てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<中編>

日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質はモンゴル互助会の八百長・「注射」ではなく、モンゴル人差別と親方=理事制<前編>の続きです。角界に蔓延するモンゴル人差別の空気の話になります。

■日本人力士びいきからモンゴル人差別へ

 日本人であるがゆえに応援の手拍子が起こる。モンゴル人には応援の手拍子が送られることはない。最近、モンゴル人力士VS日本人力士という図式で日本人を応援するようになっていること。そして稀勢の里だろうが、豪栄道であろうが日本人が優勝しさえすればどうでもいいという空気になっているのだと。

 そしてもう一つはこちら。ポイントは①白鵬稀勢の里の取り組みで稀勢の里が勝ったときに場内から万歳三唱が起こったこと。そして同じく以前話題になって拙ブログでも過去に取り上げたことのある事件(※旧記事参照―白鵬の発言で思うこと - 別館、身体論・武術・スポーツのお部屋)。②白鵬稀勢の里の取り組みが同体として「取り直し」になったこと。白鵬が審判部にこの判定はおかしいと注文を付けた・異議を唱えた事件。この事件が白鵬がモンゴル人が差別されているのではないか…?と疑念を抱き、行動・スタンスを変えるきっかけ&転換点となった事件なんですね。それまで白鵬は力士として優等生でまるで問題を起こしたことがないタイプでしたから。 
 「偉大な「日本人力士」大鵬*1の優勝記録をモンゴル人に破られてたまるか」という差別意識が背景にあった。だからこそ取り直しになったのではないか?と白鵬は主張した。「肌の色」発言にあるように、つまりこれは人種差別に基づく基準・査定の歪みが角界全体に静に浸透している・蔓延しているのではないか?という白鵬の異議申し立てだったんですね。
 過去記事では、モンゴル人差別を中心として論じていなかった、焦点を当て損ねていましたが、全然問題の本質を当時の己は掴めてなかったですね、一体どこに目をつけて何を見てたんでしょうかね。触れることは触れていましたが、もっとここに焦点を当てなくてはいけなかった。これこそが大事なところだったのに…。

■スポーツ界でレイシズム・差別に鈍感であることは許されない―浦和レッズ横断幕事件を参考に
 浦和レッズの差別横断幕事件で「Japanese only」*2の横断幕が問題になったことがありました(この例を引き合いに出したいからサッカー界を例にして上手く比較したかったんですけどね、駄目でした。韓国が日本戦で得点を決めて猿の真似をしたり、野球で日本に勝ってマウンドに国旗を立てたというのもありましたね。スポーツに国家云々の持ち込むとかくも醜い。相撲において今起こっているのはその韓国ほどではないにせよ、それに近い行為が行われているということです)。スポーツでは人種差別・民族差別がつきもので、その反差別取り組みが問題になるものです。日本には米英圏のような人種差別の歴史・文化背景がないとは言え、相撲においても反レイシズムに取り組むのは当たり前。海外籍力士を受け入れて、国際化が進む流れを考えれば尚更でしょう。16年にヘイトスピーチ解消法が施行されたように、人種差別・民族差別につながるような動きを角界においても厳格に取り締まるべきでしょう。

■「モンゴル」で叩く応援、「日本人」で称える応援は禁止&それをする人間は出禁にしなければならない
 照ノ富士が変化して勝利をした時、「モンゴルへ帰れ!」というヤジがありました。こういう客はふんづかまえてふんづけてやる!ではなくて、永久追放処分・出禁にしないといけません。大関たる地位にある力士が変化をするのはよくないこと。だからといってこれはない・この発言はアウト。
 もちろん駄目なことですが、「バカ野郎クニに帰れ!」なら日本人力士への罵倒としても成立する言葉です。しかし「モンゴル」と限定した場合、モンゴル人以外あり得ない発言で、日本人とモンゴル人を明確に分けてヘイトすることになる以上アウト。そして海外出身の力士に対して闘う日本人力士を身内びいきから応援するときに「日本人頑張れ」というのもアウト。稀勢の里なら稀勢の里と個人名を出して応援をすればいいこと。そこに日本人・非日本人というカテゴリーを持ち出すのはアウトです。
 自分たちと同じカテゴリーに属する日本人力士を応援したいというのは自然な感情でしょうし、それ自体悪いことではありません。しかし非日本人というだけで貶める、~人負けろというような応援はアウトです。最近はその傾向が強まっていると星野氏は主張します(※参照―外国人力士差別対策待ったなし!星野智幸さんが警告「相撲で起こることは社会でも起きる」 : スポーツ報知)。ハワイ勢が躍進したときもこんなことはなかった。ここ最近、「日本人」「非日本人」という枠組み・空気が目立つようになってしまったと。そういう空気が醸成されて当たり前になってしまった以上、ヘイトスピーチに値する言動を取り締まらざるをえないでしょう。暴力団排除宣言のように、ヘイトスピーチ排除宣言のような取り組みが求められます。

■チームスポーツやホーム・アウェイがあるスポーツではない相撲で国が絡む応援は正常なものではない。今の相撲は見下しているプロレスショー以下のショービジネス
 どう考えても、日本人だけ場内で応援される。そして非日本人・モンゴル人が敵役にされて、日本人が勝ったら拍手万歳が起こるというのはおかしい。バレーボールのようなチームスポーツで国別対抗試合ではないですし、プロレス・ボクシングのようにベビーフェイス(善玉・正義役)やホームで日本人選手が試合して、現地の人から応援されて当たり前という前提があるわけでもない。相撲という興行形態においては力士個人が応援されるもの、客がそれぞれ贔屓力士を応援するというのが前提。日本人だけを応援するのが当たり前という発想は存在し得ない。
 よくプロレスを引き合いに出して、「プロレスじゃないんだから」という発言をする人がいます。それこそプロレスじゃないのですから、こういう善玉・悪玉のような図式を持ち込むことを手厳しく否定すべきでしょう。大体プロレスじゃないという言い方自体が、プロレスに失礼でしょう。そこには大相撲>>>プロレスとして、伝統芸能である自分たちに対して程度の低い見世物・ショーだという侮りがある。いい加減「プロレスじゃないんだから」というバカの一つ覚えも禁止した方がいいと思います。あくまでショー・見世物として善玉・悪玉という役割を演じているプロレスに対して、今の相撲はガチで日本人・善玉と非日本人・悪玉という図式になりつつある。今の相撲のほうがよっぽど程度が低くて下世話な見世物でしょうに。この気持ち悪い流れを一掃しない限り、プロレスファンから「相撲なんてレイシズムの塊で興行上の役割じゃなくて、本気で民族の視点を持ち込んで日本人以外を悪役にしている下賤なスポーツじゃないか。気持ち悪い」と言われても甘受するしかないでしょう。

 本来、きちんとすべき改革をしてこなかった結果、程度の低いレイシストが流れ込んでくる。良質な顧客が離れてしまった結果、そういう程度の低い顧客相手に商売せざるを得なくなって、どんどんまずい方向に向かってしまう。これは何か昨今の政治状況、自民党ネトウヨを票田として目を向けている・相手にしている状況を連想せざるをえませんね。改革をサボり、そのつけを程度の低い者で埋めてごまかしていくというのが最早日本の普遍的な潮流なのかもしれません。

白鵬が変えた万歳三唱の意味
 こういう流れを見ると、白鵬が優勝して会場の皆さんに万歳三唱を求めたことは素晴らしかったことになります。相撲において万歳三唱というのは天皇陛下に対して行われるもの。それを勝手にやるのは良くないという意見を眼にして、なるほどそういう慣習になっているのか、だとすると白鵬したことはまずいことになる―当初、そう思っていました。
 がしかし、稀勢の里白鵬に勝った時、場内で万歳三唱が起こったことを考えると、万歳三唱という天皇陛下に対して行われるものがヘイト行為に利用されるものになってしまった。それを上書きする意味で横綱の万歳三唱提唱は良かった。喜ばしいときに行うものとすればヘイト行為認定は避けられる。今後も記録的な優勝、ご当地人気力士の優勝や劇的な復活勝利の時などで、バンバン万歳三唱を行なっていく、そういう慣習に塗り替えればいいでしょう*3。相撲史において、万歳三唱に負の意味合いが押されかねない事件がありましたから、それを拭い去るという意味でも白鵬の万歳三唱主導は良かったと思います。あの場のお客さんは皆喜んでいたでしょうしね。

■「物言わぬ横綱」から「物言う横綱」への転換点
 こういうとき、白鵬を否定する人々は「物言わぬ横綱」の伝統を持ち出して否定する人がほとんどです。「横綱はそんなこと言わない」と何処かの飛影のような論理で否定する人が多い。しかし最早過去の模範であった「物言わぬ横綱」のモデルは通用しない。昨今の相撲界の混乱を見れば「物言う横綱」が必要になっているとみなしてもなんらおかしくありません。
 白鵬は「物言う横綱」・自己主張する横綱です。非日本人であるレジェンド白鵬だからこそ、角界の旧習を打破する行動が許される。角界に大改革・変革が待ったなしの状況において、選手会(力士会)サイドからの、力士を守る改革が必須な状況において、むしろ現代求められる「横綱の品格」が完全に変わってきているのだと我々は解し、白鵬を見守るべきなのでしょう。その上で初めて白鵬の主張が間違っているのか妥当なのかジャッジすべきなのです。

