てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

フォーリン・アフェアーズ・リポート 2012/6

フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年6月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

キケロ兄弟の選挙戦術
― 現代に生きる古代ローマの知恵と戦術 /クィントゥス・トゥッリウス・キケロ
 選挙運動の話ですね。今も昔も民主主義下の選挙でのノウハウは変わらないということです。

そして今も同じ、政治風景/ジェームズ・カービル
 ―ですから、まあ特に触れることもないですね。

グローバルリセッションの本当の教訓 /ラグラム・ラジャン
 経済の変化の流れ、格差拡大の話。財政保守主義の独は、労働者保護を弱め、失業手当を削減、製造業の競争力は増した。ユーロにより安い資金を獲得できるようになったギリシャは、改革のインセンティブを失い(ここまでは伊も同じ)、政府内に高給で生産的でない雇用を作り失業率を下げるも、結局は資金調達出来なくなった。スペインは住宅ブームと地方政府による支出が雇用を創りだした。アイルランドも住宅バブル。債務に支えられた成長は長続きしないということ。
 ギリシャ・イタリア・スペインのようにこれ以上債務を増やせないところは、規制緩和・雇用規制を弱め競争力をあげるしかない。
 無節操な融資が世界経済を危機に招いたことは確かだが、規制により起業・革新の芽を積んではならない。

 流れの説明としてはそのとおりなんでしょうけど、ブッシュ以前から格差は拡大していたし、トップの報酬払い過ぎでも概ね適切な範囲とか、なんか違う気がしますね。言いたいことは分かるんですけど片手落ちというか、古典的経済モデルの範疇をでないというか経済学だけやっているというか…。

<特集 ユーロ問題の本質と危機後のヨーロッパ>

危機後のヨーロッパ
― 圏内経済不均衡の是正か、ユーロの消失か/アンドリュー・モラフチーク

 プリンストン大の国際関係論の人。非常に良い文章、そのとおり!というものだと思います。
 ユーロはヨーロッパ経済をコンバージェンス(収斂)していくと考えられていたが、それは依然課題として残っている。債権国独と債務国南欧のバランスが取れない限り欧州経済の均一化は達成されない。欧州経済の均一化のための問題は南欧の肥大した債務ではない。EUの民主的な性質をより発揮させ、公的部門から民間部門へ、そして債権国から債務国へマネーが流れるようにすること。
 独の政財のトップは成長・雇用よりインフレ抑制こそ経済がうまくいくと見ていた。そのためのユーロ導入であった。=市場と対インフレが独のユーロ導入の目的。
 南欧は70~80年代独との間の価格・支出・賃金ギャップによる債務・通貨危機を何度も経験した。ユーロ参加は独のある程度の「支出増・賃金増・インフレの容認」を求めてのこと。であるが故に欧州委員会の議長を務めた、ユーロの父ジャック・ドロールはマーストリヒト条約交渉後に独に譲歩の説得を出来なかった以上単一通貨構想は失敗すると思うと述べているわけだ。

 ユーロ・欧州という単位あってのドイツ経済・ドイツの繁栄、西や伊の破綻や離脱は許容できないだろう。西や伊が経済成長できるような市場を独国内に作らなくてはならない。独がより多くの責任を引き受けて自ら必要以上に欧州のために国内構造を転換させなくてはならないということか。強者・大国こそ率先してモデルチェンジ・適応を図らなくてはならない
。変化に合わせなくてはならない―これこそ国際政治の危機を防ぐ重要なロジック・ポイントですね、同感です。

 ユーロ導入で北欧からの資金調達が可能になり経済は成長した。が、08米英を襲った金融危機でリスクが表面化。独好調、南欧停滞という今の構図に至る。マリオ・ドラギが言うような予算の削減で経済成長を促す選択は間違っている。日英米に比べ財政赤字の規律は厳しいのだからまだ制限するレベルではない。

