの国交回復とかの話でしょうね。改革開放・移行経済の話ですが、まあそんな興味ないので。製造業の割合が低く、サービス業の割合が高すぎるとか、政府職員を減らして自営業を増やそうとしているが、あんまりうまく行ってないとか。経済制裁解除で、港湾として望ましい位置にあるとか、急激な移行はありえないとか、まあそんな話。

 

 <特集 変化する中国の経済モデル>

中国の労働者はどこへ消えた ― 経済成長至上主義の終わり /ダミアン・マ、ウィリアム・アダムス

 09年春節までに数千万人の解雇。無用の長物になるというリスクを犯してでも大規模インフラ投資。10年に資源集約型経済が起きて以降初めて求人が求職を上回った。資源集約型経済ブームを毎日体重の10%~15%の笹を食べるパンダになぞらえてパンダ経済という。08年労働契約法で労働者のコストが上がる。組合を無視した山猫ストの発生。ストライキなど起きないという幻想は消えてなくなった。

 人が多い=労働者が多いではない。工場が好むのは若くて扱いやすい25歳未満の女性労働者。40代、50代の労働者は需要がない。若い男は進学を選ぶようになった。大学進学でも職がない若者の問題。ブルーカラー労働者はどんどん減っていっている。11-12年の間、年の労働者の賃金上昇の中間値は15%で、企業収益は5%。経済成長の果実は労働者に向かったと。これは内需主導型経済の移行にいい傾向。経済問題のリスクよりも、労働者の小規模デモのほうが社会・政治的リスクが大きい。

 

上海自由貿易区は第2の改革開放路線の始まりか /ダニエル・H・ローゼン

 上海自由貿易区、人民元の自由な交換、関税なき自由貿易、外国直接投資に対する規制緩和などが上海自由貿易区で進められていく。TPPや韓国・日本との自由貿易構想の前の前段階か?まあTPPという流れの中にあって、なにもしないわけには行きませんからね。そんなにトントン拍子にうまくいくとはおもってないでしょうけど。AIIBとかそういうものの総合的なプロジェクトの一つとして考えているのは間違いないでしょう。鄧小平の改革の時のように沿海部から成果を積み上げて全体に波及させていきたいという考え。

 

中国経済と都市化政策 ― 問われる成長と社会保障のバランス /エリザベス・エコノミー

 都市の住民の消費は農村の3.6倍。都市化が中国経済の内需主導型への転換のポイント。都市戸籍のない人間が増えている。ラテンアメリカのような都市スラムと社会問題の二重構造の罠にはまりかねない。医療・教育などの社会サービスを受けられる都市住民は35%しかいない。当然このサービスの恩恵を受けられるように予算を増やす必要がある。首相の李克強は上手くこなすことが出来るか?

 

サウジのトリレンマ ― 地政学と宗派対立と対米関係 /グレゴリー・ゴース

 サウジはエジプトのクーデターを支持、暫定政権に協力的でない米に不満。シリアでの及び腰にも同じ。シリアでのシーア派・イランの影響力を見て介入。カタール・トルコはイスラム同胞団を支持、サウジはシリア自由軍を支持。エジプトでの同胞団や、アフガン・ボスニアでのジハーディストの支援の結果がアルカイダ&今の中東の混乱だから世俗勢力を支持と。そこから手を変えて、イスラム主義者達によるイスラム軍という勢力にシフト。アルカイダなどの過激派はいない。過激派を排除して彼らをまとめたのはおそらくサウジだろうと。

 以前、世俗的なプロの軍隊に統治させるのが、軍政が現状の中東を考えるとベストという話をしましたが、サウジもそういう判断を下したということでしょうか

 アサド退陣にこだわるサウジ、父のハフェズとはそこそこの関係を築いていたが、バッシャールになってからは微妙。シーア派とスンニ派の宗派対立上、引けなくなっている。イランの核問題で妥協する替わりにシリアの優越を認めるのでは?という懸念がサウジにある故の態度。実際はこの湾岸で親米的な国家ならともかく、そうではないイランに地域覇権を認めるわけがない。

 

フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年12月10日発売号

フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年12月10日発売号

 

破壊と汚染で原始海洋へと回帰する海― 退化する海洋 /アラン・B・シーレン

 いつもの環境・資源&エネルギー・テクノロジー関連。タイトルそのまんまで触れることはないですね。マグロ・クジラなんかもそうですが、海洋資源は日本にとって大事なものですから、日本がなんか海洋の環境を守る取り組みを率先してくれると良いんですけどね。

 

