てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

日馬富士暴行事件の解説⑤ 貴乃花「理事」への処分は正当、むしろ軽すぎる。貴乃花理事落選は当たり前の結果 <前編>

 終わらない…。他にも書きたいネタがくさるほどあるのに…。前回書いたモンゴル人差別と親方理事制、徒弟制を前提とした部屋制度及び親方株云々という話で大体終わる*1。この話をして終わればいいだけだったのに、次々と書きたいことが出て来て終わらなくなってこのザマです。延々余計な話が続きます(笑)。モンゴル人差別云々という問題の本質と、どうして貴乃花改革は失敗するのか?という分析をして終われるはずが、事態の新展開で終われなくなってしまいました…(´-ω-`)。「黒幕は白鵬、黒鵬・悪鵬ではなく、黒乃花・悪乃花!?そしてマスコミである!!」と書いてビシっと絞めて終わる予定が、前回書き残していたパートとちょっと整合性がつけられない。つなげるのに無理があるので、つなげるの諦めることにしました。前中後編で無理やり三編構造にしても良かったんですけどね。流石に繋げないほうが良いだろうと、長いのをごまかすために三編構造シリーズで簡潔にまとめた感を出したかったのですが、その手法も限界に来ました(笑)。つかこれ自体長くて分割しないと無理ですし(^ ^;)。
 今回は貴乃花理事の落選という新事象もありましたし、それにつなげることでまとめてしまうことにしました。前回の貴乃花改革は何故失敗するのか*2の続きで書いていたものなので、それにつなげると収まりが良くなるので。理事落選についても触れておきたいポイントも少しとは言えあることはありますしね。貴乃花改革は何故失敗するのかという話の半分以上は、どうして貴乃花は他の親方衆に支持されないのかという話でもありますからね。日馬富士の事件で被害者側の貴ノ岩貴乃花親方の警察行きは、どうして角界の反発を招いたのか?諸親方達は反貴乃花派になったのか。改めてこれまで論じきれていなかった解説をしていきたいと思います。

■相手は~するはずという思い込みと思惑の違いから始まった事件
行き違いと考え違いから始まった 日馬富士傷害事件 (時事通信) - Yahoo!ニュース
 この文にあるように、それぞれが相手の意図を見誤ったことが積み重なって今回の事件に発展したという性質があるわけですね。
 >貴ノ岩白鵬の話が一段落し、元日馬富士と別の話をしていたので説教が終わったと思い、スマホに届いていたメールに返信したもので、非礼を働いた認識はなかった。店を出た後も、同席していた石浦*3に、なぜ殴られたのかと話し、翌日、元日馬富士に謝罪したのも、知人に「謝っておいた方がいい」と言われたからで、殴られた理由が分からないままだった。
 >暴行の翌朝、貴ノ岩が元日馬富士に謝って両者が握手したことで、周りの力士も一件落着だと考えた。後日、事件の端緒に接した相撲協会執行部もそれを伝え聞いて同様の思いを抱いた。
 >執行部が当初、貴乃花親方と元日馬富士の師匠、伊勢ケ浜親方(文中ママ)の話し合いを求めていたことも分かった。
 >本来、示談と組織としての処分は別物だが、貴乃花親方が協会のそうした姿勢から、両者による解決で済ませて主体的に日馬富士白鵬を処分するつもりがないと思い込み、態度を硬化させた可能性がある。

■お互いの意志を確認しなかった故のすれ違い、誤解が今回の事件の発端なのか?
 ―この流れから、暴行現場にいた力士達も、協会も伊勢ヶ濱親方も、事態は大した問題に発展しないだろうと捉えた。そして貴乃花親方は、協会と伊勢ヶ濱親方の態度を見て、しっかり問題に対処するつもりがないと考え独断で警察に行った―そう捉えるのが適切だと思います。こういう流れを見ると誤解、コミュニケーション不足がもたらした事件ということで落ち着きそうなものですが、果たしてそうでしょうか?結論からいうと、そうではなく業界の常識・慣習、角界の人間のそうするだろうという予想から貴乃花理事は大きく外れた行動を取ったのですね。ですから、協会・貴乃花以外の理事・執行部の面々だけでなく諸親方も反発したのです。そこをおさえないと今回の問題はよく理解できないでしょう。メディアの人間でもそういう理解がないまま語っている・論じているので、世間一般の人はなおそうでしょう。

貴乃花派だった伊勢ヶ濱親方&理事長選後の離反、八角理事長に不祥事の責任を取れと考える親方はいない
 最初、一番悪いのは加害者の親方でありながら協会への報告を怠った伊勢ヶ濱親方だと書きましたが、これもかなり微妙になってきました。というのも前回書いたとおり、伊勢ヶ濱親方は貴乃花だったのですね。理事長選挙で惨敗した貴乃花理事を支持した数少ない仲間だったのです。
 ということを考えれば、貴乃花親方が暴行事件があったとして、その犯人が伊勢ヶ濱部屋日馬富士だとしたら、事件を大事にしないだろうと考えるのは普通の人間の発想でしょう。貴乃花理事は、直近の理事長選挙で味方をしてくれた伊勢ヶ濱親方に手心を加えるはず。悪いようにはしないはず。理事長や危機管理委員会がそう考えて問題に対処しようとするのは当然。数少ない味方をわざわざ敵に回すようなことをするはずがない。
 八角理事長も、貴乃花派同士の揉め事を律儀に上に報告してきた位の感覚しかなかったのではないでしょうか?いずれにせよ、とりあえず両親方がどういうふうな着地点に持っていくのか、落とし所を決めるのか、それを待ったというのは至極当然の感覚・発想であったと思われます。理事長の責任云々問う人もいますけど、彼は至極当然の対応をしたと見なすことが出来ます。これで八角理事長に不祥事の責任を取れというのは無理がある。シリーズのラストで語りたいと思いますが、貴乃花親方も過去に不祥事を起こして不問にされている。そういう過去の経緯を考えても貴乃花親方が問題を大事にするはずだと捉えるべきとはいえない。当事者同士の手打ちも済んでいる・貴乃花親方と関係の近い伊勢ヶ濱親方同士のトラブル、そういうことを総合的に踏まえると日馬富士を厳罰に処すべきだった・そうするのが当然の判断だったというのは無理がある。*4

伊勢ヶ濱親方の離反、貴乃花派から中立・八角派へ
 伊勢ヶ濱親方は、理事長選挙以後、貴乃花理事とは関係が悪化していたと言われています。それもそのはず、選挙で惨敗したような人についていこうとは普通思わないからです。八角理事長と関係改善に動いたと言われ、理事を辞任するまでは審判部長代理だったのですね*5。おそらく貴乃花理事長が誕生する可能性があると思い、票を投じたのでしょう。そもそも熱心な貴乃花派ではない。基本は中立派で今回は勝ち目があると思った貴乃花理事を支持した。もしくは将来のことを考えて、貴乃花理事に恩を売っておこうと考えたのでしょう。
 しかし、惨敗の結果を見て、しばらく貴乃花理事長の目はないと見切ったのでしょう。このままいけば、次の職務分掌で正式にナンバー3の審判部長に復帰したでしょうね。何かの記事で、伊勢ヶ濱理事は貴乃花理事と関係が悪化していたから、貴乃花理事は伊勢ヶ濱理事に配慮しなかったというようなものを読みましたが、それはありえません。そんな考えは論外です。

伊勢ヶ濱理事を貴乃花シンパにする機会だった暴行事件
 伊勢ヶ濱理事は貴乃花理事の先輩、貴重な年下貴乃花親方を支持してくれる数少ない年上の先輩親方であり、何より理事。今は中立から八角理事長よりにシフトしたとはいえ、貴乃花理事に投票したという事実は変わらない。この恩義から言っても、伊勢ヶ濱理事を軽視することはありえません。
 伊勢ヶ濱理事が貴乃花理事に恩を売ったのではなく、逆。貴乃花一門の票を回して伊勢ヶ濱理事を誕生させたという見方もできます。貴乃花一門は20票にいかなくとも、一門外の票を動かすことが出来る。15~18票近く持っていると言われます。なので、貴乃花一門から二人目の理事を出せない分の余り票を伊勢ヶ濱理事に回して当選させたということも考えられます。票の関係から貴乃花伊勢ヶ濱という関係だったということは十分考えられますね。その裏切り者伊勢ヶ濱を見切ったという見方も可能でしょう。しかしそれでも、理事に立候補して当選するくらいの票を持っているわけですから、有力者であることには変わりない。そういう人間を味方に取り込むことでシンパを増やしていく必要性があることには変わりないので、貴乃花からすると伊勢ヶ濱親方が中小勢力であるとしても、彼を敵に回すことはありえないという結論に違いはありません。
 そういう風に考えると、伊勢ヶ濱理事は理事長選で不利であるにも関わらず、貴乃花理事に一票を投じることで票を回してもらった義理を果たしたと見るのが自然なのでしょう。票を回したことで、自分の意志に絶対服従すると考える貴乃花理事が甘いとするのならば、理事長選で票を投じたから義理を果たしたと考える伊勢ヶ濱理事も甘かったと見てもいいかもしれません。

