てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

ロシアの「死にゆく社会」/ニコラス・エバースタット

フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年12月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

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ロシアの「死にゆく社会」― 想定外の人口減少はロシアをどう変えるか

/ニコラス・エバースタット

 Nicholas Eberstadt一アメリカンエンタープライズ研究所政治経済部長、全米アジア研究所(NBR)上級顧問だそうです。

 ソビエト崩壊後のロシアは、死者数が出生数を着実に上回る「死にゆく社会」と化している。ロシア国家統計局(ROSSTAT)によると、1992年以降、死者数が出生数を約1250万人上回っている。この20年間、二人生まれる間に約三人死んでいるペースとなる。第二次大戦以降に死者数が出生数を上回ったのは毛沢東大躍進政策時の1959~61年の中国のみ。

 結果、ロシアでは過疎化が進んでいる。旧ソビエト諸国からの移住によって全体的な人口減はいくらか緩和されているが、人口減少トレンズは続いている。政府の統計によると、1993年と1万人増の2010年以外、1992年以降毎年人口が減っている。1993年当時、1億4860万人だった総人口は、2010年には1億4190万人とほぼ5%減少した(2010年の人口は移住者を加えると100万人近く増えるが、全般的な人口減少トレンズに変化はない)。

 ドイツ、日本、イタリアの人口減と決定的に違うのは、公衆衛生体制が整備されていること。ロシアの公衆衛生は急速に形骸化し、これが死亡率を一段と押し上げているという違いがある。

 米カリフォルニア大学と独マックス・プランク人口統計研究所の共同プロジェクトをベースにしたヒューマン・モータリティー・データベース(HMD)によると2009年のロシアの平均寿命は1961年当時よりも低下している。成年人口の平均余命に限ってみると状況はもっとひどい。2009年におけるロシアの15歳の若者の平均余命は、1959年当時の水準よりも2年短くなっていた。若い男性に限ってみれば、ほぼ4年短くなっている。別の言い方をすれば、ソビエト後のロシアでは、平均寿命に達する前に「早死に」した人が累計700万人を超えることになる。

 過去20年間、せめてゴルバチョフ期の平均余命で推移していれば、700万人以上の死を回避できたはずだ。700万といえば、第一次世界大戦でロシアが失った犠牲者数の3倍以上に相当する。

 ロシアの人口動態のパターンは、世界の最貧国並。

 なぜロシアの人口は減少しているのか。感染症の問題(エイズと薬物耐性結核)はよく知られているが、それだけでは説明できない。直接的な原因は、心臓系疾患、そして専門家が「外的原因」と呼ぶ中毒、ケガ、自殺、殺人、交通事故など。心臓系疾患とケガによる死亡が、ロシアの死亡率の急増の根幹。現在ロシアの心臓系疾患による死亡率は西ヨーロッパ諸国の3倍以上で、外的原因による死亡率はリベリアシエラレオネなど紛争直後のアフリカの国々と同じ高水準にある。

 しかし都市化が進み教育水準の高い社会で、しかも平時において、なぜかくも死亡率が高いのかは謎に包まれている。ロシア人のウオッカ好き、喫煙や食生活、そして疾病の予防体制や公衆衛生環境などにあると考えられている。世界保健機関(WHO)によると、2004年の時点でロシアの成人人口に占める喫煙者の比率(36%)は、ヨーロッパのどの国よりも高かった。だが、こうした要因すべてを考慮しても、ロシア人一般に教育水準が高い国では公衆衛生の水準も高いが、ロシアはその健康レベルと死亡率は欧米の公衆衛生モデルで予想されるよりもはるかに悪い。正直なところ、なぜロシア人がこれほど不健康なのかは誰にも分からない。生活態度や人生観、それに「メンタルヘルス」領域の問題と関係があるかもしれない。文化的・心理的領域を別にすれば、高所得国で想定されるよりもはるかに高いロシアの死亡率は、そのライフスタイルが極端に不健康なためかもしれない。

 外的原因による死亡率がきになるのですが、それについては触れられていないですね。事故が起きやすい人命軽視の環境だったり、暴力的な衝突が日常茶飯事とか?何があるんでしょうかね?