■無自覚なモンゴル人蔑視と日本文化・価値観の肯定。その姿はまるでアメリカ人のように醜い
 慣例・伝統にそぐわないから、モンゴル人だから日本の伝統をわかっていないなどという偏狭な伝統主義的な論理で否定すべきではなく、その白鵬の行動が良い改革に結びつくかどうかということを以って批判すべきなのです。
 プロレスに対する無自覚な侮蔑もそうなのですが、モンゴル人・非日本人力士に対する「外国人には自分たちの優れた文化がわからない」という無自覚な自民族優越主義は非常に不愉快ですね。陰に陽にモンゴル人なんていう野蛮な奴らには理解できないーそのような主張・無自覚な自民族・自文化優越主義を何回も見ました。白鵬のやってることはおかしいと思うこともあっても、根本的に筋が通っている。それを理解しようともせず、自分たちの優秀な文化・伝統が理解できない教養のない野蛮人という文脈で理解しようとするその姿は、あの卑怯なアメリカ人の姿そのものではないですか。
 都合のいいように主張を変えるダブルスタンダードと、自民族・自国の文明・価値観こそが唯一絶対の正しいものと考えて、相手を劣ったものと見なす。都合の悪いときには、相手が間違っていると、自分たちの誤りを認めない卑怯者の姿が、鏡を通して映し出されています。アメリカ人が映った鏡を覗き込んでみれば、そこに日本人が映る―などということあってはならない。この危険性はいくら強調してもしすぎることはないでしょう。日本人よアメリカ人になることなかれ、ゆめゆめその危険性を忘れるなかれです。

 昨今の流れを見ると差別の取り組みをして、規制を進めた結果、差別が無くなる方向に行ったのだけど、時間が経つに連れそれが暴走してしまうという流れがあります。それは海外籍力士への差別では?モンゴル人差別では?という指摘によって言論を封殺する逆差別というか、表現規制言葉狩りに針が触れすぎるという流れがあります。いずれそれはモンゴル人力士差別だから止めろ、あるいは~~を認めろという見当違いな主張も出てくることでしょう。まあ、昨今の状況を見る限り反差別の代償として、差別の棍棒を揮って暴走してしまうのはやむを得ないことでしょうね。そうなったときに白鵬理事長がババーンと誕生して、「それは差別じゃないだろう。見当違いなことを抜かすな!」と一喝するという図式が見えますね。角界が差別対策をせずに放置し続けた結果、怒りがマグマとなって爆発して反差別の流れが暴走して止まない。サヨクのカウンターのネトウヨみたいな状況が起こるんでしょう。そういうときに元モンゴル人理事長白鵬が「元モンゴル人の私が問題ないと言うのに、一体何が問題なのだ?」と問題を解決する図式が見えますね。まあ逆に言うと、白鵬理事長誕生にはそういう反差別の暴走が彼には必要でしょうね。いくら大横綱と言っても、元モンゴル人を理事長にしよう!と閉鎖的な角界の親方衆がすんなり認めるとは思えませんからね。

■モンゴル派のための稀勢の里横綱昇進の妨害工作
 モンゴル人は差別をされている。では我々モンゴル人力士はどうすべきか?そういう視点から白鵬は動いているわけですね。「モンゴル人力士への差別」があるからこそ、モンゴル人達で協力して日本人横綱の誕生を阻もう。稀勢の里の優勝を妨害して横綱誕生を防ごうという動きになった。将来白鵬理事長の誕生及びその改革の妨害というか邪魔になる可能性があるので、対抗馬稀勢の里を潰しておきたかったわけですね。将来理事会で白鵬に異論を唱えても、横綱にもなれなかった稀勢の里が何を言うかというロジックで封じ込められるので。横綱が少なければ少ないほど将来白鵬の発言力は大きくなるので当然の選択でしょうね。故に貴ノ岩に星の回し合いの話が行ったわけですね。もし、あの時貴ノ岩白鵬に勝たなければ稀勢の里横綱になれませんでしたから。貴乃花部屋のモンゴル人力士が日本人横綱の誕生を後押ししたという背景があったのですね。
 モンゴル互助会において星の回し合いが行われていたのは事実でしょう。が、それは他の力士達よりも異常に突出した頻度で行われたものではありませんし、その本質はモンゴル人力士達の利益・権利を最大限に拡大・確保しようというもの。自己防衛目的において行われたものと見ると非常にわかりやすいんですね(無論、背景にズルして・楽して勝って美味しい思いをしようとしたという要素がないわけではないのでしょうけど)。

■海外国籍力士達には入口はあっても出口がない角界。国籍変更の強要は本人と母国を傷つけるもの
 日本人であれば、引退後角界に親方として残ることが出来る。しかし、モンゴル人はそうすることが出来ない。「相撲には入り口はあっても出口はない」という言葉で白鵬は説明していましたが、まさにその通りで、力士・アスリートとして相撲協会に入って相撲を取ることが出来ても、引退後は残ることが許されない・排除されるという構造になっている。万歳三唱や稀勢の里びいきなどよりも、こちらのほうがよっぽど問題とも言える歪な構造でしょう。
 日本人であれば、引退後職をもらえる=定年退職後、再就職の保証があって安泰なのにもかかわらず、外国人力士にはそれがない*4。日本のプロ野球では年金はありませんが、MLBでは10年プレイすると年金がもらえるという制度があります。もし、MLBにおいてアメリカ人選手は年金がもらえるが、日本人などの海外選手はもらえないとなったら我々はどう思うでしょうか?当然それはおかしい!と反発するでしょう。またアメリカ国籍を取る・帰化しない限りは、才覚があっても監督になれないとなったらどうでしょうか?言うまでもないですよね。どうしてそれに国籍の有無が条件になるのだ!?と反発するでしょう。
 また琴欧洲も言ってましたが、親方として残るために国籍を変えたくはなかった。でも仕方なかった。母国では英雄として歓迎された。もし、イチローが国籍を変えるとなったらどうなるか?ちょうどそういう感じなんだと語っていました。栃ノ心が初優勝で母国の英雄・一ヒーローとなりましたが、もし将来協会に残るために国籍を変えるとなったら祖国の反応はどうなるか?ましてレジェンド白鵬の母国での反応においておや。白鵬はまさにモンゴルのイチローなわけです。イチローが日本を捨てるとなったら我々はどう思うか白鵬本人の心境に、モンゴルの人の心情はいかなるものになるか。このことについて我々はよく考える必要があるでしょう。
 

■モンゴル互助会とは権利闘争のための労働組合
 モンゴル互助会において、力士たちがお金をだしあって怪我をした力士や引退後に病気で入院した力士などにお見舞金を出しているとか象徴的ですよね。モンゴルの恵まれない子どもたちへの社会奉仕事業などもやっているそうですけど、それは別として本来そういう力士の労災や引退後の保険・手当のようなことは力士会でなされるべきこと。そういうことをきちんとやってこないがゆえにモンゴル互助会が誕生したという要素を我々は決して見落としてはならないでしょう。
 白鵬がやろうとしていることは、モンゴル人・日本人以外の海外籍力士がそのような権利を得られないのはおかしい。日本人以外の力士の権利を認めろ。待遇改善をしてくれということをやっているわけですね。
 モンゴル人どころかそれ以外の外国人力士全体のことを考えて、権利向上の運動・闘争をやっているんですね、白鵬は。モンゴル互助会で我々が注目すべきポイントは、権利闘争のための労働組合という性質なんですね。にもかかわらず、そういことを理解せずに逆らってナイラはやらないなんて言っている貴ノ岩は大馬鹿者なんですね。モンゴル人の地位向上のためなんですから、貴ノ岩本人のためでもあるし、何よりこれから新規参入してくる後進たちのためでもあること。それに従わないのですから、モンゴルの先輩力士が激怒するのも当たり前です。地位向上運動を理解せずに勝手な行動を取っているわけですからね。