 それはさておき、貴乃花理事は伊勢ヶ濱理事に直接話をして説得することで、また彼を中立・八角派から貴乃花派に引き戻せるわけです。警察に行く準備をしつつも、伊勢ヶ濱部屋に直接訪れてそういう話をする。
 (伊)「え、警察に?貴乃花くん、いや貴乃花理事。今回のことはどうか水に流してくれないか?この通りだ。」
 (貴)「伊勢ヶ濱親方、私と親方の仲じゃないですか。流石に日馬富士を無罪放免には出来ませんが、決して悪いようにはしませんよ。今後も角界のため、協会を良くするために、一緒に頑張ろうじゃありませんか(ニッコリ)」
 ―というようなやり取りでもして事件を収める方向に向かっておけば、伊勢ヶ濱理事に恩を売ることが出来る。今後も伊勢ヶ濱一門の票をある程度計算できる。理事長になって相撲界の大改革をしようというつもりなら、暴行事件が許すことが出来ない蛮行だとしても、譲歩して伊勢ヶ濱理事に有利な落とし所を見つけてやる必要がある。
 そういう事情・背景を考えると、八角理事長や伊勢ヶ濱理事が問題が大事にならないと考えるのは至極当然なわけですね。貴乃花が大改革をしたがっている野心家ならば尚更。

■政敵・反貴乃花派を増やした貴乃花

 何より、今回のように強硬な態度に出てしまうと、伊勢ヶ濱理事・一門を敵に回してしまう。事実の是非や経緯は置いといて、伊勢ヶ濱親方からすると、横綱まで出世した可愛がっていた大事な力士を貴乃花親方によって殺された・引退に追い込まれたわけです。この恨みを抱いた伊勢ヶ濱親方が今後協会においてどういう行動を取るか?貴乃花になるに決まっているではないですか。
 早速、伊勢ヶ濱親方は次回の理事選に立候補する意欲を示していますが(これを書いていた時は伊勢ヶ濱親方も立候補すると言われていました)、もし彼が理事に返り咲いたのなら、貴乃花絶対殺すマンとして、貴乃花理事の足を徹底的に引っ張る反貴乃花派になってしまう。現代の角界では、一門の結束はあまり強くないと言われてはいるものの、何かのきっかけで一門全体で反貴乃花になるような可能性のある行動はやってはいけないに決まっている。二所ノ関一門についで、また違う一門を敵に回すのか?こんなことでどうやって理事長になって、大改革を実行するというのか?理解できません。

伊勢ヶ濱親方・一門についで、白鵬・モンゴル派を敵に回す愚行
 もう一つ理解できないこととして、言うまでもなく日馬富士というのはモンゴル人なわけです。もし日馬富士が引退ということになれば、朝青龍についで、またモンゴル人横綱を殺すことになる。そして事実そうなった。これで完全に現代相撲界で有力勢力の一つであるモンゴル派閥を敵に回してしまった。許せないことだとしても、ぐっとこらえて日馬富士が引退しないような処分で決着させないと、反貴乃花派勢力が強大化してしまう。
 今回の貴乃花親方の行動はたとえ、正しい行動だとしても、伊勢ヶ濱親方とモンゴル力士グループと二つの敵を作ってしまったという最悪な結果となったわけです。

 日馬富士の引退会見直後に、引退までする必要はなかったのではないかということを言っていました。貴乃花親方は日馬富士は引退しなければならないとまで考えていなかったかもしれません。しかし、政治とはその行動がどういう結果をもたらすかを計算して行わなければなりません。貴乃花親方は結果を計算できなかったとしたら、政治能力がない無能と言わざるをえません

白鵬を敵に回す愚行
 白鵬は千秋楽で「膿を出す」発言をしました。あの真意は、「注射」を止める。貴ノ岩にもこれ以上手を出さない。場所前・中のモンゴル人同士の飲み会も止める。だから訴えを取り下げてくれ、許してくれということ。そもそもモンゴル人達は普通にやっていれば勝てる。楽に勝つため、政治上の目的のために星の回しあいをやってモンゴル勢力の拡大を狙っているに過ぎないと考えられます。日本人も、他の外国人力士も注射をしない五分の条件ならそれでいい。別にそれでも十分勝てるので、絶対譲れないラインではないですからね。
 しかし、貴乃花親方は訴えを取り下げなかった=白鵬のメッセージ・交渉を無視した。結果、日馬富士は引退となった。日馬富士の首を取られた白鵬貴乃花絶対殺すマンになりました。「巡業部長が貴乃花理事のままなら巡業に行きたくない」発言に、わざわざチームモンゴルのジャージを着てきたことを見れば、白鵬はこの件で貴乃花理事を絶対許さないと宣言したことになります。モンゴル派・白鵬派という反貴乃花派の立ち上げを宣言したわけです。着々と将来のために相撲界を変える理事長の座のために、内弟子を取るなどの準備をしてきた彼ですが、その現役最強で史上最多優勝など数々のレコードを持つレジェンドを敵に回すことになりました。
 以前、最後にモンゴル派を敵に回すことはありえないと書きましたが、白鵬一代年寄として協会に残った場合、その実績から現貴乃花と同じかそれ以上に角界に影響力を残すことになります。その彼も不満を持つ改革派である以上、貴乃花と折り合いがつけられないところが多くとも、改革で共通する点は多い。改革する度に邪魔になる反対派の理事を減らす=年寄名跡問題などの改善については彼の協力が不可欠になるはず。
 色んな親方・一門の諸利害関係者を調整するよりも白鵬のような大物実力者と交渉して取引をするほうが遥かに改革は進めやすい。本気で協会を改革しようという意志があるのならば、実力者白鵬を敵に回すようなことは絶対やってはいけないこと。理事長に上り詰めた時、若手親方白鵬が反貴ノ花として事あるごとに逆らってきたら改革は一体どうなるか?そういうことを考えれば言うまでもないでしょう。

■警察に行く、被害届を取り下げないこと=日馬富士の首を取るという意思表明に他ならない
 正直最初は、日馬富士の引退は時期尚早ではないか?そんなに早く引退を決断しなくても事態の推移を見守ってからでよかったのではないか?と思いました。しかし、報道の流れを見ていると、今日に至るまで相撲騒動の報道がやまないように*6、マスコミがひっきりなしに訪れている。協会や伊勢ヶ濱部屋を守るという意味でも、日馬富士がさっさと辞めないと、日馬富士の周囲にマスコミが押しかけて、関係者に迷惑をかけていたことは必定。これ以上の混乱を避けるためにも日馬富士の引退の決断は妥当なものだったでしょう。もし彼が引退していなければ、マスコミが押しかけて部屋や関係者周辺はその対応でパンクしていた。本来すべきことがまるで出来なかったでしょうね。また有る事無い事根掘り葉掘り探られて記事にされる、付きまとわれるという迷惑を考えれば尚更でしょう。
 もし貴乃花親方が伊勢ヶ濱親方の要請を受けて警察への訴え・被害届を取り下げて事態の早期収集を図っていたら、日馬富士の引退は避けられたかもしれません。そう考えると伊勢ヶ濱親方の怒りは察するに余りあるものがあるでしょう。
 そういうことを考えてもやはりいきなり警察に行ったのは理解できない行動。また、その後協会や伊勢ヶ濱親方の要請を受けて訴えを取り下げなかったことも理解できない行動。日馬富士伊勢ヶ濱親方、そして協会・現執行部にダメージを与える、責任を取らせるという意図があったとしか思えない。本当に何を考えているかわかりません。