<特集 アメリカの偽善と同盟関係の本質>

暴かれたアメリカの偽善― 情報漏洩とアメリカのダブルスタンダード

/ヘンリー・ファレル、マーサ・フィネモアー

なぜ同盟国は互いを監視するのか― 国際政治に信頼は似合わない

/ジェニファー・シムズ

 スノーデンの影響でスパイについて云々。まあ、同盟国とはいえどスパイを全くやらないと考えるのもナイーブな話。しかし現代同盟国間でスパイをやるような時代ではない。経済領域など公平な狂躁が求められる分野においては尚更。ならば、スパイ・諜報においても同盟国内で規範・ルール作りを進めたほうが良いのではないでしょうか?素朴にそう思うんですが、なんでこれまでなかったのか。また今回のことでどうしてそういう話に発展していかないのか?不思議ですね。ウィキリークスみたいなのも、巨大な超国家に対するある種の「テロ攻撃」ですよね。正義・悪関係なく唯一の巨大な権力に対して、疑念を持って情報工作に協力しようという動機が高まる。見えないところから、あちらこちらから攻撃の手がやまない。対米情報工作支援の手が出てきてしまうのですから、ルール化してそれに従ったほうが「テロ攻撃」への対策として有効なのではないでしょうか。

 

サイバー戦争の神話と現実/トマス・リッド

 以前もこんな話ありましたね。サイバー攻撃についての3つの事例。ソビエトパイプライン爆発事故、07年エストニアへの攻撃事例、08年グルジアへの攻撃事例。どれをとってもサイバー攻撃の被害が甚大であり、サイバー戦争と深刻化するようなものではない。にもかかわらず過剰に取り上げられるのは、映画やテレビドラマかなんかの影響でしょうか?

 諜報や後方撹乱、サイバー攻撃のほうが通常の戦争・兵器よりも暴力性は低く、トラウマも小さい。スタックスネットのように一時的な遅れ・障害をもたらすことはあっても、相手の意図を砕く、ウラン濃縮の阻止をするような段階にはない。

 サイバー「戦争」は起こりえないし、実際は防衛目的での人員増強。イランのケースと同じようにこちらが、諜報や後方撹乱の被害に合うことを防ぐのが第一。脅威は常に存在し、「平和」という状態が訪れることはない。サイバー戦争=国防で国家の仕事ではなく、民間で自分で守らなくてはならない。攻撃が最大の防御ということもありえないと

 

<特集 第3の矢と日本経済を考える>

日本経済を左右する規制緩和労働市場改革― ネオリベラリズムと「第3の矢」

/ノア・スミス

 ネオリベラリズム政策を安倍晋三首相は取る、「第3の矢」で日本のコーポラティズム(会社本位主義)を終わらせると。経済改革=ネオリベラリズムという肯定的な用語として用いているのはどうなのかな?もうネオリベラリズムという言葉はネオコンみたいなもので、ネオリベとして経済的な改革政策としては信用性を失っていると思いますけどね。コーポラティズムと縁を切る、改革路線に舵を切るという理念には賛成できますけど、安倍首相がそれをやるというのは日本の政治の現状を知らないと言わざるをえないでしょうね。まあやらなければ日本経済・社会がダメになるという主張なんですが。文が短いからあれですけど、どうも日本システムに後進性を見出すといういつものパターン・手合という感じがしなくもないですね。

 

日本にネオリベラリズムは似合わない/トバイアス・ハリス

 民主→みんなの党の浅尾さんの元スタッフ。上の文に対する反論で、まさにそのとおりだと思います。ロックスター並みの人気を持った小泉だって改革を訴えた。でもやったのはミクロ的な不良債権処理。元々安倍氏はネオリベラリズム的な思想を持っている人間ではない。根強い党・議会の反発で改革は失敗するだろう。

 20年にわたって政治学者&社会学者はどうして日本で改革が失敗するのかという話をしてきた。それは、単一・単独なシステムではなく、相互補完的にからみ合って形成されているために、単独の改革では不可能。ダイナミックにあらゆるものを変えるくらいでないと成果は出ない。小泉政権時代に行われた労働規制改革は部分的なもので、バラバラに行われた結果、却って状況を悪化させてしまった。保護されている産業は地方に多く、ここから議員が多く輩出されやすいことを考えると改革がうまくいくとは考えにくい。明治維新1940年体制、この2つの大掛かりな経済システムの見直しは民主主義体制で行われたものではなかったことに注目すべき。「上からの改革」以外にダイナミックな制度変革が行われたことがない=改革失敗不可避ですね…。

 