■実は人材危機にあるモンゴル派
 以前、モンゴル力士は腐るほど居てモンゴル派閥は今後も安泰で一大派閥で有り続けるだろうということを書きましたが、どうもそうではない要素があるようです。事件の背景には八百長事件によって、現白鵬らの最年長層の力士と貴ノ岩などの若手力士層の間に本来位置していたはずの、中間層のモンゴル人力士の追放があるのだと。中堅に値する年齢の力士が八百長事件でいなくなって、年長世代と若手世代をつなぐ、中間世代がいなくなってしまっために、本来若手に色々なことを仕込んだり、教えたりする力士がいなくなってしまったことが事件の背景にあるという内容でした。
 例えるなら、会社で40代と30代と20代の社員がいたのに、30代の会社員が何らかの事情でゴソッといなくなってしまって、40代と20代の社員達の世代間ギャップが大きくて円滑なコミュニケーションが取れなくなっている状態とでも言いましょうか。確かに背景にそういう理由があるとしたら、モンゴル人同士の衝突は若手と年寄りの世代間ギャップ・コミュニティ内の文化継承の断絶・失敗ということもできますね。
 気になったので調べてみると、八百長事件で角界を去ったモンゴル人力士は6人(蒼国来は後に処分解除されたので除外しています)、星風・保志光・猛虎浪光龍・徳瀬川・白馬。星風が1983年生まれで、他は皆1984年生まれですね。むしろ白鵬よりも年上なので彼らが居なくなったため、貴ノ岩ら若手世代と断絶があるわけではありませんね。なのでこの世代間断絶という指摘は少し的外れだと言えます。モンゴル人力士が多ければ多いほど、内輪のルールが若手に浸透しやすいのは確かでしょうけどね。
 横綱以外のトップのモンゴル人力士を見てみると、玉鷲白鵬世代の84年、照ノ富士が91年、逸ノ城が93年、荒鷲86年、千代翔馬91年、で件の貴ノ岩が90年生まれということになっています。力士が大体35歳までに引退するということを考えると、白鵬鶴竜は32歳でいつ引退してもおかしくないですし、玉鷲荒鷲も同様ですね。照ノ富士千代翔馬逸ノ城という力士がいる間に、今幕下や十両にいるモンゴル人力士が順調に育ってくればいいですが、上手く育ってくるとは限らない。そういう点で貴ノ岩が遅咲きながらも出てきたことは実はモンゴル互助会・力士会にとって嬉しいニュースだったわけですね。
 それが反乱、つまり貴ノ岩の乱によって日馬富士が引退で、貴ノ岩本人もまた前頭から十両陥落で、照ノ富士は膝を故障しているところに糖尿病で休場し、十両陥落(※注)。中長期的にトップにあり続けるのは、逸ノ城千代翔馬しかいないという危機的状況に陥ってしまったわけですね。
 モンゴル人力士はくさるほどいて、横綱を半永久的に輩出し続けられると漠然と考えていましたが、実は朝青龍以来長年続いてきたモンゴルチャンピオン時代・モンゴル覇権期とでも言うような時代が終わるかもしれない危機にあるんですね。
 ※注―照ノ富士は元大関であり、相撲内容を見ているとデカイだけでセンスを感じない逸ノ城よりも、横綱になる可能性が大きかった。それが貴ノ岩の件で日馬富士に殴られ正座をさせられた。膝を痛めている力士に対して絶対やってはいけない蛮行でしょう。今回の事件の本当の問題は、照ノ富士への暴行であり可愛がりですね。これで照ノ富士が膝の調子が戻らずに引退ということになれば、一人の有望な力士が暴力によって潰されたことになる。貴ノ岩なんか問題にならない一大事件でしょう。
 そもそも今回の事件の本当の被害者は、全く非がないのに殴られた照ノ富士です。この大事なことはもっと周知されないと困りますね。暴力を止めなかった白鵬鶴竜らが処分の対象になったのは当然なのですが、きちんと止めて被害にあった照ノ富士に対しては何故きちんとまともな対応を取った照ノ富士に対して、称賛・報奨すべきだという声がないのか…?ちょっとこの理不尽な処遇については理解が出来ませんね。貴ノ岩同様、休場で番付を落とさない特別な処置を協会は取るべきでしょう。大事なことなので※注で語りました。<注ここまで>
 モンゴル互助会において星の回し合いがあると考えますが、もちろん前述通り、星の回しあいに応じなかったことが今回の暴力事件の要因ではありません。それ故にあまり良く思われていなかった・バカだと思われていたのはあくまでベースでしょう。実力で横綱に勝ったと周囲に吹聴しただとか、ナマイキな態度を取っていた延長上にスマホ操作やナイラ・八百長はしない=八百長をするあなた方は卑怯だという趣旨の発言をしたという、そういうどうでもいい些細なことこそが日馬富士がキレて、こいつを一度キッチリシメなくちゃいけないと思わせた理由でしょうけどね。要するにナマイキな後輩を怖い先輩がルールを守らせるためにシメるという下らない理由が原因でしょう。

 先輩後輩という年次の論理、日本社会の(特に体育会系では鉄の掟となる)秩序・論理を理解していなかったバカだということもさることながら、貴乃花部屋は非常に排外主義的な思想を持っている。排外主義とガチンコ・真剣勝負至上主義、この二つの柱が貴乃花部屋に存在していると見ていいでしょう(話がそれるので、貴乃花部屋の問題については別枠後述します)。。

 長いので前中後の三分割にしました。続きは後編で。

アイキャッチ用画像

*1:言うまでもなく、大鵬ウクライナとのハーフですけどね

*2:このJapanese onlyが差別的表現なのかと言うのはまた少し疑問の余地があるんですけどね。当該事件ではチームがいわゆる助っ人外国人選手抜きで日本人選手しかいないから「日本人だけ」という意味で受け取った人もいたと言われます。ただ、横断幕を掲げたサポーターは外国人客が来ると応援の統制が取れなくなるから、軽々しく自分たちの応援の場所・聖地に来るなという意味で掲げたのこと。公式に場所を専有することを認められている、又はオフィシャルサポーターでもないのに、勝手に自分たちの縄張り扱いして外国人を排除しようというのですから、このケースはアウトですね。スタッフの要請に応じてすぐに撤去しなかったので尚更です。
 それはそれでいいのですが、Japanese onlyが日本人の感覚で差別表現になるかと言われるとかなり微妙だと思うのですよね。アパルトヘイトでWhite persons onlyという白人以外立入禁止という人種隔離政策みたいな歴史・文化がそもそもないので。中国租界で中国人と犬入るべからずと言うような、ここには入ってくるなよという感覚に近しいものはあっても、根本的に異人種は別の生き物であり、支配するものという感覚がありませんからね。
 差別表現について日本が遅れているみたいなことを主張するものもたまに見ますけれど、そもそも日本にはあまり差別表現・差別の歴史がない。あくまで米欧の徹底した強烈な人種差別の歴史と比較しての話ですがね。その彼らの人種差別はいけないという感覚と日本・日本人の人種差別の感覚は違うに決まっている。その前提を無視して同一に語ろうとするのはかなり違和感があります。特に米欧(米英か?)メディアがそういう自分たちの歴史・人種差別感をおいといて、「日本はおかしい。差別に対して鈍感である。遅れている」という上から目線で遅れている文明に指導するようなものの言い方については、むしろどの口が言っているんだと厳しく否定すべきでしょう。そういう場合は、「人種差別は厳しく取り締まるべき。それはそのとおりだが、お前ら誰に向かって何様のつもりで言っているんだ?」としっかり指摘すべきでしょう。大メディアならば尚更そうしてほしいものですね。
 日本人の歴史感覚からJapanese onlyは日本人以外の劣等人種お断りという意味合いにはならない。が、英語を使う以上、英語文化圏の価値観からそういう感覚を連想させる。そういう歴史・文化背景を持つ英語文化圏の責任ではあるけれども、反人種差別を国是とする我々は英語の価値基準に合わせてJapanese onlyという誤解を招く表現をすべきではないというところでしょうね。

*3:戦時中に青葉山竜王山の一戦が異常に長引き、敢闘精神の欠如を理由に無期限出場停止処分となり、それに双葉山が抗議した。千秋楽で処分が解かれ自発的に万歳三唱が起こった事例があるようです。万歳三唱を横綱が主導したわけではないですが、処分反対という意味合いでの万歳三唱が過去の事例としてあったようですね。おそらくこれを参考にしたのでしょう。①横綱が主導したものではない、②観客からの自発的なもの、③協会の処分・裁定が下されたのではなく、処分判断待ちだった④めでたい大記録・レコードの達成―という違いはありますから、これに倣ったとは言えそこまで適切な事例ではないでしょうね。

*4:厳密に言うと親方になるためには年寄株が必要で、日本人にとっても狭き門になりつつあります。海外国籍力士どころか日本人力士すら排除する世界という見方もできますね

日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<後編>

長すぎるので分割しました。前編はこちらで、今回は後編です。

八角理事長代行VS貴乃花の代行昇格選挙と理事長選挙での二連敗
 北の湖体制を引き継ぐ北の湖派の貴乃花親方は何故、2016年の理事長選挙で勝つことができなかったのか?これまで北の湖体制が存続できたのは、最大一門の出羽海出身であるからこそ。理事長になるための票・理事の支持を集めやすかったから。しかし、同じ一門の北の湖なら支持も出来ても、若い貴乃花親方を支持する義理もなければメリットもない。まして北の湖体制の利権問題が噴出したとなればなおさら。八角VS貴乃花で、貴乃花が敗れるのは当然すぎる結果であるといえるでしょう。

 2015年12月の代行昇格選挙では、6VS5とギリギリの僅差の勝負であったわけですが、16年3月の理事長選挙では6VS2の大差がつく結果となりました。貴乃花親方はなぜ惨敗したのか?
 八角理事長は、理事長になるキーである最大派閥出羽海一門の支持を取り付け、出羽海一門の理事3票を確保したのが大きかったと言われています。貴乃花親方の票は僅か2票で、彼に入れたのは出羽海で北の湖の遺言を重視する=北の湖体制直系の山響親方*1。そしてもう一人はなんと、今回の事件の中心人物の一人である伊勢ヶ濱親方。そのたった二人の支持・2票しか、貴乃花親方は確保できなかったわけです。貴乃花親方とは対照的に広く支持を集めた八角理事長との違いは一体何なのでしょうか?