 ロシア人が不健康なもう一つの理由は教育部門の問題と関係があるかもしれない。ロシアの教育危機は人的資源(人材)の危機も引き起こしている。本来なら、教育はロシアの社会政策の基盤だったはずだ。高等教育を受けた市民の数は、豊かな欧米諸国の多くと肩を並べている。経済協力開発機構OECD)によると、ロシアは中等教育以降の職業訓練または学位を持つ成人人口の比率では世界のトップクラスにある。主に軍事分野だったとはいえ、ソビエト期におけるロシアの科学者や技術者たちは優れた見識を持つことで知られていた。

 だがいまや、ロシアの教育制度は崩壊しているようだ。教育水準が高い国では公衆衛生の水準も高いはずだが、ロシアではそうなっていない。

 学校や大学に通っていても教育の内容が十分でなくなっている。ロシアの教育の質が極めて低いことは、国際的な学カテストの結果をみれば明らか。三流レベル。

 大学などの高等教育になると、ロシアにおける教育の質はさらにひどくなる。高等教育を受けている世界の人口の6%はロシア人だが、過去15年間に米特許商標庁が付与した国際特許のうちロシア人に付与された比率はわずか0.1%。それくらい申請数が少ない。世界知的所有権機関(WIPO)によれば、過去15年間における国際特許の申請数に占めるロシア人の比率は0.2%を下回っている。

 同じ傾向が学術論文の発表数にも現れている。2008年にロシア人が学術誌に発表した論文の数は1990年の水準と変わらない(この間、他のほとんどの国の発表数は増えている)。2008年の時点では、ロシア人研究者が発表した学術論文の数は、他のBRIC諸国(ブラジル、中国、インド)の学者たちと比べても見劣りする。

 ロシアの出生数、出生率の低下も謎。1987年当時は250万人だったロシアの出生数は、1993年には140万人へと減少し、1999年には過去最低の120万人へと落ち込んだ。その後、増加に転じ、2010年には過去20年間で最多の179万人が誕生したとはいえ、それでも25年前と比べると25%少なく、このままいけば女性の生涯出産数はぎりぎり1.5人となる。長期的な人口の安定に必要な水準(人口置換率)より27%少ない計算になる。

 しかしひと言にロシアと言っても、民族グループや地域ごとに状況は大きく異なる。ロシア全体の出産数は最低水準にあるが、チェチェン人女性の出生数は平均3.3人とロシア内では最高の数値を示している。だが、ダゲスタンやイングーシなどイスラム教徒が多数派の近隣地域の出生数は人口置換率を下回っており、チェチェンはこの地域の基準でみても異例の存在だ。イスラム化するロシアというポイントでよく語られますね、このへんは

 出生率を別にしても、ロシアの家族関係や子育てもこの20年間で大きく様変わりし、若い世代の人的、経済的ポテンシャルも抑え込まれている。ソビエトは離婚率が高いことで有名だったが、現在のロシアでは状況はさらに悪化し、結婚したカップル100組のうち56組が離婚している。もちろん不安定な家族関係は世界的なトレンズであり、ヨーロッパのほぼすべてと多くの富裕国も同じ問題を抱えている。しかしロシアでは離婚後に子育てをする片親は、欧米諸国においてよりもずっと少ない所得で子育てをしなければならないし、社会保障による支援も少ない。

 また、欧米の経済理論では、子供の数が少なければ親が子供一人に投資できる金額は増えるはずだが、ロシアでは正反対のことが起きているようだ。出生数が急減しているにもかかわらず、小学校の就学率はわずかながらも低下し、育児放棄は危険水域に達している。政府の統計によると2004年の段階で、親と離れた施設で暮らしている18歳未満の子供は40万人を超えている。これはロシアの子供の約70人に一人が養護施設か孤児院、または国が運営する寄宿施設にいることを意味する。ホームレスの子供も多く、その数は増え続けている。非政府組織によると、ホームレスの子供の数は施設にいる子供の数を大幅に上回っている。

 中国なんか小皇帝というような子供溺愛の状況になっていることで有名ですが、これも中国の血縁原理・儒教があるが故、ロシアにそれがないということが言えるのでしょうか?

