てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

ソ連崩壊のロジックが中国にあてはまるか比較分析

過去記事の再掲です。元は10/11に書いたものです。

前にも書いたように中国分析をする前に、当時のソ連崩壊現象から分析するのがよろしかろうということで、博士のソ連・ロシアの著作5冊(ソビエト帝国の崩壊―瀕死のクマが世界であがく ソビエト帝国の最期―"予定調和説"の恐るべき真実ロシアの悲劇―資本主義は成立しないソビエト帝国の分割―日・米・独の分捕り合戦がはじまるソビエト帝国の復活―日本が握るロシアの運命)を読んでました(まあアマゾンも取り扱ってないですね。中古品ばっか『崩壊』と『最期』以外取り立てて読む必要があるとはいえません)。んで、以前の中国分析*1)でソ連と比較分析するといってろくなことは全然していないわけですね(^ ^;)。

一応サクッと振り返ると
ソ連の経済危機=闇経済なくして成り立たない
 という状況がありました。ゆえに経済危機でソ連は持たない。このことは社会主義
市場経済という言葉があるように、中国は資本主義への道へと修正しました。無論まだまだ透明性など様々な点で資本主義とは程遠い状態ですが、この経済の点ではまずソ連と同じ轍を踏まない。中国はソ連型では崩壊しません。前にセイの法則云々したように、そちらの問題でしょう。よってこの点の経済分析ではソ連の事例はあまり関係がない、崩壊・失敗という点から有効な比較対照にならない。

経済危機=軍事危機
 経済がガタガタになると、軍隊も同様、ガタガタになる。なぜかというと兵器もまともなものが作られなくなるから。ソ連製は故障しないことで有名だったが、潜水艦が勝手に火事を起こすわ、アメリカ空母にぶつかるわの故障だらけ。中東戦争やアフガン戦争で欠陥を暴露した。博士はむしろソ連の崩壊による危険性を主張していましたね。強いソ連より、危機に面して暴走するソ連が怖いという説です。この点博士の主張は重要な指摘であると同時に外しているわけです。ソビエト帝国の崩壊にある記述ですが、それでも見事な分析なので面白いですよ。見たい人は是非どうぞご覧あれ。

 それと同様強い中国より弱い中国が怖いことになるか?軍事的な面では、経済がうまくいっている限り、軍事兵器も問題はない。しかし結局日米などと比較して、膨大な軍事費の伸びを見せても、優位がひっくり返ることはない。経済成長=軍事成長=日米にとっての中国危機という説は殆ど現実味がないわけですね*2

③派生して超大国スーパーパワーという立場世界システム内における中国
 ソ連はアメリカと並んでスーパーパワーだった。今アメリカはウルトラ・パワーなんて言われたりもしますが、やはり米一極に変わりはない。その強さゆえに脱米潮流が世界中に見られるわけですけれども。ソ連の行動は国内の組織的要請と超大国・スーパーパワーによる否応もない立場という要素がある。
 スーパーパワーという点で見ると、中国は次の超大国なんていわれるが、その内容は大きく異なる。仮に中国がソ連のように米に対抗する極になろうとしても、ミャンマーと北くらいしか影響を及ぼせる勢力圏はない。そしてその勢力圏内独自で共産主義革命、イスラム革命なりの独自のイデオロギーを持つわけではない。その圏内に参加することで利益がない=どんどん拡大していかない。自由貿易・民主主義に取って代わるものがない限り、独自の極=アメリカに対抗する構造を持つことはできない。この点の相違はきわめて重要なのでよく認識しておきたい。
そもそも世界システム内で中国がアメリカに対抗できる国際政治構造でないこと。*3
 
 この点が全く違うため、少なくとも中国が仕掛けない以上、問題にならない。米中その意志はない。というか米ソ冷戦とそもそも前提が全く違う以上、考慮に入れる必要すらないといっていいほどだ。*4