八角理事長の勝利は年功序列の論理と貴乃花親方のキャリア・経験不足
 そもそもですが、八角親方貴乃花親方というような能力・資質の問題で、八角理事長が支持されたわけではありません。このような組織では年功序列や年次が絶対。官僚組織ほど年次が重要な要素にはならないでしょうけども、年長者からトップを順番に努めていくという論理が働くのは当然。

 北の湖理事長の時、ナンバー2としてサポートしていた八角親方が理事長としてスライドしたのなら、それをそのまま支えようとなるのが自然な流れ。理事長に就くふさわしい年齢で九重親方のような現役時代に突出していた存在が居たのならまだしも、他にいない。この時点で八角理事長の対抗馬になりうる存在はそもそも居ないのです。
 現役時代の実績もあるし、貴乃花親方でいいのでは?と思う人も少なからずいるかと思いますが、ナンバー2の事業部長を経験していない=トップに上り詰めるまでのキャリアが足りていない。そして年齢が若い・若造であるという二つの点でありえないのです。

貴乃花理事長があり得るとしたら実績・実力・将来性
 絶対的な年功序列の世界で、貴乃花のようなキャリアの足りない若手が理事長に選ばれる可能性は殆どゼロに近いくらいありえません。しかしもちろん、可能性はゼロではありません。その少ない可能性からトップに上り詰めるには周囲を納得させるだけの実力が必要。
 年齢の若さ、キャリア・ポスト経験不足という不利な条件をひっくり返してトップに上り詰める他には、抜擢するだけの前例のない目をみはるような異次元の功績が必要になります。または、トップになれば間違いなく実績を上げてくれるというような確実な保証ですね。しかし言うまでもなく、貴乃花親方にそのような実績・将来性があるわけでもない。

貴乃花のオリジナル人脈、盟友・参謀の欠如。貴乃花ブレーン・スタッフなき理事長選挙
 北の湖体制の疑問符がついた人物を辞めさせることに強烈に反対したと言われていますが、そういうお下がりブレーンをそのまま継続しようという発想からしてもまずありえないでしょうね。今後の角界を任せたい有望な若いニューリーダーならば、いろんな業界にコネを築いて、自分で参謀・ブレーンになる優秀な人材を外から連れてくるもの。そういう独自のパイプからブレーンも連れて来ていない時点で、「今重大な危機において、変革のために彼を抜擢した方がいいのではないか?」と内部から声を上げる人がいるはずもないのです。

■相撲理事会は事前調整の世界、星=票の貸し借りの世界。その慣例を無視して反感を買う貴乃花
 これまでの理事選出の歴史を振り返ってみても、そもそも理事選挙自体が行われてこなかったという経緯があります。理事が親方らの相互投票で決まる。しかもこれまで殆ど、理事選挙がなかったことからもわかるように、事前の調整で誰が選出されるか決まる世界。
 それでこれまで何の問題もなかったことでわかるように、親方・一門内部の力学で誰を選出するか、事前調整することで物事を決めてきた・そうやって上手くやってきた。そういう世界で事前調整を無視して理事に立候補するということは業界内の慣習を破ることであり、無礼者・無法者として周囲の人間の目に映ります。
 貴乃花親方は既存の秩序に挑戦している・喧嘩を売っているわけですね。慣例破りで周りからナマイキなやつだと思われているところに、さらなる慣例破りで理事長選に立候補するというのは、業界の人間からするとトンデモナイ行為に映ります。
 貴乃花親方が理事長選挙に挑むこと自体がありえないという話をしましたが、その暴挙に出たのは、北の湖派・利権が潰されるという危機感だけでなく、ナンバー2に尾車親方が選ばれたからだという指摘を見たことがあります。彼は、貴乃花が一門を割った二所ノ関一門の人間であり、常識外れの貴乃花の離脱&理事立候補に腹を立てた。反貴ノ花の一人と言われます。そういう人間が自分の上に置かれたことも、八角新体制に納得がいかなかった一因なのでしょう。

■改革をしたいがあまりに周囲の親方のヘイトを買う
 相撲協会を根本的に一から改革をする必要がある。そういう危機感を抱く人は少なくないでしょう。それ故に、現役時代他の力士と比べ物にならない実績を持っていて、いずれ間違いなく理事長になる貴乃花親方にシンパシーを抱いている親方も少なくないでしょう。
 しかし、彼が、通常の昇進ステップをすっとばして出世しようとするということは、それだけ本来理事や理事長になれる人を蹴落とすということでもあります。それだけ他人の椅子を奪う、出世ポスト・地位名誉・給与を奪う。そういうことにあまりにも鈍感すぎるのですね、彼は。
 件のナンバー2尾車事業部長も、まさにそのことで反貴乃花派になっているわけですからね。貴乃花が理事のイスを一つ奪うことで、本来理事になるはずの親方が何人か理事になれなかった。ちょっと記憶が定かではありませんが、確か彼自身もそれで一度理事の立候補を諦めていたかと思います。このように数多くの親方からの恨みを買っているわけですね。
 実際の土俵、相撲では勝つか負けるかの実力競争・ウイナーテイクスオールの世界で、勝者こそ正義。勝者が全ての地位も名誉もお金もかっさらっていくというやり方で誰も文句を挟むことはありません。事前にルールが明らかにされていて、それに伴う実力競争をして、他人を蹴落としていいことになっていますから。負けた側が、「何お前、本気出して勝ちに行っているんだ。何勝ってるんだよ、空気読めよ!」ということにはなりません。
 しかし、協会運営・経営という領域においては、一つの法人内部の人事においては、実力競争の論理を貫いてはいけない。土俵外の世界で土俵の論理で組織を動かそうとしてはいけないのです。
*2
 かといって、何にもせずちんたら定例昇進を待っているわけにも行きませんから、勝負に出ることは必要です。改革を実行しようとする以上、衝突をゼロには出来ませんからね。しかし問題なのは、ぶつかってしまったあとのケア・配慮。自分が勝つことで蹴落とした相手に気を遣うことです。彼にはそれがまるでない。
 おそらく土俵の論理を理事選挙や理事長選挙に持ち込んでいるのだと思いますけど、土俵とは違って政治は勝負のあとにももう一つ勝負がある。戦いをいかに収めるか、敗者をどう扱うかというポイントが有る。敗者を無視して敵にしてしまうか、味方に取り込めるか非常に重要なポイントなのに、そういうことがわかっていない。敗者へのケアや戦後処理をやっていないわけですね。
 理事選挙・理事長選挙というのは票の回しあい、星の回し合いの世界です。そういう世界に星の回し合い・「注射」をやってこなかった貴乃花が、「注射」で横綱に上り詰めた八角理事長に敗れるのは当然でしょうね。土俵の上なら、相手に配慮して星を回してやる必要もないですが、土俵の外・相撲協会という組織に入ったらそれをしなくてはならない。現実世界でお互い様の感覚で配慮をし合うということが出来ないガチンコ組織人・ガチンコ理事である以上、貴乃花が成功する目は限りなく少ないと言っていいでしょう。
 勝負に勝ったら勝ったで取るべき対応があり、負けたら負けたで取るべき対応・戦後処理がある。彼はそういう常識・当たり前のことが出来ない。相撲協会のゴタゴタを巡って、我々はこのことをしっかり抑えてなければならないでしょう。

■あり得ない貴乃花の理事長選挙出馬
 では、変革が必要なら、貴乃花親方の出馬も実力主義に基づくものであって、いいのでは?変革が必要な相撲協会にとって理にかなっているのでは?と思われるでしょう。危機においては、抜擢をせよという組織の絶対的な原則を度々指摘してきましたので、その法則にかなっているのでは?と思う方も居るでしょう。しかし、彼自身の出馬であることと、代行理事の昇格選挙の直後であるという二点を持ってありえないことだといえます。
 先述通り、貴乃花親方は実力を示していない。そういう人物が「私が理事長になれば、相撲協会が見事に改革される!」なんて言っても周囲は納得するはずがない。いきなり理事長になるほどの人物ではない。
 であるならば、貴乃花親方がすべきことは将来の理事長の時を見据えて、自身の補佐をしてくれるナンバー2・ナンバー3になる有能な人物を引き上げること。貴乃花親方と同世代もしくは下の優秀な人物を押し上げなくてはならない(自派閥の拡大につながるならもちろん上の世代の人物でも可です)。貴乃花親方流のかち上げエルボーならぬ、押し上げで改革の盟友を出世させる。こうやって将来の改革の布石を着々と撃たなくてはならないのに、自分自身が理事長選に立候補するという暴挙。
 ただでさえ優秀なリーダーとしての要素が見られないのに、こういうことをしていては、こんな人物支持できないとなるのも当然でしょう。自分が優秀でなくても、お飾りの神輿としてトップにあって、自分の代わりに外から連れてきた優秀なナンバー2・3に任せて改革を進めるというやり方もあります。言うまでもなくそういうこともしていない。「俺がやるから、だまって俺について来い」という姿勢しか見えない。そんな人物に組織の命運を託す、若き新リーダーとして抜擢する事はありえません。

■理事長代行の昇格選挙後の出馬は体制の否定・八角理事長への侮辱に近い反逆
 代行昇格選挙では僅差だったので、もう一度理事長選挙をすれば勝てる!と考えたのかもしれませんが、それはどう考えてもありえないことです。一度昇格選挙を挟んだという時点で、もう理事長選挙をやったと同じこと。僅差であろうが大差であろうが、八角理事長で行くという結果が出た以上、八角理事長がトップの資質に欠ける愚行をしでかしたわけでもない限り、協会内部で物凄い反発が起こったわけでもない限り、直後に再び理事長選挙に挑むということはありえない。
 各派閥の力学調整を重視する組織で、慣例のない短期間でのトップの変更(事実上の更迭)はありえないし、それを意味する立候補で挑戦すること自体がありえない。貴乃花親方が勝てば、八角理事長を蹴落とすことになる。正式にトップに就任して日が浅い理事長を蹴落とす=無能だと周囲に知らしめることですから、そういうことをして八角理事長の面子を潰すはずがない。また、相撲協会の人材のなさと組織としての安定性のなさを天下に知らしめることでもあるので、そんなことが起こるはずないのです。体面を重視する他の理事・親方がそんな判断するわけがない。

 八角理事長が大差で勝つことは自明の理ですし、貴乃花親方が負けることもまた当然。そういう負ける戦いに無謀に突っ込んでいく姿勢は正直トップ・次期リーダーとしての資質があるとは思えません。

■100%勝つ目処がない限り理事長選挙に挑むことはありえない
 北の湖理事長は最大派閥出羽海一門であり、その支持を受けてトップであり続けられましたが、貴乃花親方・貴乃花一門は少数派閥。その貴乃花親方が理事長選挙に立候補したということは、2016年1月の理事改選選挙で選ばれた新理事達の過半数の支持を得ている。最も有力なシナリオは、北の湖体制を引き継いで出羽海一門の理事からの票を固めているパターン。
 しかし結果はその新理事達の支持を得られなかった。きちんと根回しをして票を固められる能力がないことを白日の下に晒してしまった。タブーの理事長選に挑んだ以上、絶対勝たなくてはならない。僅差の敗北ならともかく、大敗ですから「この人は一体何を考えていたんだ…?」と周囲からその才覚を疑われてしまう。
 過去の理事選で奇跡の勝利を果たしただけあって、そういうウルトラCがあると誰もが思う。しかし結果は惨敗。じゃあ、そもそもなぜ立候補したのか?理解できません。新理事長貴乃花が、票を回してくれた出羽海一門の理事にこれまで通り利権を渡すとか、彼らをたらしこんでいなかったのか?だからこそ理事長選に打って出たのではないのか?