貴ノ岩と部屋・一門のことを考えたら普通は妥協する
 自分の改革が出来なくなるという以外にも、周囲の人間に対する配慮という観点からも問題を大事にしないのが普通だと角界の人間は考えるでしょう。弟子を守ると言っていましたが、今回の件でおそらく貴ノ岩はモンゴル派閥から追放されることになるでしょう。下手したら鳥取城北高校閥からも追放される恐れもあります(貴乃花親方も鳥取城北高校とつながりがあるようなので絶対ではないでしょうけど)。今回の一件で、チームモンゴルは目の敵として貴ノ岩の首を狙うでしょう。そういうことを考えても普通は妥協をするもの。
 江原啓之氏が貴ノ岩についてモンゴルに帰れるのだろうか?と心配していましたが、まさにそのとおりで、モンゴルでは英雄である横綱日馬富士を引退に追いやった元凶としてモンゴル人が非国民・悪魔扱いする可能性がある。モンゴルの人々がどう捉えているかわかりませんが、少なくとも将来モンゴルでまともに生活できなくなるリスクがあるのですから、貴ノ岩の将来・人生ために示談で終わらせるというのが親方として取るべき決着の付け方でしょう。そういうことをしなかった以上、貴ノ岩はモンゴルの土を踏まない覚悟がある。日本に帰化して日本人になって生きていく覚悟があると考えるべきなのでしょうが、本当に彼にその覚悟があるのでしょうか?「自分は悪くないのに…。自分が悪いように言われている」なんていうコメントを見るとどうもわかっていないように思えるのですが…。そして貴乃花は親方として一生面倒を見る覚悟が求められますがそれくらいの覚悟を持っているのでしょうか…?
 彼一人で話が済めばいいですが、今回小結に昇進した貴景勝など、貴乃花部屋の力士全員が狙われるおそれもある。貴乃花一門を切り崩すという狙いがあるのならば、一門全体が目の敵にされるおそれがある。モンゴル力士たちが、優勝は二の次・三の次で、貴乃花関係者の力士を潰しにくる可能性がある。そうなったらどうするのか?(時津風一門を離脱した3名の親方衆が一旦様子見で即合流しなかったのにはそういう背景も含まれていると見ていいでしょうね)
 ガチンコが信条の貴乃花一門が故に、却って好都合・大歓迎なのかもしれませんが、ガチンコ相撲と政争では意味が違う。ただでさえガチンコ力士の寿命は短いというのに、弟子の選手生命・力士人生のことを本当に考えているのでしょうか…?

■余談:貴乃花の暴走は皮肉にも相撲を最高に面白くした
 余談になりますが、皮肉にも今回の事件・政争をきっかけにガチンコ勝負どころか、どちらかが死ぬまでの殺し合い。モンゴル派VS貴乃花派のリアル真剣勝負の構図が実現することになりました。間違いなく真剣勝負になるこの対決は相撲を見る上でこの上なく面白い力学となって、土俵を白熱させるでしょう。WWEなんか目じゃない、生きるか死ぬかのガチバトルですからね。次の場所がどうなるか今からワクワクしますね。朝青龍引退後まるで見る気になれなかった相撲ですが、見たくなってきましたからね。
 貴乃花派VSモンゴル派また八角部屋の力士との対戦なども見どころになるでしょう。しかし、貴乃花派もモンゴル派も、その他の一門でも派閥でもいいですが、決定打にかける。多数派として主流派を占めるほどの勢力が形成されそうにもないことを考えると、潰し合いで消耗しあう。結局勝者なきまま衰退していくという流れになるんでしょうけどね。

■興行を妨害し、反貴乃花派を増やした警察行き
 伊勢ヶ濱親方・白鵬=モンゴル力士だけでなく、相撲協会の大多数の人も敵に回したと見ていいでしょう。いきなり警察に行くことで面子を潰したということだけでなく、貴乃花親方の行動でスケジュール・予定がぐちゃぐちゃになったからです。
 場所中に警察に被害届を出しに行くことで、協会はその事件についての説明責任が生じる。マスコミが押しかけることで、急遽その対策・対応をする必要が発生して色々な労力・時間を割かなければならなくなった。

 「協会に報告もせずに警察に行くなんてありえない」という言葉をおそらく何万回もメディアから聞いたと思いますが、ホウレンソウの観点以外に、どうして行ってはいけないのかというと、協会・組織に予定外の面倒をかけるからですね。営利企業ではないにせよ、興行を定期的に開いている組織。興行の収益が重要な組織であることには変わらない。どの理事・親方でも、場所・興行が重要だという意識は共通して持っている。
 暗黙の了解として、というか常識として、興行にダメージを与えるような行動を取るような協会職員は居るはずがない。まして理事においておや。しかしこういう事件が起こった以上警察に行かない訳にはいかないというのは当然。だからこそ、警察に行くなら行くで何故行く前に理事会で報告しなかったのか?理事長や他の理事に相談しなかったのか?そこが理解できないわけです。他の理事・親方もほぼそういう思いで共通しているでしょう(まあ、中には本当に警察に行くこと自体がけしからんという発想をする池坊さんのような人もいるかもしれませんけどね)。*7
 興行を開くということは、多くの仕事を担当ごとに割り振って、職務にある人間がその役目を全うするはず。人員が余剰か人手不足かどうかわかりませんが、本来の割当を超えて、事件対策にマンパワーを割くとなると、普段行っている業務に支障をきたすわけですね。いつもと違うマスコミが押しかければ、場所中の力士も取材だ何だで邪魔されて集中できないでしょうし、いい迷惑でしょう。

 以前紹介した記事にあったように、対応が後手後手に回ると、マスコミが少しでもいいネタを取ろうと、色んな所に押しかける。その上で違う意見が出ることになり、それを巡ってもまたズレを突かれたりで対応がめんどくさくなる。はじめに結論を皆で導き出し共有した上で不祥事というものは当たりたいもの。その不祥事対策が貴乃花理事の独断による行動のために、まるで出来なくなった。そういうことを考えると、親方や力士衆が貴乃花理事について反感を抱いたとしても何の違和感もないと思われます*8
 貴乃花親方がバッシングされても相撲協会と決裂した本当の理由 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot.ここにあるように、貴乃花親方が事件を知ったのが26日、九州場所が始まるのが翌月の12日で、二週間以上間がある。ということを考えると、貴乃花理事が考えていたように場所前とは言えど緊急理事会を開いて、処分を決めて謝罪会見を開くなど十分に可能だったように思えます。
 しかしやはり、興行を考えると場所前に不祥事を明らかにしたくないと考える理事が殆どでしょう。そして興行の顔である横綱を欠場させたくないとするのも同じ。同じ貴乃花派であり、問題を公表することに貴乃花理事に利がないことを考えると、執行部が当事者同士の手打ちがあったことも含めて処分せずで済ませたことは、角界の慣行から考えて当然の流れだったでしょうね。やるにしても場所後という判断だったんでしょう。その他の親方にしても考えは変わらないでしょう。むしろ、「そんなよくあるちょっとこづいたくらいの暴力事件で警察に行くなんてくだらないことをするなんて…。余計な耳目を集めて、興行に支障をきたすなんて理事のくせに何考えているんだ?バカじゃないか?めんどくさいことしやがって…」と迷惑極まりない行為と捉えている親方のほうが多いと思われます。

貴乃花の暴走を教訓に不祥事対策の徹底・処分の一元化をすべし
 個人的には警察に行く行かないはともかく、処分はきっちりすべきだったと考えます。この点明確な処分を求めた貴乃花理事のほうが正しかったでしょう。シリーズ①で書いたように、危機管理委員会を常設化しておけば、このような誤解・イザコザは防げたでしょう。貴乃花親方が伊勢ヶ濱親方へ話を持っていった時、常設の危機管理委員会に話を持っていくことが出来るようになっていて、そこで一律的に処分が決まるようになっていたらそもそも今回のような騒動に発展しなかったでしょうからね。
 不祥事の発生で、当事者の力士や親方に危機管理委員会への報告を義務付ける。そして危機管理委員会が執行部とは関係なく規約・法に則って一元的に処分を決める。そういうシステムが整備されない限り、不祥事が発生したときに、第二第三の貴乃花親方が出て来るとみなすべきでしょうね。まあ、貴乃花親方のような行動を取る人がそう何人もいるとは思えませんが。
 前回述べたようにそもそも親方=理事制である以上、このような問題は避けられないわけですね。親方衆が協会の役職を兼務する以上、どうしたって業務は片手間になる。二刀流大谷が片方に専念すればと言われるように、本来部屋の運営も、協会の業務も片手間でこなすようなものではあっていけないはずなんです。このように兼務=兼職が当たり前である以上、お互いがお互いの業務・職分に対して、なあなあになってしまう。本来貴乃花のように理事として厳しい立場で親方に望む、親方の責任を問うということはあってしかるべきなのに、そういう責任追及が行えなくなる。こういう視点からも親方理事制は解消されるべきものといえるでしょう。