 この流れを覆そうと、ウラジーミル・プーチン大統領は2006年、第二子または第三子を産んだ母親に最大1万ドル相当の補助金を与える制度を発表し2025年までにロシアの人口を1億4500万人程度で安定化させる「2025年ロシア連邦人口政策概念」を発表した。その目標は平均寿命を75歳(当時は67歳)に押し上げ、出生数を2005年の実績より50%増やして1.95人にすること。

 計画通りにいけば、2015年以降にロシアの出生数は死者数を上回ることになる。モスクワは出産奨励と同時に、死亡率を引き下げようと、アルコール飲料の値上げと購入制限の強化などの対策を実施している。政府発表を聞く限りは、モスクフはこれらの対策の前途を楽観しているようだ。確かに、一連の政策が導入されて以降、出生数は増え、死者数は減っている。平均寿命も2009年に、ソビエト崩壊以降最高の69歳まで上昇した。とはいえ、こうした楽観的な見方は、そこに「変えようのない現実」が存在することを無視している。

 過去20年間の出生数の減少によつて、今後、出産適齢期の女性の数が減っていく。ロシアで子供を出産する母親の3分の2は20~29歳の若い女性たちだ。しかし、2025年の時点での20代の女性人口は、現在より45%減って640万人しかいなくなる。この640万人が既にこの世に存在することを考えると、この見通しには間違いは起こりえない。したがって2025年に現在の出生数を維持するためだけでも、女性たちはかなり多くの子供を産まなければならない。

 同時に、ロシアでも高齢化が急速に進んでいる。米国勢調査局によると、2011年のロシア人の年齢の中央値は38.7歳だが、この数値は毎週ほぼ2日ずつ上昇していくと考えられており、2025年には42.4歳に達する見通しだ。また現在総人口の13%を占める65歳以上の人口は、2025年には約19%に達する。

 このまま何も変わらなければ、高齢化という現象だけでみても、ロシア人の死亡率は20%以上上昇するだろう。さらに公衆衛生環境が劣悪であることを考慮すれば、平均寿命を押し上げるのは非常に難しいはずだ。就労人口の死亡率を1964年の水準に戻すだけでも、全人口の死亡率を25%下げなければならない。これを実現するのはほぼ不可能だし、そうできたとしても、就労人口の死亡率は依然として現在のホンジュラスの比率を上回ることになる。こうした現実を踏まえると、ロシアは当面「死にゆく社会」であり続ける。

 ロシアの政府統計によれば、死者数が出生数を上回る状況は2030年まで続く可能性が高い。ROSSTATによれば、2011年は死者数が出生数を20万5000人上回り、2030年にそのギャップが72万5000人を超え、累計で950万人に達する見通しだ。ROSSTATは、もっとも楽観的なシナリオでも、二〇一一~二〇二五年の出生数と死者数のギャップは累計で270万人になり、2030年にはそれが470万人に達すると予測し、「人口減を食い止めるには外国からの移民を受け入れるしかない」と結論している。

 確かにこの20年間、ロシアは何百万人もの出稼ぎ労働者を受け入れ、これによって人口減を補ってきた。その多くはカフカス中央アジアの旧ソビエト諸国出身者だった(一方で、ロシア経済は在外ロシア人からの仕送りに大いに助けられている)。しかし今後は、それほど多くの移住者の流入は期待できない。旧ソビエト諸国の教育政策が変更され、既に親の世代からロシア語が話せなくなっているために、若者たちはロシア社会に溶け込むのに苦労している。また彼らを受け入れるロシア人も、外国人をあまり歓迎していない。

 同様に重要なのは、ロシアにおける国内移住問題。特に厄介なのが、500万平方キロを越える広大な土地に600万人しか人が住んでいない極東ロシア地域だ。ここは自然環境が厳しいため、1989年以降住民の六人に一人が他の地域へと移住しており、人口流出は今も続いている。