■無謀な戦いに打って出で自身の評価を下げた貴乃花
 敗軍の将となれば、改革者としての実力・資質を疑われてしまう。敗北を見て、この人はだめな指揮官だ。戦をする上で統率能力・作戦立案能力がないという評判が一度立ってしまえば次の戦いは更に難しくなる。貴乃花親方を支持しようというハードルがぐっと上がってしまう。
 何故そんな戦いに突っ走っていったのか、周囲を納得させる説明責任が存在するレベルです。しかし、彼はそういうこともしていない。実力以外にも説明・発信能力、この点でも疑問符がこの時点でついてしまいました。何より数少ない貴乃花を支持してくれた親方や、票を入れてくれた理事の二人に「私の力が至らないばかり惨敗してしまいました。せっかく支援していただいたのに申し訳ありません」とお詫び・謝罪行脚しないといけない。実際の国政選挙と同じですね。そういう当たり前のことをしていない、わかっていない。

■政治力学を無視した身勝手な行動を取る貴乃花親方の改革が成功することはない
 ここまで読まれた方は、反貴乃花派で親相撲協会派だからこういう文章を書いているんだろうと思った方もいるかもしれません。もちろん趣旨は相撲協会が正しく、貴乃花が間違っているというものではなく、第一回から述べているように相撲協会というのは腐朽組織。前近代的な組織であって、通常の企業のような当たり前の組織論理が働かない世界。であるならば、そのような組織を改革するのに通常の手段・方法でうまくいくはずがない。そのような組織・世界に合わせた妙手が必要になる。適切な改革方法を熟知して、着々とそのプロセスを積み上げていかなければ改革などできっこない。
 貴乃花親方はそういう方法を明らかに無視して身勝手に動いている。自分の勝手な理屈で動いているんですね。ですから自ずと貴乃花改革は失敗すると主張しているのです。

■大改革には飛び抜けた力が必要。貴乃花親方にはそれもない
 そもそもですが、改革をするリーダーはとてつもない実力が要求される。ダイナミックな改革・変革は力なしでは不可能。権力≒人事権だったり、金や軍事力といったハードパワーの裏付けなき改革など無謀・無意味というのは歴史が示す所。流石に暴力で脅して票を集めるなんてことは無理ですから(笑)、この場合これまでのように実弾・金をばらまくのがセオリーでしょう。
 若くしてトップに立って抜本的な改革をするのならば、年上の親方衆をたらしこんで、味方につけるしかない。金をばらまくなり何なりして、美味しい思いをさせる。今後もあなたにとってメリットが有るようにすると約束して、自分の味方にしなければいけない。にも関わらず、そういうことをしていない。
 「貴乃花親方は金に汚いダーティーな人物だ。某親方衆に数千万配って~とか、A関係から多額の資金を集めて~」とか、そういう話が聞こえてこない。前述の相撲協会関係の裏金くらいしかない。協会内の利権、トップについて得られる収入をどうこうするなんていうケチくさいお金・金額では相撲協会の理事の過半数の支持を固めて理事長になるなんてまずむりでしょう。

■勝ち目がない戦いならば次を待つべき
 事前に勝ち目がないとわかったら、もう降りないといけない。戦おうという意志を示す事自体は悪くないですが、情勢次第では勝てない事があるのですから、それを踏まえていつでも戦から撤退できるようにしておかないといけない。
 今回はもう新理事との交渉段階で、事前に勝てないだろうという算段がついたのですから、絶対に降りないといけない。理事長選挙に立候補して、ひょっとしたら危ないかも…と八角理事長らをヒヤヒヤさせながら、急転直下出馬を取りやめて忠誠を誓う。直前に八角理事長と話し合いでもして、八角理事長の主張が正しいとわかりましたと。自己主張を引っ込めないといけない。そうやって現執行部への恭順姿勢を示すべき。
 勝ち目がない戦いならば、一旦引いて次を待つしかない。来るべき決戦に備えて、自己の足元を固めるように雌伏の時を過ごす。八角理事長を立てる姿勢を示して、中から八角理事長派をたらしこむ、切り崩していく。それ以外にない。

■無謀な戦いの結果、出世ルートから外れ、トップの地位に就く予定が遅くなってしまった貴乃花
 代行昇格選挙の際には、北の湖体制・貴乃花派の小林・宗像両氏が追放されたとは言え、貴乃花親方はナンバー3の審判部長にとどまることが出来た。この人事を見れば、貴乃花親方は冷遇されてなどなかった。順当に行けばそれこそ5年~10年で事業部長という段階を踏んでトップに立てたでしょう。理事長選挙に挑まなければ、そのまま組織のナンバー3の地位を保てたでしょう。執行部にも留まれたでしょう。仮に留まれなくなるとしても、そういう降格人事には同情が集まって次に繋がったでしょう。
 ところが理事長選挙で無用の選挙を挟んでしまったことで、トップに就く道から遠回りすることになる巡業部長にワンランクポストを落してしまった。理事長選挙を挑むこと自体が組織の秩序を乱す蛮行ですから、大差で負けた貴乃花親方・反乱者に対して、八角理事長が降格扱いをするのも当然。これは「大馬鹿者、組織の論理を考えろ!頭を冷やして一から勉強し直してこい」というメッセージということでしょうね。一か八かの無謀な戦いに挑み、結果見事破れて出世ルートから後退してしまった。貴乃花親方というのはこういう人物なわけですね。次回、詳しく語りたいと思いますが、おそらく彼は自己の信念が唯一の行動基準であり、信念で行動する狂信者なんですね*3。事実と当為の区別がつかない非常に危険なタイプであるように思えます。

■トップに立つには親方衆の過半数の支持が必要である以上、親方衆の支持を得るのは至上命題
 先程、相撲協会の理事の過半数の支持を固めて理事長になるという話をしましたが、相撲協会の理事長になるには、理事長選挙で過半数の理事の支持を得る必要があります。理事は人数固定制ではなく可変で、大体10人位選出されます。で、親方の定員は105名で理事に選出される目安が親方からの10票。単純計算で理事長に選出されるには、10人の親方票×5人の理事で、50票固める必要があります(自分のシンパの外部理事を送り込んで1票とするなどの裏技もあるのでしょうけどね)。
 大雑把に見ても、50人近い親方が貴乃花親方を支持するようにしなくてはならない。親方衆の心をガッツリつかむように行動しなくてはならない。人たらしどころか、「親方たらし」貴乃花というあだ名が付くほど、一度貴乃花親方に会えばどんな親方でも一日で魅了されてしまうくらいにならないといけない。貴乃花親方支持者が年々、時間が経つに連れ増えていくという展開にしないといけない。しかし彼は自分の支持が増えていくような気配り・配慮をしていない。自分の信念に共鳴するものだけを相手にしている。

 政治の基本の一つとして、敵勢力を中立勢力に、中立勢力を味方勢力に、味方勢力を自己の信奉者・心酔者にすべしというものがあります。いかに自分の勢力を増やして支配を広げていくか?そのためにどうするのが最適なのか?ということから戦略を組み立てていくものだと思いますが、そういうものが彼にはない。何度も言うように、とにかく目先の戦いに全力で猪のように突っ込んでいってしまう。こんなことでどうやって、組織のトップに立つつもりなのか理解できません。

相撲協会の定款を見れば、ポイントは理事長より理事会。改革には理事会を制する理事の過半数確保が絶対条件
 最低でも50票必要と書きましたが、親方の過半数を自派閥で固められればそれでいいという訳にはいきません。というのは相撲協会定款の第6章役員及び会計監査人、第7章理事会のところを見ればわかるように、理事長というのは組織のトップといっても絶対的なトップではないのですね。相撲協会で一番権力を持っているのは理事会であり、理事長ではないのですね(第6章、26条・28条および第7章37条)。
 無論、組織のトップである以上、こういう組織では最終的に理事長の意向が大きな意味を持つのでしょうけど、基本的には理事会に最終決定権が存在する。理事長は理事会において議長の役割を務め、決議において可否同数の場合においてのみ、票を投じることが出来るとなっている(第7章、42条)。つまり理事長以外、半分は自派閥理事でなければならない。
 理事は10~15名とあるので、最小なら自分以外5人の理事・最大なら自分以外7名の理事を自派閥から輩出する必要性がある。外部理事1人で、残り14名を理事選挙となったとして105票を14で割った時、ちょうど7.5票計算になります。7人の理事を輩出するには7票×7なら50票行きませんが、最悪8票ならば56票。7票・8票当選が混合で53~54票必要というのが一番妥当な線だと思われます。いつでも選挙が出来る、いつでも安定して過半数貴乃花派で固めることが出来ると周囲に思わせるには、やはり60票=60人の親方の支持は確実にしておきたい所です(大改革を実現しようと言うなら安定多数が望ましいですからね。本当は3分の2位欲しい所なのですが、まあ最低ラインということで話を勧めます)。
 貴乃花派で安定多数・過半数を確保したとしても、第42条には特別の利害関係を有する理事は決議に参加できないとあります。そういうクレームが付いて理事会で承認が認められないリスクを考えると、過半数ではなお心もとない所がある。