 危機は民間の判断ミスと銀行の規制が緩すぎたこと。社会福祉モデルの失敗でもない。南欧の腐敗と非効率によるものでもない。独はユーロ導入によってマルクより40%は通貨安のメリットを享受して貿易黒字を得ている。また統一された欧州市場から最大の利益を得ていることもまた間違いない。中国さえ上回る2000億ドルの黒字のうち40%は欧州から。それでも中国のように欧州から非難されることはない。巨額な黒字でありながら、インフレを抑制し消費を落ち込ませ、溜まった資金が金融として南欧に流れているというのが現在の構造。EU経済の鍵は独の消費増にありか。

 マーストリヒト条約締結当時、どんどんEU単位で規制が進み単一政府へ権限が集約されていくと見られていたがそのようなことは起こらなかった。欧の有力政治家でEUからの離脱などという自殺的政策を主張するものはいない。ユーロ危機をきっかけに金融・銀行規制などの分野では強化されている。仮にユーロが崩壊することになったとしてもEUという枠が消えてなくなることはない。野心的で成功した、自発的な国際協調の見本で在り続ける。より「緊密な連合」を求めたEUの精神が完璧な形で体現されることはない。それでも国際問題を対処するための有効な枠組みとして機能し続けるだろうと。


ギリシャ後」のフランスとドイツの思惑
― 統合の維持か、ユーロの解体か /セバスチャン・マラビー
 ギリシャ選挙での緊縮予算派の敗北。ギリシャの放漫財政化、輪転機を回しドラクマを刷りまくるか?そうなれば信用失墜でギリシャ企業・経済は破滅。ユーロ離脱でそこに貸している仏銀行の経営悪化→公的資金注入→GDP債務イタリア並みへというのが最悪のシナリオ。

ギリシャ離脱でもユーロは存続する
マーストリヒトの崩壊と「ニューノーマル」/ダニエル・ケレメン
特になし

だが、いかなる成長路線なのか
― 緊縮財政路線と成長路線 /トーマス・フィリポン
 仏大統領選でオランドの勝利によって緊縮予算から経済成長路線が加わる。ECBは労働市場の柔軟性を高める必要をうったえている。西は労働市場全般が、伊はサービス部門(タクシー・小売業・法サービスあらゆるものに規制がかかっている)が、仏は両方共改革しなければならない。独はある程度のインフレターゲット・共通債で危機に備えることをのむだろう。ただしその場合間違いなく仏に労働市場改革を要求するだろう。
 西政府は健全な財政を維持していたが民間の銀行はそうではなかった。これはアイルランドと同じ構図。蘭の緊縮予算派の連立政権崩壊で独も経済成長へシフトするだろう。ただしどのような経済成長路線かは未だはっきりせずと。


<特集 解体するBRICS>
インドの果たされなかった約束
― 成長の一方で拡大する格差/バシャラート・ピア
 タイトルそのまんま。特になし

「ブラジル経済の奇跡」の終わり
社会保障か経済成長か /ルチール・シャルマ
 ブラジルの経済成長は安定したコモディティの輸出によって支えられている。高金利政策は経済成長を抑制している。高金利によって海外資本は流入するが、レアルが過大評価され物価を押し上げている。レアル高でブラジルの製造業の競争力は押し下げられている。

 94年にデフォルト・通貨危機ハイパーインフレを経験してから経済成長を抑制する高金利政策を取り続けている。過大な政府支出を減らすという決断はできず、ハイパーインフレの経験から福祉国家に。ブラジルの選択は丁度中国の真逆。福祉に力を入れるあまりインフラ整備がおろそかになりそれ故経済成長が伸び悩んでいる。悪路のあまりトラックの後をつけて落ちる積み荷を狙う人がいるほど(それを市で売ることで生計が成り立ってしまうという感じかな?)。

 福祉国家なのに教育への投資が低いというのがチョット理解できませんね。それほど貧困が深刻でそちらに予算が振り分けられているということでしょうか。それとも革命とかが怖いのでそういう予算をつけて、政治的要因や政治の停滞により未だにその構造を変えられないとか?インフラ整備・投資不足で経済成長が4%を超えるとインフレが起こってしまう。そのため抑制的な金利政策を取らざるをえない。今後コモディティの需要は落ちる、安定した成長が達成されなくなる可能性がある。80年代の失われた10年のようになりかねない。今の福祉国家モデル・保護貿易主義からへの脱却が求められる(GDPに占める貿易は僅か20%)。