 だが、極東ロシア地域は資源が豊かで、南には人口が多く、めざましい経済的台頭を遂げている中国が控えている。このため、極東ロシアの行く末を案じる専門家や政策当局者は少なくない。オックスフォード大学のマリア・レプニコバ研究員やジョージタウン大学のハーレー・バルザー准教授ら欧米の専門家たちは、 ロシアの極東地域と近隣諸国(特に中国)の間には、莫大なチャンスが手付かずのまま残されているとその機会に目をむけるが、人口統計学者たちは、人口減のために今世紀中にこの地域がロシアの一部でなくなるのではないかと懸念している。仮にそうなれば、その地政学的な帰結は甚大だ。

 いかに天然資源に恵まれていようと、人口・人的資源がなければその利点を活かすことは出来ない。人口問題の危機の深刻さを過小評価し、対策の効果を過大評価している。2008年に世界経済危機が起きる直前、モスクフは野心的な経済計画「ロシア2020」を発表した。2020年までにロシアが世界の経済大国トップ5に食い込み、2007~2020年は毎年6.6%の経済成長を実現することが日標にされている。2010年の国民一人あたり生産が2007年の水準をかろうじて上回る程度なのに、モスクワは依然として「ロシア2020」の日標達成が可能だと考えている。目標を達成するには、2010~2020年まで労働生産性を年9%以上のペースで向上させる必要がある。だが、1978年から現在まで、中国でさえも、これほど高い労働生産性の成長を長期にわたって維持することには成功していない。

 この「ロシア2020」がどれくらい現ロシア政権にとって重みを占めるものなのかどうかが気になりますね。大国・強国ロシアという物語・威信こそプーチン政権を支えているものですからね、その一環の経済版といえるものでしょうし。まあ、無謀以外の何物でもないのですが。そろそろロシア内部からそんなことより欧州とうまく折り合って幸せな社会を!ってならないと、成長しないどころか人口的にかなり大問題になっていくというのは間違いないでしょうね…。国が消滅するレベルの話ですからね、少子化は。常々言ってますけど愛国主義や強い国を謳うならまず何よりこの問題でしょう。経済力もさることながら軍事力に一番響くのが少子化なんですから。クリミア→祖国ロシアの危機!→強い兵士が一人でも必要!少子化対策じゃあ!みたいなロジックが働くと面白いのですが、まあそんなスイッチははいらないでしょうねぇ

 2005~2025年に世界の就労人口に占めるロシア人の比率は2.4%から1 .6%に落ち込む見通しであり、まずこれを何とかすべき。「ロシア2020」の目標を達成するには、ロシアは世界全体よりも年平均2%高い労働生産性の伸びが長期的に必要。当然それは難しく、ロシアが貧しくなるとは言わないまでも、成長する他国に埋没していくだろう。

 人口減は兵力面で大きな制約を作り出す。現在のロシアは、その多くが徴兵によって1年間の期限で集められた100万人超の兵力を持っているが、今後、戦力規模を維持していくのは不可能だ。徴兵制を撤廃して完全に志願制にする計画はあるが、兵力の大半が18歳の男子になることに変わりはないだろう。ロシアの1990年の男児出生数は100万人をやや上回る程度だったが、1999年には39%減の62万6000人まで落ち込んでいる。

 つまり、2008年からの9年間で新兵の「分母」は数だけでみても約5分の2縮小する。この兵力の減少を阻止するには、徴兵の条件を緩和するか徴兵期間を延長するしかない。しかし軍隊には健康的で教育のある兵士が必要であり、条件を緩めるわけにもいかず、期間延長も徴兵制に人気がなく、給料レベルが低いことへの不満があるために難しいだろう。

 2008年8月にグルジアとの戦争を戦った際、モスクワの一部は、ソビエト崩壊後の軍事力衰退の10年間を経て、いまやロシア軍は復活を遂げたと考えた。しかし兵力わずか2万人の隣国グルジアが相手では、ロシアが軍事超大国として世界的な影響力を維持していると立証したことにはならない。

 兵力以上に、ロシアの軍事力は高等教育と技術訓練の危機によって衰退している。軍事技術開発分野にも、貧弱な外国特許取得件数に象徴されるような技術革新力の乏しさが影を落としている。ロシアの軍需産業は知識集約型の技術革新志向に乏しく、ソビエト時代の知的資本を食いつぶしているだけの状態にある。