 これまでそういう紛糾が起こることはあまりなかった。事前調整の世界で理事会の前に話は既に済んでいる。根回し済みだから問題にならないだろうとも言えるのですが、貴乃花理事はそういうことをこれまでやらなかった人物。そして敵を作ることを厭わなかった。とすると理事長についても、反貴乃花理事・中立=是々非々理事が理事会の半分を超える可能性が高い。となると理事会で貴乃花改革が反発されて拒否されるケースは十分考えられる。まあ、普通の組織でも最高意志決定機関において、重大な決議が過半数の支持を得られず通らなかったなんてことはよくある話ですけどね。
 それはともかくとして茨の道を選んだ貴乃花派にとっては、大改革を成し遂げようとする貴乃花派にとっては安定多数・絶対多数確保は至上命題なわけです。兎にも角にも理事長ポストさえ抑えてしまえば、こっちのもんだ!後は貴乃花理事長のやりたい放題だ!というわけには行かないのです。にもかかわらずそのための裏工作をしっかりやっていない。これを見れば、どう見ても将来失敗するとしか思えない。馬鹿じゃないのかと普通は思うところです。

■政争・権力闘争は敵対勢力を懐柔するか、殺すかの二者択一
 二所ノ関一門を飛び出して、関係が悪化するのは当たり前ですね。そこからどうやって関係修復するかは至上命題なわけです。「普通は一門をケンカ別れのような形で、後ろ足で砂をかけるようにしてでていったのに、尾車親方や二所ノ関親方から可愛がられているなんて、貴乃花親方は相当したたかでやり手だ。大したものだ」と言われるようにならなくてはならない。言うまでもなくそういうことをしていない。
 絶対妥協できない政敵となるのが明らかなのであれば、徹底的に潰さなくてはならない。現役時代度を越した「かわいがり」に腹を据えかねて兄弟子安芸乃島・高田川親方と仲が悪く、部屋を移籍するのに必要な書類に判を押さない。そのため移籍できない云々というトラブルが有り、貴乃花親方が二所ノ関一門を飛び出してようやく二所ノ関一門に復帰したという経緯があります。確実な政敵であり、反貴乃花派ですね。現役引退後理事長として大改革を行うつもりならば、そういう確執もぐっとこらえて水に流さなくてはいけない。私情に任せて喧嘩をして、政敵を作るなどリーダー・政治家・経営者として最低な行為です。

 どうしても許すことが出来ないというのならば、そういう人間は業界から抹殺しなくてはならない。反貴乃花勢力になる人間だと事前にわかっているのですから、徹底して相撲人として抹殺する、きっちり殺しておく。たらしこむこともせず、殺すこともせず、放置なんて言うのはあり得ない選択です。何を考えているのかわかりません。個人として告発しなくても、映像なり録音なり暴行の証拠をとっといて、第三者に流出&告発すれば簡単に業界から抹殺できるでしょうにね。
 同じく二所ノ関一門も解体吸収してしまうようにする。自派閥をでかくし、かつ政敵を潰す策を練って実行しないといけない。天に二つの太陽はない。折り合えない政敵だとわかったなら、どちらかが死ぬしかない。改革での抵抗勢力既得権益保有しているものとは、両雄並び立たずな論理を孕んでいるのですから、徹底して相手勢力を叩くべき。大改革をやる、戦いを辞さない!というのなら、権力を握るために権力闘争の鬼にならないといけない。土俵の外で鬼と仏を見事巧みに使い分けないといけない。貴乃花の行動は改革を実行する上で、その鬼と仏の顔の一貫性がないのです。
  モンゴル互助会は政敵であり、今回の事件はその鬼の顔を見せただけではないの?と思われる人がいるでしょうが、それはありえません。日馬富士白鵬などモンゴル勢に対して政敵認定で排除するという選択肢は愚策も愚策です。考えられないあり得ない選択です。そんな話も次回したいと思います。

 そういうことを抑えた上で、日馬富士暴行事件についての貴乃花親方の頑なな態度というのを読み解く必要があるわけです。それはまた次回で。そのことについても今回でいっぺんにまとめて終わるつもりでしたが全然終わらないので続きます。

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*1:というか、そもそも若手親方で貴乃花シンパ故か?

*2:■余談:組織の人事について
 無論、幾つかの派閥内部で実力競争をするという性質はありますが、その実力競争の配分は小さい。どこの企業でも実力競争の要素と派閥の力学からの割当という要素、あとは年齢による定例昇進などの要素で決まっていくものです。
 正確に言うと、企業だったりその組織毎で人事に採用する方針はマチマチです。実力主義の余地を多くして、若くてもどんどん出世できるようにして、組織内の競争を煽って結果を出すことを最大の目的にするか、定例昇進や特定の派閥からしかトップが選ばれないようにすることで安定性を重視するかは、その当該組織次第です。
 ですから、人事の傾向を見ると、その組織がどういう思想を持った組織であり、その将来の方向性も見えるということになるのですね。組織が改革・変化を迫られた時、人事の傾向に変化が見られるものなので、政治でもビジネスでも、ウォッチャーはそういう時、まず人事をチェックするのです。

*3:参照―貴乃花親方が支援者に送った決意表明のメール全文 「角界を取りもどす」と逆襲宣言 AERA dot.
 どこかの総理大臣みたいに「取り戻す」という思考は非常に歪んだ考え方であると思われます。相撲は神道に基づいているので、国体(國體じゃないのか?)云々はまあギリギリセーフとして、自分が護らなくては!という本部以蔵みたいな価値観に注意しておく必要性があると思います。例の疫病予防的思想、穢れ思想に近い、聖なる自分たちの領域を辺境から穢しに来るウィルスがある。そういう病原菌・汚れたものが入り込んできた結果、今の悪い状態になっていると考える発想に親しいものが見られますのでね。

日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<前編>

日馬富士暴行事件の解説③ 白鵬憎し!白鵬が悪い!という異様な言説の続きです。貴乃花改革は必ず失敗するという話をしたいと思います。なぜ失敗するのか?彼は基本的に政治・政治学無知であり、白痴とも言える様を見せています。それを見ると、一つの組織を改革するにあたっての基本的なことを抑えていない、要点を踏まえていないということがすぐにわかります。
 貴乃花親方が改革の力学・論理を理解していないというのは、かつての2016年の理事長選挙、そしてその直前に行われた八角理事長代行の正式な理事長昇格選挙においてもはっきり見て取れます。過去の貴乃花親方の選挙での敗北・失敗から、彼が理事長・トップの地位に上り詰めて、相撲協会を改革することは難しいという話をしたいと思います。

結論・要約
 長い話になってしまいますので、結論から先に書きたいと思います。以下、本文の趣旨、貴乃花改革は何故成功しないと予測することが出来るのか?―になります。
 必要な票数を集めることが相撲協会を改革するための絶対的な条件なのに、貴乃花親方は票=支持を増やす努力をしていない。
 同世代からの支持=若手親方衆から一定の票は固めていても、トップに立つ・主流派になるには、それでは全然足りない。にも関わらず、平気で慣例を無視し、根回しをしっかり行わないゆえに、年長者の反発を買う。慣例無視・年長者への敬意・配慮がない故に、無用な衝突・ガチンコ対決を繰り返して敵を作る。
 根本的に政治ゲームというものを理解していないがゆえに、闘争を好む。政治とは利害関係者との交渉であり、調整で落とし所を探るもの。敵対勢力との対決は最後の手段なのにも関わらず、それを放棄して白黒はっきり付ける戦いをしようとする。労多くて益の少ない戦い、ハイリスク・ローリターンの戦いに好んで参加する。負けて窮地に陥るし、勝っても得られる戦果は少ない。そのような危険な戦いをする人物についていこうとは思わない。他者から見て、まるで理解できない合理性のない行動を取る。その様はまるでイスラム過激派、狂信者のように映る。
 政治に必要な敵を作らないという大原則を無視して行動するが故に、たとえ勝つことが出来たとしても支持基盤が脆くなる。体制が不安定になりやすい。故に将来待っているのは混乱と破滅であるとわかる。
 改革を達成するためには理事を貴乃花一門貴乃花派で固めて、理事長ポストも確保しなければならない。それを達成するための能力・ハードパワーが基本的に彼にはない。トップ経営者としての経験・資質・能力もないのに、自分が自分がと前に出る。自分が正しい、相手が間違っていると自分の正当性ばかりを主張し、相手の立場や意見に配慮せず、他者を無視する。故に、親方衆の支持を集められない貴乃花親方は理事長になれないし、なれたとしても不安定な権力基盤からなる少数与党政権となって、ダイナミックな改革も見掛け倒しで失敗すると考えられる。