BRICSのポテンシャルを再検証する/マーチン・ウォルフ
 可もなく不可もなく

変化の時代における米陸軍の役割
― 予算削減、アジアシフト、展開能力の強化/レイモンド・T・オディエルノ
 特になし。あれですね。大きな変化、国内での政治イベントが起こったので、それのエキスパート、元高官とかに今の現状を聞いてみた系ですかね。


<特集 なぜシリア紛争は終わらない?>
シリア紛争の憂鬱な現実
― 出口のない対立と極度の混乱/ピーター・ハーリング
 あれ、これメモないな。内容なかったのか?忘れたのか。多分ルポみたいだったからスルーしたのかな。

アサド体制を支えるアラウィ派のジレンマ/レオン・ゴールドスミス
 少数派であり、迫害の歴史を持つアラウィ派。山岳部に住んでいたが教育・仕事を求めて都市部へ進出。オスマン帝国以来、スンニ派は軍への忌避があり、アラウィ派が安定した収入を求めて軍のポストを占めるようになる。1963年にスンニ派とアラウィ派の労働者が団結したバース党のクーデター。

 1970年に現大統領バッシャール・アサドの父、ハフェス・アサドが権力を掌握すると、アラウィ派の権力拡大を容認していたスンニ派に反発が生まれ始める。そして73年にはシリアの世俗国家化、非イスラム教徒でも国家元首になることを認める憲法草案を示すと、各地のスンニ派が反発。で、六年間内乱・内戦状態に。82年2月ハマーでのスンニ派2万人の虐殺で決着をつける。

 なるほど、シリアというのはイラクと全く似たような路線・図式をたどったんですね。どこのフセインかと思いましたよ。少数派が軍を掌握し、世俗国家を目指し、そして今の失敗に至ると、全く同じですね。なんで中東の諸国はトルコのような世俗国家建設にことごとく失敗するんだろうか?と思っていましたが、イラク・シリアを見れば言わずもがなですかね。シリアもイラクも戦後にできた人口国家という点がやっぱり大きいんでしょうかね。トルコ人みたいな一体感ははるかに劣るでしょうね、イラク人やシリア人といったアイデンティティは。

 経済発展が進んでおらず、アラウィ派の人でさえ恩恵を受けていないから体制の支配を支持しているわけではない。一部のアラウィ派は政権から距離を起き始めている。離脱したアラウィ派が「自由アラウィ」を立ち上げるという動きも起こった。

 アラウィ派は政権が崩壊すれば今までの罪を問われかねない。しかしアサド政権が続けばスンニ派の報復は止まらない―というジレンマに悩まされている。またアサド政権が続けば、その後のスンニ派との紛争レベルで留められるということでもある。いずれにせよ難しい選択ですな。

ガスプロムの衰退とプーチンの政治的黄昏 /アハマド・メフディ
 プーチンの権力基盤としてのガスプロムの衰退。別の権力基盤を探さざるを得なくなる。政府の要請でガスプロムはロシアの需要を優先させ、イタリアへの天然ガス輸出を止めた。このことは民間企業としての信用を失わせた。ロシアではプーチンの友人がトップのノバテックという新しいエネルギー会社が出てきているが巨大で多くの子会社を多く抱えているガスプロムがこのまま消滅するとは考えにくい。

世界的水資源危機
― 水の惑星の皮肉な現実 /スチュアート・パトリック
 よく水が枯渇する。次の大事な資源と言われていますが、水が希少になる中東とかですよね…。まあ環境が悪化しつつある中国とかもそうなのでしょうけど。水資源を日本で買ったとしても、それを中国に輸出できるわけでもないですからね…。そこら辺どうなんでしょうか?特に本文に触れることはありません。