 軍事力の近代化を試みる北京とは違って、モスクフは事実上前世紀の技術で今世紀の戦争を戦おうとしている。ロシア研究者のアンダース・アスルンドとアンドリュー・クチンズは2009年に、軍事力の近代化をある程度実現した中国は、「ロシアからの軍事技術輸入を減らし、アンゴラ、エチオピア、シリアなど、ロシア兵器の伝統的顧客に独自の軍事技術を輸出するようになった」と指摘している。 通常戦力の衰退によって、ロシア軍は、侵攻してくるドイツの戦車に騎兵隊で対抗するしかなかった、かつてのポーランド軍のような存在になりかねない。人口危機が引き起こす安全保障リスクについては、プーチンとメドベージェフも頭を悩ませてきた。プーチンは2000年7月の演説で「ロシアの人口は年々減少している。・・・われわれは老人の国になる危険に直面している」と発言し、2006年の演説では、人口減少を「現在わが国が直面するもつとも切実な問題」と位置づけた。メドベージェフも2009年5月に発表した「国家安全保障戦略」で、人口動態問題は政府が取り組まなければならない「安全保障上の新しい課題」だと述べている。

 人口減少が作り出す危機に直面したモスクワが、国際社会にとって、ますます予測不可能で、他を脅かすアクターになっていく危険性がある。真っ先に考えられるのは、兵力の低下と軍事技術の衰退に直面したロシア軍の高官たちが、核兵器使用の敷居を低くすること。実際プーチン政権の2000年の「国家安全保障概念」にこうした戦略を示唆する表現があり、メドベージェフ政権が2009年に発表した「国家安全保障戦略」でも、この路線が確認されている。 ロシア政府は核兵器を軍事的切り札とみなしており、国際環境の脅威が高まってくれば、モスクワが核をバックにして外交を展開するリスクが高まる。

 実際、人口減少問題の本質を理解すれば、危機感をつのらせたロシアの指導者たちが、国際社会で場当たり的に対決路線をとるようになる可能性は十分ある。この過程において、同盟国との関係でも非同盟国との関係でも、誤算が生じる恐れがある。しかも、アフガニスタン、イラン、北朝鮮パキスタン、そして中央アジア諸国など、ロシアを取り囲んでいるのは、今後数十年にわたって不安定で粗野な行動をとりかねない国ばかりだ。近隣諸国が不安定になリロシアにとって安全保障上の脅威が高まったタイミングで、モスクワが相対的なパワーの衰退を痛感するとすれば、自信を失ったモスクワは無謀な行動をとるかもしれない。

 なるほどなるほど、そして筆者は、国際社会は公衆衛生と教育の改善を支援して、ロシア再生を支援して、健全な力強いロシアこそが安定に好ましく、世界の利益になるとしています。が、個人的にはむしろロシアの縮小というか衰退でもロシアを叩いたりしないという保証を与えて冷戦時の終戦のような形に持っていくべきではないでしょうか?いくらなんでも長期的な衰退に直面してそれでも大国のメンツにこだわって核戦争じゃあ!とまではならないと思うんですよね、ロシアは力の信奉者ですから。敵から攻められて、どうせ死ぬなら&負けるなら、戦ってそうしようみたいな状況でもない限り、暴発という危険性は高くない気がしますしね。もちろん短期的に急変するという形ならそこに不安定・思わぬ事態が起こりかねないのでしょうが。あまり刺激せずにゆるやかにしぼんでいくのを待つべきじゃないでしょうかね?例えるなら塩を与えたナメクジとでもいいましょうか?「ナメクジに塩」戦略でロシアには向かうべきだと考えます。まあ、これは日本も同じ事言えるんですけどね…。

 こういった動向を考えると、ロシアの人口増という願望・兵力増強という願望にクリミア半島の併合というのは実に深く関係していたのではないでしょうかね?ウクライナの軍隊があっさり白旗上げてロシアに帰参したのも自分たちが高く評価されるということがあったんじゃないでしょうか?

 まあ、いずれにせよ、将来的にはロシア人の減少によって後退せざるを得なくなるんでしょうけどね。東を捨てるか西を捨てるかだとしたら、東を捨てるって感じがしますし。