④その他重要な相違点、比較するべきところ。
【アフガンと類似する台湾】
 アフガンを見るとわかるように、アフガンを失うということはソ連にとって国内イスラム教徒の支持を失うということに等しい。国内が瓦解するために介入をせざるを得なかったという死活的利益があった。それと類似するのが台湾であり、その点の危険性は一応あるが、よほどの危機でない限り、それが現実味を帯びてくることはないだろう。中国が台湾を現状支配をしているわけではないので。

【軍のコントロール】
 いずれにせよ、すべては中国経済がどうなるかその一点にかかってくることだろう。および政治が軍事費が重荷になって経済がこけたソ連の蹉跌を踏まないように、軍縮・軍のコントロールを出来るかどうかが鍵になる。これが重要な要素なのは鄧小平以来ずっと変わらないことである。

【三十年、戦争の欠如&安保闘争
 そしてアフガン同じく、中国は1979年のベトナム以来まともな戦争をしていない。日本が65年なら、中国は30年。一つの構造変化・転換の時代に入ってきたといえよう。同じく天安門で民衆の声を力でねじ伏せても構わないんだというときから、20年経ちましたしね。今の反日デモを力でねじ伏せることはもう難しいでしょう。日本の安保闘争=暴動に近いデモ、彼らの不満を上手くくみ上げること。そのようにうまくやれるのかという点(まあ安保は目的が意味不明なところが多かったですが)。
 おまけに安保と類似した現象から派生して、アノミーによる極左のテロがありました。そのような危険性・特にカルトテロの可能性が高いです。今のイスラムテロの標的はアメリカですが、中国がそこに踏み込んだら、どうなるか?特にウイグルチベットも仏教勢力ですし、宗教に走る若者が「中国」というイデオロギーに満足できず、上の特権階層の矛盾から「中国共産党」こそが、中国人の幸せを踏みにじっている!チベットウイグルを弾圧している!となる可能性がありますね。

チベットウイグル問題】
 ソ連は形骸化してるといえども、独立の自由を明記していた。中国は自治区。いずれにせよ経済崩壊で構ってられない、自治区は国家として独立してもよろしい!―なんて状況とは無縁。ロシアのように独立させて、支援金を払わずに、技術・援助などで十分コントロールできる。ウクライナ然りね。同じようにチベットウイグルを独立させてしまえば、国際非難も受けない。が、中国人には「小中国」、小さい政府でリストラクションしたほうが幸せだということが理解できない。一つの中国でなければならないという強迫観念に駆られている。そういう観念がもたらす危険性はある。これが解決されるかどうかは重要なファクターになる。

【富・威信(名誉)・権力の独占が革命を呼ぶ】
 江戸時代は商人は富があっても決して偉ぶることは出来なかった。威信がないから。政府・役人は威信、権力はあっても富はなかった。また武士に対する公家も同じだろう。こういうふうに
富・威信(名誉)・権力が一体化する特権階級、階層がいないと革命は起こらない。しかしソ連のように特権階級化が進めば…。今の中国の指導者の顔ぶれを見ていると、儒教文化・儒教官僚をそのまま引き継いでいるだけだから、非常に危ないといわざるを得ない。ビジネスマンの方が富を持っているとはいえ、富・威信・名誉を共産党指導者層が持っていることに限りない。*5
 政治家・高官の息子は、日本のバカな例のように世襲はしなくても、ビジネスマンとして必ず成功している。太子党なんて言葉があるように、コネは成功を意味する。どの社会でもコネは大きくても、これはちょっと露骨。一種の天下りに近い
 かつての日本が共産主義に惹かれたように、平等という幻想は非常に魅力がある。今の共産党は腐敗してしまった、共産主義の本質から外れてしまった!本当の共産党&共産主義カムバック!ということになりかねない。かつて日本が高度経済成長時代に、何でもかんでも上手くいくと誤解して、ノンポリなんて言葉があったように政治は停滞した。必要な政治改革・経済構造改革を全くやらず、そのツケで今苦しんでいる有様。―このような構造をたどる可能性が非常に大きい。言論の自由共産党入党の自由、かつそのなかで公正に実力主義で出世をさせてリーダーを選ぶ、権力に透明性をもたらすなどという急激な改革はまず無理だろう。そういう点からも日本同じく停滞する可能性が非常に強い。