■前提:相撲協会は腐朽組織
 本シリーズの一番最初に論じたとおり、相撲協会という組織は基本的に腐朽組織です。あまり普通の組織ではない、まともな組織として機能していない。相撲協会という組織はダイナミックな改革によって生まれ変わる必要がある。これは言うまでもないでしょうし、こう聞いて違和感を覚える人は殆どいないかと思います。
 相撲協会というのは各力士を束ねる親方・一門による互助会。いろいろな店がある商店街の商店会くらいの感覚で成り立っていると見ていいでしょう。組織として明確な意志を持ったり、強い信念・強固な理念を共有したものではなく、色々な部屋という中小組織が寄せ集まって成り立っている寄り合い所帯。それくらいの感覚からなる友好団体という性質が強く、財団法人としての強固な組織の論理がないのです。後述しますが、それは日本相撲協会の定款を見ても明らかです(相撲協会の定款まで話をしたかったのですが、長くなってしまったのでまた回を改めて話をしたいと思います)。

貴乃花親方は政治学無知、改革を行う上でのイロハを知らない
 改革対象が腐朽組織であっても、貴乃花親方がそのことをしっかり抑えて、改革に取り組めば改革の成功も十分あり得ると思います。しかし、彼は根本的にそういうことを理解していない。というか、そもそも根本的に彼は「政治」という論理を理解していないフシがあります。
 組織を改革するのに、どうやってするのか?政治学など座学で学んでいなくても、偉大な政治家・経営者などは過去の経験・事例からどうやったら改革が上手くいくか、またその逆で失敗するのかということを知っている。これがこういうロジックでこうなっている云々ということを明確に知らなくても、言語化できていなくても、身を以て学んでいるものです。故に大して優秀な教育機関に通ったわけでもなく、優れた師について教わったこともないのに、叩き上げで結果を残す偉人も出てくるのです。

貴乃花親方の華々しいデビュー戦「貴の乱」
 貴乃花親方はそういう経験を積んでいない。故に間違いなく失敗すると見ていいでしょう。個人的に貴乃花親方は、相撲協会という腐朽組織を改革してくれる救世主という視点から期待して見ていました。
 「貴乃花の乱」と言われたように、2010年、一門を離脱するという相撲史上聞いたことのない行動を取って、理事選に立候補*1。今でなくてもいずれ必ず理事長になれる存在にも関わらず、相撲協会を改革するという強い意志を示して、理事選に挑戦。そして絶対的に不利な状態でまず通らないだろうと思われていたにも関わらず見事当選。そして2014年には正式に「貴乃花一門」という新興一門立ち上げという結果を残しました*2。一門の誕生・消失という事例がかなり稀なケースであることを考えると、貴乃花の行動がいかに難しいものであったか言うまでもないでしょう。見事に一門=自身の派閥を立ち上げた貴乃花親方の手腕には感服させられたものでした。

 それこそ、自分の一門誕生というデビューにあたって、華々しい実績を見せつけるために仕組まれた理事選立候補と勝利だったのではないかとさえ思える出来事でした。相撲界に貴乃花一門ありという新興勢力の誕生を周囲にまざまざと感じ入らせるほどの不利な状況からの当選でしたからね(理事に当選するには10票必要、貴乃花派の親方は7人=7票しかなく、3票足りずに落選するだろうと思われていました)。しかし、今振り返って思うと、実際には綿密に計算された上での逆転大勝利ではなく、信念に殉じた行動だったわけですね。これがポイントの一つ。

■北の海派入りと新一門貴乃花一門の結成
 兎にも角にも勝利した貴乃花は理事*3の一人に名前を連ねるわけですが、なんやかんやあって、北の湖理事長と関係を深めて行きました。序列や和を乱す行為=反旗を翻したと同じことで、貴乃花を徹底的に日干し上げるという選択肢もあったのでしょうが、相撲界は意外に反乱に寛容なところがあります。逆らう行為に出た者でも、その後相手をなだめて復帰を受け入れるというまさに「懐の深い」ところがあります*4
 北の湖は孤立している貴乃花一門を取り込めば、自己の権力確立に役立つと考えたか、新一門を立ち上げる手腕を買ったのか、一門制によって成立している組織にそれに所属しない不穏分子を内部に孕んでいるのが2014年に公益財団法人になるための障害になっていたのか、詳しいところはわかりませんが、とにかく当時の北の湖理事長が貴乃花を取り込み、ナンバー3の審判部長*5の座につけました。八百長対策が喫緊の課題であるところに、ガチンコ横綱として名を馳せた反八百長の急先鋒である貴乃花をその地位につけるのがベストだった。協会は八百長対策に本気であると示す一番いい抜擢、目玉人事だったということですかね、やはり。「貴の乱」は、貴乃花親方の北の湖派入りと、若くして組織の中枢に入る。ナンバー3のポストを確保するという貴乃花親方の大勝利で終結しました。

北の湖理事長→八角理事長代行へ
 北の湖理事長が亡くなり、八角理事長が代行になるまでに、それまでナンバー2の事業部長にあった九重親方(千代の富士)が理事長になれず、失脚・3階級降格などといったこともありました*6。本来、次期有力理事長候補と言われていた九重親方が失脚(後に死去すると)、次の新理事に収まったのは、あまり現役時代パッとしなかったとされる八角親方(北勝海)でした。

 北の湖理事長下でのポストは、八角親方がナンバー2の事業部長で、貴乃花親方がナンバー3の審判部長でした。経験の浅い貴乃花はナンバー2にはまだ早い。彼が次期リーダーの有力候補の一人ではあっても、経験の豊富な八角親方で当面は繋ぐという判断になりました。順当と言える人事でしょう。
 普通に考えれば、貴乃花親方は八角理事長の下で経験を積んで、ナンバー2に昇格する。そしていずれ、リーダー・ナンバー1の座につく。理事長になるという段階を踏むことになったでしょう。
 若手親方を中心とする、「貴乃花世代」とでも言いましょうか。彼の世代に絶大なる支持があっても、その上の親方衆に支持があるわけではないですから、年功序列八角親方が支持される。理事長にふさわしいか比較された時負けるのは当然。ごくごく当たり前のことであり、何の不思議もないことです。

■北の海派・貴乃花VS八角新体制
 ところが、貴乃花親方は不満。北の湖理事長の後継者は自分だという意識が強く、八角理事長・八角体制に納得できなかった。
 前述の参照記事にあるように、北の湖理事長時代の利権に触れた九重親方が逆襲にあい、失脚。九重親方ができなかったことを成し遂げたのが、実は八角理事長代行だった。
 貴乃花親方も北の湖理事長と関係が深かった。というか実質、北の湖と言える関係性でした。北の湖派の利権を継承する貴乃花親方という流れがあり、その体制が理事長・世代が変わっても継承されるという流れだったら、貴乃花新理事長ということもありえたのでしょう。しかし、北の湖が死ぬとその不透明さにメスが入れられることになって、結果この利権はパージ・一掃されることになりました。北の湖体制が正しかろうが、間違ったものであろうが、八角理事長代行によって潰されることになったのですね。
 結果として、功罪あった北の湖体制の罪の部分がクローズアップされ、その排除と八角理事長代行の昇格人事という結末になりました。
 八角代行の理事長への昇格に、貴乃花親方が猛反発したというのも、自分たちの利権が潰されるという事情が背後にあったわけですね。本来の手順からハズレて、異例の理事長選挙出馬というのも、この北の湖利権を潰されるという危機感の裏返しだったと見ることも出来るでしょう。

北の湖派の利権
 こちらの記事(貴乃花理事とグルの“裏金顧問” 相撲協会から解雇されていた )なんかにあるように、理事長・組織のトップには裁量権があり、その決定権に伴う利権が付与されるものです。これまでのトップも多かれ少なかれ、トップの地位から恩恵を受けていたでしょう。しかし今回はその利権の不透明さにメスが入った。
 パチンコビジネスで裏金を受け取ったなどの問題で、顧問を辞めさせられた小林慶彦外部顧問、これまで危機管理委員長を務めていた宗像外部理事*7と、貴乃花親方北の湖体制時代からの繋がりがあった。北の湖貴乃花・小林外部顧問・宗像外部理事という一派があったわけですね。
 そしてこの3者、北の湖死後の北の湖改め貴乃花八角理事長代行の正式な理事長昇格に反対した。結果待っていたのは、小林氏と宗像氏の追放でした。*8
 裏金云々で追放処分となった両氏は、貴乃花のブレーンは評判が悪く、手腕に疑問符がついて辞めさせられることになった。まあ詳しいことを知らないので、このような記事をうのみにするのは危ういので保留にしておきますが、少なくとも貴乃花角界で支持されるような行動を取っていない、まっとうと思われていない。彼のやることに疑問符をつける人たち親方衆にそこそこいて、結果今回は八角親方の方に理があると判断して、八角理事長を支持するという流れがあって、今に至っているということだけ抑えておけばいいと思います。
 いずれにせよ旧北の湖体制の打倒、崩壊を地味な八角親方が成し遂げたという流れがあったわけですね。北の湖体制の負の遺産を一掃したという点において、八角理事長の手腕は角界で評価されこそすれ、否定されることはなかったと見ていいでしょう。これからの角界のために、アメリカのショービジネスを研究しに行くなど、活動的な人のようですしね。
 あとは北の湖のような強力なリーダーよりも、調整型のリーダー少数一門高砂一門出身である八角理事長のほうが、話を聞いてくれるから好ましいという側面もあるかもしれませんね。自分の意見・やりたいことを重視する貴乃花と、調整型の弱いリーダー八角なら、後者を支持するというのは自然な流れなのでしょう。

