てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

フォーリン・アフェアーズ・リポート2011/08

フォーリン・アフェアーズ・リポート2011年8月10日発売号/フォーリン・アフェアーズ・ジャパン

¥2,263 Amazon.co.jp

苦しみのなかにある人を助けるのはチャリティか、責務か

人道主義における義務と思いやりについて

/マイケル・ウォルザー

 ディアスポラ集団の慈善目的の資金調達には、慈善と正義が同一概念として捉えられている。

 筆者が1948年、イスラエル建国の年にユダヤの成人式ベル・ミツワーをペンシルバニア州で祝ってもらった時に、それによってユダヤのコミュニティに入って、その集会に参加にするわけですが、その時には会合に参加するしないを選択する機会は事実上なかったと述べています。今でもこのような空気はあるのでしょうか?やはり建国独特の空気によるものと解すべきなのでしょうか?

 で、そこの顔役が寄付を募ると、個々人の収入・子供の学費や母親の入院などの生活事情を全て把握していたため、寄付の金額が充分でないと判断した場合記入された誓約書を破り捨ててしまった=彼がリジェクトしてしまったといいます。寄付なのに顔役が事実上金額を決定していたわけですね。

 そしてこれはチャリティなのか徴税なのか、与えることなのか奪うことなのか?と問うた上で、ユダヤのtzedakahという概念はその両方の意味を持っているものだとします。要するにユダヤ教のコミュニティは、宗教を通じて共同体の福祉機能を見事に行っていたということですね。そしてもちろんこれは同じ一神教であるキリスト教イスラム教に通じることだと。

 そうか、そういえば元々一神教というのはstateというものを考慮に入れないで生まれたもの。キリスト教が欧州に至ってstateというものを創りだしたとはいえ、もともと国家機構を念頭に置いたものではない。どちらかと言うと国家などは抑圧的なもの。イスラム教の場合は自ら宗教国家を創りだしたのだから親和的であってもよさそうなものだが、やはり宗教と不可分な「宗教国家」として成立してしまったがゆえに近代的な「国家」とは相性が悪いのか。近代的な「個人」もイスラムとは相性が悪いし。

 哲学者のマイモニデスは、tzedakahには八つのレベルがあると述べている。ポイントはそのうちの二つ。「もっとも優れたチャリティによる贈与とは、貧しき者を独立させるために商売をさせるか、雇用につかせることだ」「チャリティが依存と従属を永続化させるとすれば、それは正義ではない」。

 ―実にそうならなかったのが前近代国家の王朝における奴隷だったり、農奴だったり客戸だったりするものですよね。経済の停滞で福祉が行われずに、中産階級が没落していく。結果下層が膨れ上がって、社会・経済の循環が崩壊して、国家も崩壊するという流れですからね、王朝の崩壊パターンって。

 結局福祉というのは国家をうまく保つための近代国家の叡智なわけですよね。寄付する社会上層への尊敬という要素は重視していても、そこに依存と従属が永住化してしまえば、それは正義ではないという視点はちょっと頭に入れてませんでしたね。名望家のように一定の従属する人々を臣下のようにしてしまうのなら、それは前近代の殿様であって、慈善になりえない。貧民に恩恵の手を差し伸べて配下にするなら荘園領主となんらかわりはありませんからね。慈善・福祉は身分の固定化があってはならない。それでは近代的福祉・慈善となりえないという視点はなかったですねぇ。なるほど、なるほど。

 マイモニデスは、tzedakahの至高の形態とは匿名でのチャリティだ」と述べている。貧しき者が施しをくれた者が誰であるかわからなければ、自らをその人物に委ねることもない。一方で絶望的な状況に直面した者が支援を得ても、チャリティを与えた者の恩着せがましい態度に耐えなければならないとすれば、これ以上の屈辱はない。これは避けなければならない。つまり、ディアスポラ集団におけるチャリティによる贈与は、節度ある福祉国家の特質と重なり合う部分がある。恩恵を受ける人々は、特定の篤志家に恩義を感じなくてもすむ。

 寄付を根付かせるために、匿名での寄付というのは日本社会の悪弊であると指摘をしてきましたが、そもそも前近代国家において「匿名で寄付」をするというのは寄付をすることで「寄付する者の貴族化」を否定するという意味があったわけですね。なるほどなるほど。

 日本の宗教・教団はこういう慈善機能が乏しい気がしますね。なんというか自分達の狭い範囲、対象とする信者の狭い範囲でのみ行われてしまうからでしょうかね。本来東日本大震災のようなときに、宗教の慈善が前面に出てきて、そのおかげで助かりましたという声が多く聞こえてこないといけないと思うのですけどね。

食糧価格の高騰とボラティリティを区別せよ―

 食糧・気候のリンク。気候変動によって食糧が減少する=価格が高騰する、それによるビジネス的な利益もあるだろうし、食糧危機で一国が崩壊しかねない。国際情勢が変動してしまうがゆえの、食糧・気候への敏感さというのはあまり日本人にないですね。何故なんでしょうね?世界秩序に関わるからこその気候・Co2とかにEUは敏感になるんですが…。この号はそれに加えてエネルギーも。エネルギー・食糧・気候が多いですね、この時期のフォーリン・アフェアーズは。まあ、己もそんなに興味があって、いちいちコメントできるレベルじゃないですけど。