 親方衆がどうして貴乃花親方を支持しないか、どう貴乃花親方を見ているかということを書いた所で、処分の話と理事選での落選の話を後編でしたいと思います→続く。

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*1:過去記事はこちらです→日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質はモンゴル互助会の八百長・「注射」ではなく、モンゴル人差別と親方=理事制<前編>
日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<中編>
日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<後編>

*2:リンクはこちらです→日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<前編>
日馬富士暴行事件の解説④ 理事・理事長選挙から見る貴乃花親方。貴乃花改革は必ず失敗する<後編>

*3:彼の父親が、前鳥取城北の相撲部の監督で現在は校長なんですね。その息子さんがこの石浦という力士で、彼は白鵬の付き人・内弟子なんですね。白鵬鳥取城北にも太いパイプを持っているということは注目に値する事なのであえてここでそのことに触れておきます

*4:もちろんこれは世間一般の感覚や論理とは別のモノです。あくまで角界のこれまでの慣習や論理の話です。業界のルール・常識に沿った行動をしている八角理事長を裁くべき・責任を取らせるべきと考える人間・親方衆は殆どいないということです

*5:2013年1月の理事補欠選挙で理事になり、審判部長。 2014年1月の理事選挙も当選で、審判部長留任。2016年3月の職務分掌で、審判部長から大阪場所担当部長に。2017年11月場所で二所ノ関審判部長の休場により審判部長代理になっています

*6:これを書いている時はまだ続いていました。理事選が終わって注目するようなイベントもなくなり、ようやく最近収まってきたと言えるでしょうか?

*7:※追記、おそらく、こういうタイプの組織ではそもそも不祥事を表沙汰にしない。力士同士の揉め事は当事者同士でケリを付けるという慣習があると思ってましたが、実際そういう記事がありました。慣習破りという点で、貴乃花親方に憤る・ついていけないと感じる親方がいてもおかしくないでしょうね。

*8:日馬富士の暴行で巡業での力士の飲み歩きが禁止されたり、お小遣い稼ぎになる年末テレビ出演などが自粛される流れとなったと言います。原因が貴ノ岩になくとも、「うちの弟子が迷惑かけたから」と、力士に迷惑料として現金なり何なり、他のものをあげるという気使いが普通。果たして貴乃花親方はそういうことをやったか?巡業部長で貴乃花理事は嫌だと白鵬が言ったことについても、貴乃花理事はホテルから外出しないから、力士がタニマチと飲み歩くのに気を遣う。実際多くの力士は、ハメを外せなくて嫌なタイプなのだとか。そういう人望という点でいい声が聞こえてこないのは毎度のことですね。本来、優しさと厳しさというのはコインの裏表どちらが欠けても、成立しないものなんですけどね。

日馬富士暴行事件の解説⑥ 問題の本質は八百長ではなく、モンゴル人差別と親方理事制<後編>

 

 続きです。シリーズ③を書き直したように、これも次の貴乃花の話を書いたらまたまとめ直すかもしれません。暴行事件の解説という視点以外に、相撲協会という組織の問題、貴乃花親方の問題、マスコミの問題。この三つでまとめ直したほうがわかりやすく読みやすくなるかもしれないなぁと今更ながらに思ったので、んでこの白鵬の話みたいに再編したほうがいいかも…と迷いつつとりあえず後編です。そういう思いついたことを列挙してるだけ感が否めないのは勘弁してつかあさい。

 

※追記、本文で論じている親方=理事制こそが問題という話、他に誰もしていないのかな?と気になったので、ちょっとググったら見つかりました。先行文献的な感じでご紹介しておきます。決してこれを読んで意見をパクったわけではないですよ(笑)。

 

要約・お品書き

○力士達のことを考える、力士の地位向上に熱心な白鵬
○力士会=選手会が機能していない異常状態
力士のための改革の要望を潰した貴乃花巡業部長
○協会が貴乃花理事の正当な訴えを潰したというなら、貴乃花理事も力士会の主張を不当に潰している
○力士としてのピラミッドの序列の上に親方のピラミッドが存在する二重の徒弟制構造となっている相撲界
○徒弟制の論理を振りかざす貴乃花親方では改革は絶対不可能
○正しかった「貴乃花巡業部長のもとでは巡業したくない」発言
○力士会はボイコットをしなくてはならない
○問題の本質、親方理事制―国籍要件は差別なのか?半分イエス・半分ノー
○親方理事制を解消して、海外国籍力士の親方の道を開くべき。年寄株制度も見直し・廃止すべき
帰化一代年寄白鵬の誕生=理事長白鵬の誕生。白鵬改革でしか相撲界は変われないという日本の恥
一代年寄白鵬をすぐに認めていれば、白鵬は理事長にはならなかったし、なれなかったはず
○現執行部・及び予備群には時代の変化に対応して政策を打ち出す能力自体がない


■力士の地位向上に邁進する白鵬力士会会長
 貴乃花親方が白鵬を嫌っているのは有名な話ですが、そのきっかけはいくつかあれど決定的なのはおそらく巡業での対立でしょう。*1―バスで白鵬を置き去りにしたり、ホテルを別にしたり大人気ないさまを見せているのは、巡業での衝突が原因のように思えます。
 白鵬は前述通り力士の地位向上・改善に熱心な力士。最近、力士たちに人間ドックを受けさせるようにしてほしいという要望を出しましたが、2015/12の時点で既に協会に力士の待遇改善の要望書を出していたんですね。トレーナーの充実や日程を減らしてその分ファンサービスをあてて補填するなど、とにかく現力士たちの巡業などのキツキツな過密スケジュールの改善を訴えたのですね。怪我が多い力士たちですが、本場所の厳しい日程以外にも巡業で酷使されているとなったら、そりゃ故障するに決まっている。それを改めようとするのは業界の人間ならば普通の発想でしょう。つい先程まで知りませんでした。さすが白鵬ですね。

■力士会=選手会がまるで機能していない異常性
 ところがそのまっとうな要求を八角理事長及び貴乃花理事は無視したわけですね*2。巡業による目先の収入・利益欲しさに聞き入れなかった。アホですね。気になって力士会の過去の改善要求案一覧をチェックしてみようと思って検索をかけたのですが、ググっても殆ど出てきませんでした。力士会と協会・執行部の交渉過程をチェックしたかったのですが、そういう交渉の歴史が存在しないようです…。
 力士会のHPすら存在しないようですね…。これは非常にまずいでしょう。八百長問題の発端となったのは、十両とそれ以下の力士の待遇が天と地ほど違うがゆえに八百長をする動機・問題の背景となったわけです。ということは力士会としても八百長防止策として、そこにメスをいれることを提案しなくてはいけない(勝敗に応じた給与ではなく、成績に応じて階級・地位が決まり、それに応じて給与が決まるという現行制度では尚更でしょう)。自分たちの力士としての権利確保以外にも公益性という観点から発言・行動していかないとまずい。にも関わらずこれでは相撲界が良い方向に変わっていくとは思えない。改革の力学に力士というアクターが欠如しているわけですからね…。
 朝青龍が過去に給与の向上を訴えたことと、大麻事件で尿検査のやり方が曖昧なのでその改善をして欲しいくらいしか他には見つかりませんでした。また、最近の大砂嵐の事件で過去に力士も運転できるようにして欲しいという要望があったことくらいですね、調べた限り。
 そういうことはともかくとして、白鵬がやったように相撲界のために抜本的に力士のためになるようなことを力士会はどんどん提案・提言していかなければならない。
 白鵬が提言したことは一見些細な事に思えますが、力士会として初めてまっとうな改革を訴えるという非常に画期的なことであり、相撲界の構造・歴史を大きく動かす重要な一歩といえるでしょう*3

