Foreign Affairsから 米中に引き裂かれる世界
米中に引き裂かれる世界http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201309/Lonard.htm…
全文英語版Why Convergence Breeds Conflict http://strategicstudyindia.blogspot.jp/2013/09/why-covergence-breeds-conflict.html…
全文かなり長いなこれ。
節は五節で以下の通り
○似てきたがゆえの反目
○「チャイメリカ」の時代
○金融危機と米中逆転
○分断される世界
○シミラテラリズム
これまでは似て非なる国だったが故に対立も深刻になることはなかった。次第に似た存在ってのが?だけど。G2やstakeholderのようにアメリカは中国をパートナーとして接してきた。その関係が終わりつつあると。
勘違いされがちですが、そもそも現在の中国とは米を中心とする経済秩序に「組み込まれて」きたのですからね。米中対立というのは根本的にはありえない問題・構造でしたからね。経済で組み込む→政治で国際秩序に組み込むというステップを想定していた米は落胆を隠せないというところでしょう。
習は米中首脳会談直前に現国際秩序体制に付き合うつもりはないとした。中国は既存秩序との協調路線を選ばないと見ていいでしょうね。先のADIZ然り。 チャイメリカ時代の終わり―ここ二十年中米経済というのは相互補完関係にあった。鄧小平方針以来、国内秩序第一で米と協調路線を継続。
無論、多少のゴタゴタは両国にあったけども、基本的には補完関係にあった。それぞれ競争していても追求する次元が異なっていたため対立に至らなかった。例えば米はアジアで軍事的主導権を握り、あらゆる地域枠組みを許さなかった。地域統合を妨げていたが、今ではむしろそれを推奨するようになった。
多国間地域統合の「平和的台頭」を認めている今、中国と衝突することはありえない。他の地域でも米が、民主主義諸国・エネルギー豊富な中東との関係を第一においているのに対し、中国は米があまり重視しない地域に焦点を合わせている(これはむしろ対立の裏返しだと思う。北京コンセンサスなんかで言われているように腐敗政権・人権など問題があって米が経済協力できない所を中国はそれを無視して協力・提携してしまうから。スーダン然りそれで中国と欧州は物凄い対立して、欧州は中国に対して懸念を抱いたわけですから)。
金融危機と米中逆転―原文はTrading Places
金融危機によってチャイメリカの時代は終わった。補完から競争に。経済で、中国は低付加価値から高付加価値へと構造転換を模索している。ゲームをチェスから碁に代えようとしていると。
軍事・外交では、カダフィに対する2011以降のNATO主体の軍事行動などを見て国内の鷹派中心に強硬論が高まった。かといって米のような人道主義的介入は行っていないが、ある強硬派いわく米と同じくらい強くなったら、同じように中国も行動するとのこと。
中国は経済成長が政治的目的を達成するか疑わしいと見るようになってきている。レアアース・フルーツ禁輸と言った手段でも南シナ海での日本・フィリピンの要求を抑止することは出来なかった。このような措置は国内の暴力的なデモを抑制する効果があった(なるほど、一見中国のむちゃくちゃな制裁というのはまるで理がないように見えますが、そういう制裁をすることで国内の強硬論を唱える人間を封じ込める効果もあるんですな)。
もっと劇的な変化は、中国の学者が同盟圏に核の傘を提供すべきではないか?と議論しだしたこと。これでは米中協調どころではない。 以前、世論工作で中国は米を攻めていたが、今では本当に反米的姿勢を国民が望むようになり、中共がそれを必死にコントロールしているというのが実情になってしまっている。
鄧小平が国際協調路線を歩んだように、オバマもそれに似た対中協調路線を模索している。ソ連と同様実利に基づいた関係を築こうとしている。どんな協調関係を築こうとも、お互いアジアへの覇権を引っ込めることはないだろう。米中はかつて世界に好ましい二国間関係だったが、今や脅威に映っている。
分断される世界―DOUBLE BYPASS
もっと上手い訳はないものか?中国の経済自由化により経済発展し、米は中国が西側的価値観を受け入れると見ていた。が現実は真逆。現秩序に適応しようとするよりも、それを変えようとしている。G20、ドーハ・ラウンド、UNで米と真逆路線に行っている。
中国のエリートがどんな考え方だろうと、最早西側はそれを許容しないだろう。中国の歴史家いわく、中国を組み込もうとすべきでなく、西側が中国の秩序を受け入れるべきだと。米の同盟網は非軍事的に、中国を対象としないものにすべしと。当然現状維持かG2のようなものしか西側は認めない。
現在協議されているTPPは世界GDPの40%を占め、さらに米はEUとのFTAも交渉している。つまりTPPは中国を西側秩序に組み込もうとするワンステップ。 西側は経済とともに安保でも、中国を既存秩序に組み込もうとするだろう。西は国際組織・地域機構を促進していく。
the Arab Leagueやthe African Unionやthe Friends of SyriaなどUNが機能しない時はそれらを通じて外交をするのが西の潮流。中国は上海協力機構やBRICsなどの枠組みを通じて西側機構と一線を画してきた(Bypass)。
SIMILATERALISM
―似ているからsimilarから?なんかイマイチよく分かんない言葉の使い方だな…。歴史は繰り返す的なこと言いたいんだろうけど。 現実の問題に、今ある国際機構が機能しないことがある。その時は新しい国際機関を設けて解決しようとすることがある。
2008の金融危機や、北の核など。その時のように、「中国抜きの世界」のための国際機関・枠組みを西側で作るかもしれない。中国も同じことを模索するだろう。そうなればWTOがILOのように骨抜き機関になりかねない。が実際この二極はお互いの繁栄を放棄するところまで、分裂までは行かない。
similar levels of prosperityでシミラリズムね。何か微妙。まあ中国を中心としたかなりゆるやかな冷戦になるってなことを言いたいんだろうけど、ちょっとどうかな?という話でしたね。今の中国に米と二極構造に持っていけるまでの国力ないと思いますからね。
※違ったlateral thinkingとかのlateralだ。接頭にSimiがツイてるわけね。まあでも結局、中国は中国自身の既存の国際秩序とは違う物を構築していくだろうという話ですね。
そもそも中国って世界的な関心・野望がないんですよね。大中国=自国周辺の領土的欲求はあっても。それを冷徹に計算して外交をしかけるという強かさ、狡猾さ、戦略性も無いですし。あと胡錦濤=国際協調派から現政権が誕生したてとかそういう要素を考慮してないのはどうかな?と思いますしね。
まあ、最近流行りの「北京コンセンサス」、ワシントン・コンセンサスに対する北京の主導性が目立っている。これがいずれアメリカを抜いて中国が世界スタンダードになってしまうのでは!?という系統につながる話でしたね。まあ、一読の価値はあるってところでしょうか。