アジアの米軍基地再編と沖縄

普天間移設問題に関する米議会の立場

/ジム・ウェッブ

 そもそも新基地必要ない、嘉手納に統合が可能であるという指摘はここの話でしたね。前にも似たようなことはしたと思いますが、ここでもされているので改めてご紹介。

 

 朝鮮戦争ベトナム戦争で10万人以上死者を出した。リー・クアンユーベトナムに米軍が関与していなければ、その後のアジアの経済的成功はなかったかもしれないという言葉を紹介して、ベトナムにおける米軍の活動を好意的に書いていますが、かなり疑問ですよね。朝鮮戦争が日本の復興に寄与したように、シンガポールにとってベトナム戦争は同じような意味合いがあるということなのでしょうか?

 氏は1973年から再編問題に携わってきたと。コストを抑え、プレゼンスを損なわない形で調査し、マケイン上院議員、レビン上院議員(上院軍事委員会の委員長)と私の共同提言をまとめた。

 普天間の海兵航空隊機能を嘉手納空軍基地に統合すれば、よリタイムリーにコスト面でもより効率的に対応できる。(統合後の)嘉手納空軍基地の空軍規模の削減もわれわれは提言したが、この点が日本のメディアではほとんど報道されていない。

 

 削減される戦力を、日本における他の空軍基地や、現状では機能の半分も使用されていないグアムのアンダーソン空軍基地に移すことができる。海兵隊の活動という観点からみれば、地上施設の隣にヘリコプター施設があることが不可欠だ。

 (注日米両政府は6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、普天間基地のキャンプシュワブヘの移設を想定する現行の計画を進める方針を確認した。一方、上院軍事委員会のレビン委員長とウェッブ議員は、米軍普天間基地の移設問題について、キャンプシュワブ沿岸部に移設するとした日米合意を「非現実的」とし、嘉手納基地への統合を改めて要求している)。

 ○南シナ海の主権(領有権)問題を、「東南アジアの海洋主権問題」と呼ぶ。多国間交渉・フォーラムによって解決させるべき。海洋だけでなく、メコン川上流でのダム建設が下流のベトナムナブのデルタ地域700万人に影響を与えかねない。中国は国際河川の上流地域で何かをするとき、下流地域で何が起きるかを気に懸けない世界でも数少ない国の一つ。

 ○4-5年前は中東重視でこの地域からディスエンゲージしようとしていたが、2011年のクリントン国務長官とゲーツ国防長官の演説を見てもわかるように東南アジアのプレゼンスを重視するようになっている。

 ○歴史的にみても、北東アジアの安全保障が安定しないことには、東南アジアの安全保障も安定しない。

 どうみても辺野古の新基地は必要ない。また色々な要素から基準クリアが難しいし、環境などでひっかかる。うまくいきっこない。そういう声が米にもあるのですから、このウェッブ氏のような人としっかりパイプを作っておくべきでしょうねぇ。今彼と親しい日本の政治家というのはどのくらいいるのでしょうかねぇ…。つうか鳩山さんはなぜこの人と関係を深めなかったのか謎ですね。

<特集 中国の意図は何か>

中国の意図は何か /アンドリュー・ネーサン

 ネーサンのキッシンジャープリンストン大学のフリードバーグの主張へのコメントといった感じ。諸葛亮の空城の計とか出てますけど、史実ではないんですがそれは大丈夫なんですかね?一応記載ありますけど信憑性は乏しい話なんですが…。

 キッシンジャーはどちらかというと宥和、米中その他含めた太平洋コミュニティでそれぞれ権限を移譲し、多分地域機構化を提言してますね。どうして米がそこまで譲歩する必要があるのか?とツッコミ、フリードバーグも宥和も敵対も間違い、対中エンゲージメントの強化で否定してますね。現状のオバマ外交もこのフリードバーグの指摘のとおりと。キッシンジャーのような人物、対中ロビーをフリードバーグは批判してます。中国との問題が大きくなってる今、キッシンジャーへの圧力も大きくなっているというとこでしょうか。

ドローン兵器と実体なき戦争

/ピーター・ベルゲン、キャサリン・タイデマン

 ドローン攻撃は捕まえて有意義な情報を得られないこと、巻き添えで武装勢力への支援を増やすことというマイナスがある。狩蜂と武装勢力によばれ、ドローンが脅威になっているのは確か。他に有効的な代替策がない以上、ドローン攻撃は続く。透明性・情報公開を進めることで民間人の犠牲が少なくなる。これによって理解を得ること。パキスタン武装勢力に4,000人以上殺害されているため、彼らにとっても有益。本質的にアメリカよりもパキスタンのテロとの戦い。

 アルカイダ対策のためにCIAが主導してきたが、軍に変えるべき。米軍主導でパキスタンとの共同を進めていくこと。米主導よりパキスタン主導にして後ろに退いたほうが、反発も少なく外交としてより効果的と。