■力士のための改革の要望を潰した貴乃花巡業部長
 この白鵬の態度・行動に比べ、巡業部長貴乃花理事の行動はどうだったのか?現役時代に力士会会長として、力士たちのために何か行動・発言したのでしょうか?おそらく何もしていないでしょう。これまで横綱が「何も文句を言わずに黙々と行動すること」が品格だと言われていたことを考えると間違いないでしょう。
 白鵬貴乃花の違いついでに、弟子・後進の教育というのもあるでしょうね。将来のために着々と内弟子、後輩の教育をして未来の白鵬部屋のための準備をしているのに対し、現役時代から後進の指導に無関心で、親方になってからも弟子の指導がろくにできず、新弟子自体入ってこなかった時代もあった貴乃花。とにかく横綱としての意識が強すぎて非常に偏狭なんですね、千代の富士もそうだった・プライドが強すぎて傲慢だったといいますし、そういうタイプの元横綱親方は少なくないのでしょう。

■協会が貴乃花理事の正当な訴えを潰したというなら、貴乃花理事も力士会の主張を不当に潰している
 現役時代何もしてこなかったどころか、貴乃花巡業部長はこの白鵬のまともな訴えに対して、「協会上層部は師匠だと思え」ということで跳ね付けました。「たかが選手が」発言を彷彿とさせる暴言ですね。力士たちのために何が出来るか、何をすることが一番いいのか、一緒になって考えよう。話し合おうというのではなく、協会に逆らうこと&師匠の俺に逆らうことは許さん。これの一体どこが改革派なのでしょうか?執行部が貴乃花親方を不当に吊し上げた。彼の意見も聞かずに執行部に逆らうな!と貴乃花親方を抑圧したというのなら、貴乃花巡業部長が力士たちにやったことと何が違うのでしょうか?まるで同じではないですか。
 白鵬の訴えは至極まともなもの。しかし意見をされたこと、文句をつけられた事自体が貴乃花親方には気に入らなかったのでしょう。自分に逆らった「反逆行為」と捉えて「白鵬憎し!」となったと、まあそういう流れなのでしょう。偉大な日本人横綱の自分に逆らった「インチキ・偽物モンゴル人野郎」が!となった。憎いあまり「あの八百長クソ野郎!」と白鵬を否定することで、自分の行動・主張こそ正しいと、自己正当化したのでしょう。

■力士としてのピラミッドの序列の上に親方のピラミッドが存在する二重の徒弟制
 また、貴乃花理事の姿勢が問題なのは、「上層部を師匠と思え」発言・論理は、ギルド制・徒弟制の延長に基づく発想であるということです。例えば昔運動部では一年奴隷・三年天皇という考え方がありました。運動部の中学生が三年で天皇であっても、また高校に入って一年生になったらまた奴隷からスタートすることになります(流石に中学ではそういう思想はなくて、高校・大学のみだったのかな?)。新弟子から関取・横綱となって力士として頂点を極めたとしても、引退後親方として協会に入ったら、また再び一職員としてキャリアがゼロになってしまうのもこれと同じですね。新人親方として諸先輩親方・理事にペコペコしなくてはいけないわけですね。
 その上下関係自体が悪いことだとは言いませんが、ここで問題なのは、その論理を振りかざして「黙れ」の一言で済ませてしまう精神性ですね。当然運動部の高校一年生は中学三年生に対して先輩に値します。そこで中三が高一に逆らうことはありえません、普段あまり交流しないとはいっても高一>中三という序列が崩れることはありません。親方>横綱の関係も同じですね。横綱は力士としてのトップだとしても、協会職員の人間ではない。力士の上のピラミッドに所属する協会の人間・親方衆より序列が下になります。
 思うに、白鵬の審判部への疑問に対して、北の富士氏が子供でもわかるという同じ言葉を使って白鵬を批判したメンタリティも同じものでしょう。一力士が力士より上のピラミッドの協会・及び人間に意見を差し挟むこと事態がありえないというメンタリティがある(廃業した若乃花虎上氏ですら、白鵬の巡業部長が変わらないなら巡業に参加したくないという発言を力士が親方に文句をつけてはいけないというふうにコメントしていましたからね)。相談のやり方次第だと思いますが、今時運動部の学生でもそこまで極端なメンタリティはないでしょう。

■徒弟制の論理を振りかざす貴乃花親方では改革は絶対不可能
 かくも角界では徒弟制の身分秩序意識が強い。この徒弟制の論理が諸悪の根源となっている以上、完全に否定しないにせよ、その論理に強い違和感を抱いている人間でなければならない。貴乃花理事はその論理に強い違和感を抱いていて、なくさなければならないという持論の持ち主であるどころか、その論理を正統な権利を要求する力士会に対して振りかざした。また親方としても弟子に対して絶対的な存在として服従を要求するタイプに思えます*4。そんな思想を持つ貴乃花親方が改革を実現する、徒弟制をなくす方向に角界を持っていくことが出来るでしょうか?無論言うまでもなく不可能でしょう。
 ありえないと思いますが、それでも無理やり徒弟制を解体すると仮定しましょう。しかし人格は変わりませんから、師匠だから&上司だから俺に黙って従えなんていうメンタリティのままです。そんなトップが徒弟制を廃止したら組織はどうなるか?部下・目下の者の反発にあって、それを反乱と捉えてなお強烈に服従するように要求して、お互いが持論を引っ込めずに衝突する。あっという間に組織が混乱してにっちもさっちもいかなくなるのは目に見えていますね。

■正しかった「貴乃花巡業部長のもとでは巡業したくない」発言
 上述のような経緯を抑えてから振り返って見ると、白鵬が「貴乃花巡業部長のままなら、巡業に参加したくない」といったことはまるで違う意味を持ってくるわけですね。理事たちの中でも改革派として名高い貴乃花理事であるにもかかわらず、巡業部長として力士のことを考えた対応が取れる立場なのにも関わらず、力士たちのために何もせず、むしろ待遇改善要求を封殺した。そして今回また力士のことを無視して、横綱日馬富士を引退に追い込んだ。くだらない些細な揉め事を大事に発展させて、力士どころか角界全体を巻き込んだ騒動を引き起こした。これで力士会が反発しないほうがおかしいでしょう。*5

■力士会はボイコットをしなくてはならない
 力士会は自分たちの待遇改善のためにボイコットをしなくてはならないでしょうね。本場所をボイコットするとなると、相撲協会の存続に関わるので避けるべきでしょうが、待遇改善のため、巡業のあり方を変えるために巡業限定でボイコットをすべきだと思います(勧進元・ファンへの負の影響を最小限に抑えるために、相撲を取らない代わりに、サイン会や握手会に子どもたちの相撲大会などに参加するなど、ファンとの直接の触れ合いはむしろこれまで以上に増やすなどの対策を取ればいいかと思います)。
 モンゴル人は差別されている。それ故にモンゴル人力士で場所をボイコットしようという話もあったそうです。今の角界ではモンゴル人差別については鈍感なので、いきなりモンゴル人のボイコットでは失敗に終わる可能性も十分にあります。モンゴル人が差別を訴えるという点で、社会的な注目を集められても、どうなるか確証がない。今のようにモンゴル人は勝利至上主義で礼儀や品格ということがわかってない!日本文化を理解していない!なんていう因縁づけが大手を振ってまかり通る状況を鑑みるに、失敗するリスクが十分にある。そのリスクが大きすぎます。それ故にまずは力士全体の権利向上という枠組みでやるのが好ましいと思います。
 「力士会VS協会」という図式でワンクッション挟むことで、白鵬は力士や相撲界全体のことを考えて行動している立派な人物だという評判を勝ち取ることが出来る。そして次にモンゴル力士会が行動する際の観測気球にもなって、次の一手を読みやすくなる。今回の暴力事件のように、協会の異常な体質をPRしたほうが交渉を上手く進めやすいですし、それこそ今ヒーロー扱いする人が一定数いる貴乃花理事の異常性もPRできますからね。貴乃花理事は力士会の正統な訴えを一顧だにせず否定したわけですから。一度力士会でボイコットすれば、次はモンゴル人力士達がボイコット、しかも本場所でしようとしているぞという動きを見せるだけで、協会を動かせる・交渉できるようになるでしょうからね。ボイコットは伝家の宝刀ですが、なるべくなら抜きたくない。交渉材料として見せるだけにした方がいいのです。頑なな態度を取り続ければ、相撲を見れない相撲ファンからも反発を買いますし、協会のメンツも潰して上層部にアンチ・敵を作ってしまうでしょうからね。