野球賭博事件に見る貴乃花理事の考え方
 ―で、長すぎるので北の湖体制、貴乃花北の湖派の人間ですよという話をした所で分割したいと思います。八角理事長VS貴乃花理事から後編にしました。んで、それだけだとちょっとこちらが内容寂しくなるので、後編の八角理事長VS貴乃花理事という話に行く前におまけとして貴乃花が現指導部へ不満を抱いている原因の話を一つ追加したいと思います。2010年野球賭博事件で大関琴光喜と大嶽親方(貴闘力)が解雇されています。それに抗議して貴乃花理事は退職願を出して解雇撤回を迫った過去があります。貴闘力は同じ二子山部屋出身の力士で盟友親方であり、琴光喜はその大嶽親方の愛弟子で貴乃花も目をかけていた力士。
 この二人は、貴乃花が理事選に出た時、貴乃花を当選させようと票集めに奔走した経緯があります。親方は同じ親方と連絡を取って票を誰々に入れてくださいとお願いをするわけですが、それ以外にも力士票というのがあって、力士全体として貴乃花に票を入れようと取りまとめたんですね。というわけでこの二人は袁紹的に言うと奔走の友ですね。そういう過去もあって、この自派閥の人間・支持者の処分に反発したわけですね。貴乃花は解雇処分は厳しすぎるとして自分が退職するから解雇は撤回してほしいと申し入れた過去があります。厳罰を好まない己もちょっと厳しすぎる処罰かなと思いますが、金額が桁外れであることと、単なる賭博ではなく暴力団の資金源になる野球賭博ですから、当時暴力団との関係が問題になっていた角界では尚更厳罰に処したかったんでしょう。
 野球賭博≒相撲賭博でもあり、これは力士主体の「注射」、力士の都合で行われる星の回しあいでなく、本当の外部の人間の利益のために基づく正真正銘八百長ですから放置できない問題と言えるでしょう。事実脅迫されて大金を騙し取られそうになっていましたからね。これがあと一歩・二歩進んだら、「金が返せないならこちらの言うことを聞け。この試合でわざと負けろ」と指示を聞くしかなくなって、相撲賭博で胴元が大儲けするための道具として利用されていたでしょうからね。
 非合法賭博でプロの試合でも不可解なプレー・結果が乱発して最近世界的に話題になっていたように、今はどんなプロ・アマ問わずスポーツ・競技は賭け事の対象になって、八百長によって儲けようという悪巧みをする胴元がいますからね。予想外の波乱の一番を作りだすことで、試合・勝敗の操作をすることで大儲けしたいですからね、非合法賭博の胴元は。
 そういうことを考えるとまあ厳罰に処されるのは当然。当初協会の調査に嘘をついて野球賭博をしていないと言ったこともありますし、妥当な処分だと考えられるのですが、貴乃花理事はそうは考えてはおらず、貴乃花派であるからこそ厳罰に処されたと不信感を抱いたと言われています。旧体制に反発して立候補したからこそ、親方衆・各理事の反発を買ったと。その見せしめ、報復人事だと捉えたのだと。
 確かにこの二人の他にも厳罰に処された阿武松親方と言い、皆貴乃花理事を支持した人たちですが、もう一人厳罰に処された時津風親方貴乃花派ではない(貴乃花と関係が良い・悪いとかはわかりませんが、時津風一門と言うくらいですし、どう考えても貴乃花に票を入れることはないでしょう。)。「自分が責任を取るから、処分を軽くしてくれないか?」という男気に基づいた退職願ではなく、「理事選に立候補して当選して、各一門・理事の反発を買った。秩序を乱した結果、貴乃花派への報復行為で厳罰となった。自分の仲間を報復で始末するというのなら、自分が辞めるから、それは勘弁してくれ。手を引いてくれ」という解釈をしていた可能性があります。
 阿武松親方の処分も、部屋で野球賭博が蔓延していたこと、琴光喜を脅迫した事件の発端となった主犯力士が阿武松部屋に所属していたことを考えると、その後10年間の昇格停止という処分が4年で解かれたので、むしろ軽すぎるとさえいえます。その要素もゼロではないのでしょうが、この処分を貴乃花派への報復人事と見なすのは無理があるでしょう。むしろどうして、貴乃花派にこれほど野球賭博が蔓延していたのかと考えるべきではないでしょうか?*9
 不起訴となった大嶽親方が解雇なのに、暴力事件を起こした日馬富士が軽い処分なら許すまじ!と貴乃花親方は考えているといった話が関係者の言葉でありましたが、その是非はともかく、貴乃花親方は正義の自分をよく思わない、悪の理事・親方衆が存在しているという価値観を抱いて行動しているという危険なフシがあります。だからこそ、「悪」には屈しない。説明する必要なんてない―という異常なまでに硬直的な態度、沈黙を貫いて平然としているという可能性がありますね。
 だからといって、貴乃花理事はこのような考え方で行動している!危険な人物だ!とまでは断言できないので、あくまでその可能性があるという段階でとどめておきます。そう考えると、貴乃花理事の不可解な態度を一応説明できますのでね。

 長すぎたので前後編に分割しました→後編:八角理事長VS貴乃花理事の話、
日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<後編>へと続きます。

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*1:厳密に言うと相撲史上、一門離脱の事例などはいくらでもあるのですが、若貴世代から相撲を見始め、そこまで相撲を見てない世代からすると、そういうダイナミックな一門内でのイザコザを直で見たことがないので、この行動は物凄いインパクトの有る出来事でした。相撲史では角界の勢力図を書き換えてしまうという意味で、それこそ春秋園事件以来のインパクトがある事件なのではないかと思います

*2:それまで元々一門は5つでした、出羽海一門二所ノ関一門時津風一門伊勢ヶ濱一門高砂一門貴乃花一門は元々は二所ノ関一門に所属していて、そこから分離独立しました

*3:基本的に集団指導体制にある相撲組織において、意志決定は理事会において行われます。相撲協会の最高トップ集団に仲間入りしたことを意味します

*4:春秋園事件で離反した力士たちを全てでないにせよ、復帰を許したり、双羽黒=北尾のように飛び出した人間を絶縁ではなく、角界に関わることを許したりしています

*5:日本相撲協会の組織は、言うまでもなく理事長がトップで、ナンバー2が事業部長、ナンバー3が審判部長だと言われています。執行部に所属するのは、理事長・ナンバー2の事業部長・指導普及部長・広報部長の4人からなるようです(貴乃花親方は左遷された? 日馬富士報道Q&A:時事ドットコム )。どうして指導普及部長や広報部長が事業部に属して、他の教育所長とか兼職になっている色々な役職が執行部ポストでないのかちょっとよくわかりませんね。地方場所や巡業を任されている長が、地方担当なので執行部に入らないというのは分かるんですけどね。

*6:参照―①【スポーツ随想】北の湖理事長やりすぎ“3倍返し” 九重親方屈辱の3階級 &②北の湖氏死去で次期理事長は九重有力、八角と貴乃花は不透明

*7:東京地検特捜部長で、あの悪名高きリクルート事件を手掛けた人物というと、それだけでかなり胡散臭いというか、手を組んでは駄目な人物だとわかりますね

*8:相撲協会「情報操作」で貴乃花親方“包囲網” 元特捜部長が語る ―これなんか典型的ですよね。宗像・小林・貴乃花親方というラインが成立していることが理解できるかと思います。芸能界のドンと言われる周防郁雄氏とつながりがあるとかなんとかも言われていますが、そこら辺よくわからないので省きます

*9:吉田豪氏と玉袋筋太郎氏がラジオで貴闘力について語っていた記事を見ました。どんな世界の競技の人間でも勝負師=博打打ちに通じるものがある。貴闘力などは勝負の生きるか死ぬかと博打を同じラインで考えていたとか。父親が渡世の人間・博徒で幼い頃からそういうのを間近に見ていたとか。博打は嫌いだったけど、親父に支度金350万使い込まれて、どうにかお金を工面しなくてはいけなくなり、競馬で10万を400万にして乗り切った。それ以降ギャンブル狂になったとか、非常に面白いエピソードに事欠かない人のようで面白いですね。大抵引退後飲食店とかに手を出して失敗するのに、彼は珍しく成功している。貴乃花の支持をして票を集めたのも、実は貴乃花理事長下でtotoのようなギャンブルくじを導入したかったからなんて言われます。確かに勝敗が賭けの対象となれば、「注射」は許されない。ガチンコが絶対条件ですよね。ガチンコ力士とギャンブルくじは相性がいいという視点は意外だったのでメモ。
 また、貴乃花理事誕生にこのような後ろから支えてくれたサポーターとでも言うべき存在がいたことは意外に重要なことかもしれません。ナンバー2まで上り詰めながら理事落選という前代未聞な事態に九重親方は陥ったわけですが、彼は非常に傲慢で周囲がドン引きするようなことをよくやっていたとか。「九重が直にお願いに来るなら票を回してもいいけど、絶対来ないだろ?」というのを何処かで見ましたが、現役時代横綱に上り詰めた人はやはりどこか傲慢になるのでしょうね。そういう傲慢になりやすい元横綱理事には影でサポートしてくれる人当たりのいいキャラが重要。そう考えると、大嶽親方や琴光喜と言った人物が失脚して角界を去ったということは貴乃花理事にとって想像以上のダメージになっているのかもしれませんね。大嶽親方や琴光喜が人当たりのいいキャラで気配りタイプ、気遣いの天才という性格かどうかは知りませんけどね。