R・フェルドマンが語る安倍政権の経済思想と構造改革 /ロバート・フェルドマン

 ハーバード流交渉術を誰もが読んだとか、マキャベリズムを思わせる国民への直接アピールで官僚・各派閥をコントロールするとか…?ですね。

 

世界経済アップデート― アベノミクスと中国経済の行方

/ルイス・アレキサンダー、ビンセント・ラインハルト、ネマト・シャフィク

 いつもの経済インタビュー記事ですね、省略。

 

高齢化する中国社会の社会経済・外交的意味合い/ヤンゾン・ファン

 暴れる若者が高齢化することで近隣諸国との摩擦も減るかも…という「高齢化による平和」というどうでもいい説が出てきますね。

 

1945年の恐怖と希望/マックス・ヘースティング

イアン・ブレマー氏の本の紹介・書評ですね。

廃墟の零年1945

廃墟の零年1945

 

 オランダ人ジャーナリストで大学でも教える研究者…。戦犯を裁くなら数十万人に対する懲罰が必要だったとか、戦争犯罪や戦争の責任について連合国・枢軸国どちらにも公平なものなのかな?とちょっと疑問に思ったんですが、どうなんでしょうね?これ? 


<特集 シリコンバレーNSA> シリコンバレーとプライバシーとNSA― 情報革命とプライバシー保護

/アブラハム・ニューマン NSAはいかにサイバーセキュリティを脅かしたか

/ネディア・ヘニンガー、J・アレックス・ハルダーマン

技術系の話。特にないですね。

グリーンランドの資源開発ブーム― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

/アンナ・カタリナ・グラブガード

 タグタパイトという資源以外に、200を超えるレアメタルが。ウチ15は世界中でこの地域のみ。開発を妨げる要因は殆ど無い。自治政府でデンマークの属国状態と。温暖化で氷が溶けることで採掘が容易になり、独立も。資源で教育インフラも出来るとして、人口はどこから取ってくるのだろうか?57000の人口で移民が少し増えればもう大丈夫なのかな

 ウラン鉱の周辺採掘で環境破壊・放射性物質の影響などのリスクが有る。そう容易に踏み出せていない現状がある。中国の無節操なレアアース採掘で、国内に環境ダメージで数十億ドルの資金が必要になったケースもあり、慎重にならざるをえない。中国はグリーンランドの出資に積極的。環境問題もそうだし、アフリカでの劣悪な労働環境で中国は警戒されている。

 中国のレアアースの独占と供給の管理で、各国が研究に熱を上げ始めている。開発を進めて、新技術で採算が見合わなくなるというリスクもある。フクシマの影響で環境への懸念・住民の反発も大きいと。ポテンシャルはあってもそうすぐには実現しそうにはない感じみたいですね。

 

 シリア連邦国家の形成を― アサド政権と反政府穏健派勢力の大同団結を模索せよ /レスリー・ゲルブ

  外交問題評議会の人ですし、特になし。そういえば、イラク政権を武力で打倒した結果、周辺諸国は制裁を恐れて言うことを聞くという可能性も上がったが、同時にいざとなれば、どこまでも徹底抗戦するというリスクも上げたと。だからシリアでの内戦で諸勢力は徹底的に戦う。化学兵器を使うというやらなきゃやられる感を導いたのはイラク戦争になるわけですね。もう完全にベトナム戦争・ケースを上回る、イラクケースですよね。ホントアホですね。

 

追い込まれたムスリム同胞団― 真の政治勢力へ進化するには /エド・フサイン

 同胞団は世俗主義を受け入れよ。チュニジアのアンハナダ運動のようなイスラム主義を憲法に盛り込もうという動きをすべきではなかった。同胞団の創設者、ハサン・アル・バンナーはエリート層との関係をうまくやることを怠らなかった。しかし現同胞団、モルシ政権はそれを怠った。サラフィー派を切り捨てずに、彼らと手を組んでイスラム主義路線へ向かう失敗を犯した。これで庶民の反発を買った。

 同胞団は個人的コネクションをもってしてそれで上手くやっていけると勘違いした。各組織の中核利益や価値観を過小評価した。アンハナダ運動も、トルコも女性が参加を認められている。同胞団では女性は別枠の組織になっている。組織の上部委員会は依然として50歳以上の男性。

 イスラム主義の放棄と世俗主義による安定した統治が望まれるわけだが、軍政以後はそのような組織・勢力が出てこないかぎり民政以降は難しい。そういう組織を育てられるのか?アンハナダ運動よりも、遅れていると見て良いのかな?

 

 教育ローンは将来への投資か、未来を抑え込む債務か /スティーブン・J・マルコビッチ

特になし