■問題の本質、親方理事制―国籍要件は差別か?半分イエス
 さて、オチのために最後まで引っ張ってきた海外国籍の人間を親方にするのはどうか?というテーマを話して終わりたいと思います。
 確かに、日本国籍を持たないからと言って親方になれないのはおかしい。しかし、特殊公益法人である以上に、相撲というのは日本の国技ではないものの、特別な地位を占めるスポーツ・興行であり、歴史を持つ伝統芸能。である以上、日本国籍を持たない人間を協会に参画させないのは当然なのでは?力士・競技者としての参加まではギリギリの許容範囲であるが、それ以上譲歩はできないという協会の人間の感覚は正常の範囲にあるのでは?―そんな感想を持たれた方も少なからずいるはずです。その当然の疑問について応えたいと思います。
 白鵬帰化をせずに一代年寄として相撲協会に残りたいという報道、そしてその後帰化をして相撲協会に残る意向だという報道が過去にありました。この報道を受けて、日本国籍がなければ親方になれない。これは民族差別であり、訴えられれば相撲協会は敗訴するのではないか?という弁護士の方の指摘も見ました。実際に訴えた場合どうなるかはさておき、民族差別であると考える人は少なからずいることでしょう。果たしてどう見なすべきか?
 これについては、個人的に民族差別に値すると考えます。ただし、それは親方という職能においてのみです。親方という力士の育成及び部屋を経営するという役割であれば、そこに国籍を保有しているかどうかという条件は無関係なはずだからです。以前触れたように、日本(相撲)文化・伝統を理解しているかいないかという点がポイントになるのならば、それこそ全親方の理解度をテストして合格した者にのみ免許を発行するという免許制にすればいいだけですからね。
 親方においてのみ違反すると書いたとおり、理事という職能においては外国籍保持者を排除しても違反しないと考えます。理事というのは言うまでもなく経営参画者であり、意志決定の最高責任者の一人。特殊公益法人である特別な団体・相撲協会において、日本人以外のトップを入れていいかと言われれば、100%ノーとは言わないまでも、やはり海外国籍の経営者を参画させるのはまずいと判断されるのもやむなしでしょう。

■親方理事制を解消して、海外国籍力士の親方の道を開くべき。年寄株制度も見直し・廃止すべき
 親方理事制こそ問題の本質と始めの方で指摘したように、親方しか協会の人間になれない・兼職するというシステムを採用しているからこそこういう歪なことになるのです。親方と協会組織の人間・職員を分離すれば、このような国籍がないから相撲界に残れないという問題は起こりえないはずなのです。
 そもそも親方(理事)になるために、日本国籍保持者でなければならないという規定が出来た事自体がおかしいのです。伝統と言いつつ、日本人しかいなかった昔にそんな規定があったはずありません。外国人力士を受け入れて成績を残した高見山が出た辺りに作られたものでしょう。しかも今に至るまで元外国籍力士の理事がいないことを考えても、一体何のために作ったのかと言わざるをえない制度です。
 曙は年寄株が手に入らず廃業。武蔵丸横綱だったので5年間は年寄・武蔵丸で、その後年寄株の関係で振分・大島・武蔵川と名前を三度変えました。貴乃花一代年寄であったことと、貴乃花の乱を起こして実力で理事のポストを奪いとったという事情を考えても、同時期横綱だった武蔵丸武蔵川親方が未だに理事になれていないのには違和感があります。本人にその意志があるない別として、本当に元外国籍力士が帰化しても理事になれるのか、理事にする意志があるのか疑問に感じます*6
 そもそもこんな規定を作らずとも、はじめから親方理事制を廃止して、親方は親方・理事は理事というふうに職能を分ければよかったのです。
 それをしなかった、できなかったのは、親方年寄株という制度故でしょう。厳密に言うと協会に残るためには国籍と年寄株が必要になります。年寄株保有しなければ日本人でも親方として協会に残ることが出来ないというシステムを採用するからこういう問題になっている。そういうシステムはおかしい!なくすべきだ!とこれまで誰も言ってこなかった。無論誰かしら言ってはいたのでしょうけど、そういう改革を実行しようとしなかった。その時点で相撲協会の成員だけで何の改革も出来るはずがないとわかるのです。昔は寿命が短かったから年寄株が足りないということがなかったという背景一つ見ても、まるで時代の変化について行けてないですからね。

帰化一代年寄白鵬の誕生=理事長白鵬の誕生。白鵬改革でしか相撲界は変われないという日本の恥
 白鵬は間違いなく一代年寄として残って相撲協会を変える方向に進んでいくでしょう。国籍さえクリアすればレジェンド白鵬の協会入りを阻む条件はありませんからね。で、そもそもの話になりますが、前述通り親方=理事であることを廃止してさえしまえば、白鵬が国籍を代えてまで相撲協会に残る必要性はありません。モンゴル人のまま一代年寄を認め、白鵬親方として白鵬部屋の経営をすることを認めてやればよかったわけです。
 白鵬は父の意向で、また将来のモンゴルでのビジネスチャンスや大統領の可能性もあって、国籍を代えたくなかったのですからね。白鵬帰化をするということは、実績を考えれば間違いなく、初の元海外出身理事の誕生&初の元海外出身理事長の誕生ということになる(そうならなければそれこそ今度こそ間違いなく差別ということで大問題になるでしょう)。
 そして相撲界にとって重要な、かつ決定的な改革が「日本人」以外の手によってなされることになるでしょう。本来日本人がすべきことを元モンゴル人が行う。日本人の無能さ・改革能力の欠如を世界に発信するというこれ以上ない恥さらしになるでしょう。

一代年寄白鵬をすぐに認めていれば、白鵬は理事長にはならなかったし、なれなかったはず
 そもそも白鵬・モンゴル人嫌いの人々にとっては、この理事長白鵬を阻みたいはず。白鵬を封じ込めるためにも一代年寄自体には国籍規定がなかったのですから、特例としてさっさと認めればよかった。モンゴルでの道と、協会での理事長の道という二つの選択肢があれば、白鵬はどちらか一つに絞らずモンゴルと相撲の二刀流を選んだはず。そういう中途半端な状況であれば、理事の道を選ぶのを出来る限り伸ばして帰化を先送りにする。その結果、武蔵川親方のように理事になるまでに時間がかかってしまって、キャリア不足で理事長になれないという可能性も出てくるわけです。
 特例が嫌なら親方理事制の廃止でも良い。国籍は将来的な変更でも可とすることにして、親方理事制を廃止してしまえば、モンゴル国籍の白鵬は親方止まりで理事にすらなることが出来ないのですから尚更です。反白鵬派・反モンゴル派はなぜそうしなかったのか?まるで理解できません。白鵬派・嫌白鵬派であるからこそ、白鵬一代年寄に祭り上げて白鵬を封じ込めるというのが最上の選択肢であったはず。何故そうしなかったのか、これが本当にわからない。
 年寄株の関係もあって、親方理事制が一朝一夕に廃止できないとしたら、一代年寄を認める代わりに二枚鑑札として現役力士でありながら部屋の親方となって弟子の育成を認める。ただし日本国籍のないものは理事にはなれないと規定を改めればいい。そういうことをしようという動きもなかった。