ソ連は30~50年代高度経済成長であった】
 これをみるにつれ、常々思う―成功は失敗をもたらす麻薬である、と。そしてこの成功時代に作られた巌のような制度はどうしても、何をやっても壊すことの出来ない宿痾となってのさばり続けるのだ。どうやってもロシアは改革が出来なかった。それは資本主義にふさわしい所有の観念が育っていないからである。納期もQCクオリティコントロールも何もない。同じく中国には「強制された資本主義」が育ちつつはあるが、まだまだ資本主義を理解しているとはいえない。これは日本も同様なのだから、言うまでもない。90~10年代の高度経済成長は必ず、歪な制度をもたらし、その制度に手を付けられず、ロシア・日本同じく、必要な改革を不可能にするだろう。

【ロシアの改革はスターリン主義による改革だった。中国の改革開放も毛沢東主義ではないか?】*6
 ロシアの失敗はペレストロイカで、念力主義のように、スターリン主義・モデルでの重工業集中投資を、ハイテク産業集中投資にしただけだった。こんなことで、上手くいくはずがなかった。この指摘を見て思うことは、毛沢東主義のような感情論理、「がんばったらなんでも上手くいく」。そのような観念が今の社会主義市場経済に備わっている可能性が高いということである。
 つまり毛沢東の大躍進と同じベクトルがただ、改革開放というベクトルに変わっただけ。それに従えばいいと思っている。上の動向・命令に従っているだけ。言論の自由がないのだから、自分たちであるべき理想、するべき行動を模索する土壌がない。つまり現状変化に対応できない可能性が極めて高い。資本主義=現在の経済のルールを理解して、そのルール内で最高の振る舞いをするという発想が根本から欠如している可能性が高い。海外との垣根を低くして、マネーを呼び込むという見事な発想があったから今の発展があるわけだが、この優れた判断・決断もトップが決断したら出来る類のものだった。トップが決断しても出来ないものだったら…。
 日本人もその場の空気、集団の意向を尊重する。日本人というか個の思想が確立されていない西欧人・キリスト教徒以外は殆どそうだろう。さらに上の意志・決定を実行するしかないとしたら、上がダメだからすべてダメのような単純な反発につながる可能性が高い。

ま、まだまだ書くことは尽きないが終わりそうにないのでこの辺で。

 *7

*1: 

*2:現在ちょこちょこ暴れているように、少しでも領土を広げようと必死に工作する程度でしょうね

*3:―であるにもかかわらず、韓国が中国のこの勢力圏・支配圏に参加しようとする動きを見せるとは、当時思いもしませんでしたね。地域大国としてならともかく、国際的な大国・スーパーパワーにはなれるわけ無いですからね。入れ子構造として、中国を包括する円として米がある。米の支配圏の中に中国の支配圏という構造が成り立つのならばともかく、そんなことありえないわけですからね。まあ不合理な選択をするものだと驚きましたねぇ、おったまげーしょんでしたね。

*4:当時は習近平ではなく、胡錦濤の国際協調路線時代でしたからね。習近平の米支配圏への挑戦は、ある種韓国の無謀な行動と同じ不合理な行動と言えるでしょうね。

*5:例えば習近平個人に限って見ると大した富はないようですね、がファミリーで見ると、ファミリーがなんかの社長とかやっているケースが多いわけです。というわけでやっぱり富もあるとみなすべきでしょうね。

*6:毛沢東主義ってのはちょっとおかしいですね。改革開放路線自体は鄧小平主義によるものなので、その鄧小平主義を検討せずに、毛沢東主義といきなり書くのはちょっと問題ですね。毛沢東主義の要素があるとしても鄧小平主義の中に毛沢東主義がウィルスとして潜り込んでいないか?とか書くべきでしたね

*7:アイキャッチがないと寂しいので、画像だけ一応貼りました。

ソビエト帝国の崩壊―瀕死のクマが世界であがく (1980年) (カッパ・ビジネス)