■現執行部・及び予備群には時代の変化に対応して政策を打ち出す能力自体がない
 つまり、根本的に将来起こりうる出来事を予想して、それに対して自分たちで有効な手を打つ・変化に対する改革をするとかそういう基本的なことがそもそも出来ないのでしょうね。現実の相撲と同じ、「変化は良くない」という言葉でごまかすのでしょうね。外国人力士の受け入れなど全部なし崩し、そういうことが起こったから、まあしょうがないかくらいの感じに思えます。一度そうなったら、以後どういう風に相撲界が変化していくかを考えられないようです。力士の大型化による相撲内容の劣化・つまらない押し相撲ばかりといった昨今の土俵を見れば一目瞭然ですね。
 そもそも世界中から力士を受け入れれば、日本人が少数になることすら予測できたでしょう。その対策が各部屋一人までという人員制限ですからね。プロ野球の1チーム4人までじゃないんですから…。チームスポーツでもないのに何でしょうか、その変な制限は…。
 貴乃花親方が主張するモンゴル互助会による八百長なんて言う主張も、その最たるもので、特定の国・出身者が増えれば、その派閥からお互い有利なように星の回し合いを進めていくのは当たり前ではないですか。ご本人は兄の横綱昇進がかかった一番で手を抜いたことを非常に悔いているらしいですけど、あの一番で手を抜いたことを責める人は殆どいないでしょう。兄が、自分の所属する部屋から横綱が出るという背景があって、本気を出して勝ちに行く力士がいると考えるほうがおかしい。自分が負けることで身内・仲間の利益となって、自分自身の派閥も得をするという制度・ルールを採用したらそうなるに決まってます。
 そういうことが実際に起こりうるにも関わらず、システム・ルールを改善しなければ「不正」していいですよ、ご自由にどうぞと言っているのと同じ。そういうことをするな!卑怯だ!なんて主張するほうがおかしい。モンゴル人力士だけが急激に増えてしまえばそういうことが起こりうるのが当たり前。彼らが異人として排除・不利益を被っているのなら尚当たり前、それに応じてそういうことが出来ないシステムに改めないで、文句を言う方がおかしい。相撲という勝負が一見しただけで手を抜いているかどうかわかりにくく、格下が格上に勝ちやすい競技であるのならば尚更です。
 一部屋1人までなんていう縛りを設けているからおかしいのです。一定数を超えれば、それを緩めてそれこそ白鵬部屋を作って、強制的にモンゴル人力士を集めるようにする。モンゴル人しかいないモンゴル部屋を作ればいいだけの話。言うまでもなく同じ部屋の力士は本場所で対戦しないのですから。そうすればモンゴル人内部で星の回し合いなど絶対不可能になります。疑わしいというのならそう主張すればいいのです。
 そもそもかつて貴乃花親方が所属していた二子山部屋藤島部屋では貴乃花若乃花貴ノ浪貴闘力安芸乃島といった横綱大関・関脇という上位層の力士がひしめき合っていました。彼らが星の回し合いをしないガチンコ力士・ガチンコ部屋だったとしても、この部屋に所属する力士は上位の強豪力士4人と当たらなくていいという恩恵をうけることになる。これは果たしてフェアといえるのか?単純計算で他の部屋の力士が15日間上位力士と当たるのに対し、彼らは他4名と当たらないのですから11日間で済む。残りの4日は相対的に弱い力士との対戦が組まれることになる。これはルールを利用した八百長・不正と言えないのか?横綱大関が同一部屋から複数出たら強制的に移籍する制度が何故存在しないのか?
 また、自分の部屋の力士が優勝するのと他の部屋の力士が優勝するのどちらが嬉しいか?人情として自分の部屋の力士が勝つように終盤戦うでしょう。それはいいのか?ルール上もちろん許されたことですが、それはフェアな競争と言えるでしょうか?そういうことも含めて議論されてこなかったのがおかしいのです。
 本番直前まで割を発表しない。誰と当たるかわからないようにするということでも八百長を防ぐことは可能でしょうね。何時、何番目頃に取り組みがあるぞという大体の時間だけで誰とやるかは教えないとかもありうるでしょう。そういうシステムなら直前まで取り組みがわからない以上、同じ部屋での星の回し合いも成立しづらくなるので、同部屋対決を組むことも可能になるでしょう。
 話が少しそれましたが要するに対策はいくらでも取りうるし、抜本的な改革案はいくらでもあるのです。そういう根本的な背景を改める取り組みをせずして、~をするな!~がおかしい!などとモンゴル勢に文句をつけること自体がおかしいのです。
 今度こそ貴乃花論を語ってラストにしたい…。でもメディアこそ本当の犯人みたいなのも書きたいし…。次で終わるのか…→続く。

 ※おまけ、ギルド制・徒弟制の解体によって閉鎖的・陰湿的な体罰・暴力事件はなくせても、それに伴う別の問題が発生します。徒弟制がなくなるということは身内の結束・鉄の規律のようなものが消えることを意味します。常識のない弟子の歯止め・躾という名のストッパーがなくなりますので、人間的に屑なタイプの力士が起こす不祥事・事件や犯罪は増えるでしょう。良い悪いは置いといて、体罰・体育会的な上下関係の崩壊は、こういう程度の低い人間に対する抑圧機能をもなくすことを意味します。規律を緩め、それに伴う力士が問題を起こしやすくなる。マナーが悪くなることもまた抑えておく必要があるでしょうね。
 親方・兄弟子による部屋内部での暴行はなくなった、しかし親方や兄弟子の監視の目がなくなり、お互いまるで干渉しなくなった結果、ふしだらな弟子がトンデモナイ迷惑をかけることになるのは想像するに難くないでしょうね。その場合、やはりすぐに警察に引き渡すという手しか残されていないので、結果力士の不祥事は比較にならないほど増えるでしょう。人格ではなく力士≒アスリートとしての素質で弟子を取るのですからね。運動能力は異常にあるのにもかかわらず、人格がクソでトラブルを異常に起こすという手合いはスポーツ界で枚挙にいとまがないですからね。
 協会に出来ることは不祥事隠し以外には、特別な機関設立による力士の日常を監視。逐一怪しい行動を報告すること。むしろ率先して身内の犯罪を垂れ込むことにほかならないです。協会が自ら身内の犯罪報告をした時、その時にきちんと力士の犯罪を可視化出来るようになったと喜ぶのが正常な反応。そのときに正常な反応のまま報道されるのであれば良いのですが…。また角界で不祥事が~みたいなバカな反応が起こらないか今から心配になりますね。今回の暴力事件の本質に、メディアの問題もじつはあるんですよね…。これも書かなくちゃいけなくなってもううんざりしてます(´-ω-`)。書いても書いても終わらない…。

アイキャッチ用画像

*1:※参照―モンゴル八百長告発の裏に、貴乃花親方周辺からのリーク|LITERA

*2:※参照―貴乃花親方が巡業部長に 2年後の理事長戦見据えた布石か│NEWSポストセブン

*3:調べきれなかったので、流石に初めてではない可能性は十分あります。しかしそれをおいても今年また改善提案・要望書を出すなど継続して動いているので、その画期的な姿勢、偉大なことをやっていることにおいて変わりはありません

*4:協会から各部屋に誓約書の提出が命じられ、それに貴乃花部屋だけが最後まで提出しなかった。提出を拒んだという事件がありました。肖像権=部屋に所属する力士の収入が一旦協会に入るのが嫌だった。というか現役時代人気力士だった貴乃花自身の肖像権・権利を手放したくないからゴネていたんだろうと思っていましたが、そこには力士の待遇について譲れない項目があったことだと思えます。というのは、親方が力士を雇うという従来の構造ではなく、協会が雇ったのち改めて親方に育成を委託するという構造に変わったこと。その一点が彼には絶対に譲れなかったのでしょう。親方・師匠=力士・弟子のパワーバランスを崩されることを嫌ったのでしょう。これが単なる個人的推測にとどまらないのは、次回書く貴乃花部屋のトラブル云々で詳述したいと思います

*5:暴行事件は些細な問題ではない!という一般人・社会の感覚はここでは問題ではありません、角界の慣習から言うと揉め事は大事にはしないものなのですからね。また今回の事件を大事にすべきかどうかという点はかなり疑問が残る話です。それはまた次回に詳述。

*6:日常会話においては問題のないレベルで日本語を操れるが、読み書きができない。故に高見山武蔵丸も文書を取り扱う仕事に熱心でない・やりたがらないという可能性ももちろんありえますけどね

日馬富士暴行事件の解説③ 白鵬憎し!白鵬が悪い!という異様な言説 <後編>

 

   というわけで続きの後編です。見直して気づきましたけど、やっぱ断片的に書いているからシリーズ全体としてのまとまりがいまいちですね。いつかまたまとめ直そうかな。横綱の品格で書いた文章とか他のパートで書いたものと被ってるんですよね。それでまとめ直したほうが文書のつながりや読みやすさの上でいいかな~と迷ってます。パート②とパート③の前編をあわせたほうが読みやすそうですし…。ぐぬぬ

 

要約・お品書き
本文は以下の三部構造になってます。①日馬富士の暴行は八百長・「注射」を拒否した故のモンゴル互助会の制裁ではない。そう考えられる4つの理由。②白鵬が黒幕である、白鵬を裁けという常軌を逸した愚論・珍論への警鐘③その他「横綱の品格」などを持ち出して白鵬を批判することへの妥当性について
(一部)
日馬富士貴ノ岩の暴行は感情の暴走。モンゴル互助会による星の回し合いを拒否したからではない。
○制裁は巧妙に行われるもの。まして日馬富士という横綱・高位の地位にある者が手を下すわけがない 
○制裁なら参加人数が少なすぎるし、他の先輩ガチンコ力士は何故制裁を受けていないのか?
○空気が読めない貴ノ岩
(二部)
白鵬が首謀した、白鵬が黒幕だという妄説・珍説。
○「共謀」という論理が大手を振ってまかり通る社会の劣化。教育の崩壊
(三部)
白鵬日馬富士を止めるのはリスクが有る 
横綱の品格を以って横綱を語るものはそもそもわかっていない。殴られない所から一方的に他者を殴るクズ
横綱審議委員会にそもそも品格・資格がない。
横綱の品格は永久に不変なものではない。角界の今と同じく現代にふさわしいヴィジョンをまず考えるべき
○優等生白鵬は何故素行が悪くなったか?どれだけ忠誠を尽くしても見返りがないから

本分、後編は三部の白鵬批判です。興味を持たれた方は前編をご覧になってください。
  
白鵬が暴れる日馬富士を止めるべきだった説は妥当ではない
 白鵬日馬富士を止めるべきだったという意見もありました。これは一概にそうとも言いきれない要素があます。もっと巧く止めるべきだったというのならそのとおりですが、白鵬がすぐに止めるべきだったとは言えない事態でした。*1
 前回書いたとおり、日馬富士貴ノ岩の無礼な態度にスイッチが入ってしまった、アドレナリンが大量分泌されて超興奮状態にある。のぼせ上がった状態。そんな状態の彼を止めようとしたら、「うるさい、バカ!邪魔するな!」と反撃される可能性がある。そうなったら、前代未聞の現役横綱同士の私闘ということになってしまう。そうなれば今回の事件の比でない一大スキャンダルになったでしょう。その最悪の可能性を考えれば、日馬富士の興奮が収まるまでしばらく発散させてピークが過ぎて、少し落ち着いた時に止めに入るというのが正解。白鵬が数発~十発叩いたあと、止めに入る。暫く様子見して息が切れたあと、一息ついたあと、彼を外に連れ出したというのなら、それはそれで正しい判断だったといえるでしょう。
 本当なら白鵬は「横綱が手を出してはダメだ」と止めるべきで、それを「うるさい!」とでも振り払って聞き入れなかったなら、貴ノ岩との間に入って手を出さずに攻撃を代わりに食らうべきでした。そして「貴ノ岩!いいから外せ、逃げろ!」とその場から退出させる。そうして場を収める。本来ならこれが取るべきベストな行動だったでしょう。
 しかし、可愛い後輩ならともかく、どうでもいい生意気なバカ野郎ですから、様子見をしてからという手段を取ったということでしょうね。単純にご飯食べたあとで、しかも酒が入っていて、そういうコンディションじゃなかっただけかもしれませんが。
 前回述べたように、格闘家である以上こういった酒席のトラブルはあり得る出来事ですから、もうちょっと上手い対処法を制度として考えておくべきでしょう。貴乃花親方が一般人を巻き込んでいたらどうしたんだと言ってましたが、まず謝るべきはその大暴れしたお店のオーナーに対してでしょう。ちゃんと謝りに行かないといけませんよね。迷惑をかけた第三者にきっちり詫びを入れに行くことのほうが重要だと思うのですけどね。そのような話は全く聞きませんね。

 白鵬憎しのあまり、おかしなことを言う輩があまりにも多いため、こんな当たり前のことをわざわざ解説しました。とにかくあらゆる責任を白鵬に取らせようという、無理矢理な論理が目につきます。横綱はなんでもこなせるスーパーマンだという前提であらゆることが出来るはずだというロジックがありますね、丸山真男だったか、山本七平だったか忘れましたか、「無限責任」をもった存在であるかのように扱いすぎだと思います。

横綱の品格を持ち出して白鵬を批判するおかしさ
 とにかくなんでもかんでも白鵬の言動について注文をつける物が多すぎます。ですので白鵬への非難についてコメントをします。千秋楽での万歳三唱について。この行動が横綱の品格上好ましくないという意見が見られました。
 茂木健一郎氏が、過去にこのような時に横綱の品格を持ち出す人間が私は苦手だとコメントしていましたが、そもそも「横綱の品格」とはなんなのでしょうか?横綱とは~というもので、だからこそ横綱は~という言動をとらなくてはならない。これが横綱の品格である―という納得できるロジック・主張を聞いたことがありません。

■万歳三唱は素晴らしいファンサービス
 伝統美だから勝ち負けで感情を表してはならないという意見がありました。勝ち負けについて感情を発露するのは礼節に欠ける行為であり、見苦しいことだから慎むべきだというのは良いでしょう。この点については同意見です。がしかし、優勝インタビューで、万歳をすることは勝ち誇ることであり、許されないということは違う。だったら優勝インタビューなどそもそもする必要がない。相撲には神事の側面・要素があると同時に、格闘技・興行という要素がある。優勝インタビューという場面では興行という要素を重視してファンサービスをすることはむしろ好ましいことです。
 マツコ・デラックス氏が、あの場面で、不祥事について何もコメントせずに済ますより、お客さんが喜んでくれるように万歳したのは良かったと思うとおっしゃってましたが、まさにそのとおりですね。万歳が正解か大正解か、他にもっとベスト手段があったのでは?という話はさておき、見に来てくれたお客さんに対するコメントとして、配慮・サービスとしてふさわしかった。何の問題もない、むしろきっちり横綱の務めを果たしたと言うべきでしょう。

 白鵬前人未到の40回優勝という偉業を成し遂げた。史上初の偉業にふさわしい晴れがましいことをするという論理。その場にいたお客さんも歴史的瞬間に立ち会えたということで喜んでいたはずですからね。そして、不祥事があって、双方とももう一度土俵に上がることを許してもらいたい。水に流して再出発させてあげて欲しいということをお願いした。不祥事で揺れるなか、お客さんたちに日馬富士貴ノ岩、そして他の力士や角界全体をこれまで通り変わらず支えて欲しいという要請・お願い。そのために万歳をお願いするという論理はおかしなことでも何でもない。この件で白鵬を叩く人というのは、因縁、難癖つけ以外の何物でもないでしょう。

横綱の品格を問える品格を持ったものだけが白鵬に石を投げよ
 誰が、何を発言したか―という文脈の問題という要素もあるかもしれませんが、白鵬があの場面で万歳三唱することくらいで品格云々論じるのは異常だといえるでしょう。そもそも横綱の品格を言う人間は、品格を持った立派な人物なのでしょうか?横綱審議委員会というものがありますが、横綱に品格を問えるほどの品格通or品格を持った人物達なのでしょうか?
 そしてそもそもなんですが、横綱審議委員会が無理やり横綱に選びだした稀勢の里は、今場所もまた休場しました。稀勢の里を基準をクリアしているか言えないかの微妙なラインで横綱に昇格させてしまえば、次の場所で無理をしてしまう可能性がある。現に怪我を押しての出場&優勝で横綱に選んでよかったと思ったその直後、連続休場。結局アヤがつく昇進をさせてしまったことでこのような事態を招いてしまった。こういうことを予想できなかった横綱審議委員会に品格があるといえるのでしょうか?品格はともかく横綱審議委員会としてのふさわしい見識=委員としての資格がある人物は一人もないといえるでしょうね。

■品格を持った横綱は過去の遺物、そもそも現代の価値観にそぐわない
 大横綱双葉山でさえ、璽光尊事件という新興宗教にハマって警官相手に大立ち回りをした過去を持つ。常陸山梅ヶ谷といった時代であれば、横綱の品格を持った立派な人物、品格を持った横綱がいたかもしれませんが、少なくとも現代では、横綱の品格を十全に兼ね備えた力士を見たことがある人間などいないでしょう*2

 品格をもった横綱などとうの昔にいなくなっている。というか前近代的な時代にモデルとされた横綱、及びその品格というのは、どう考えても現代的な価値観にそぐわない。そういう過去の理想像を現代に当てはめるのは無理がある。

横綱に品格を求めるくせに、自分の行いを改めない卑怯さ
 また、横綱の品格を持ち出す時、一番嫌悪感を抱くのは、横綱という角界の顔・力士のリーダーと呼べるものに対し、「組織の言いなりになれ」「おれの求める理想像を体現しろ」という傲慢な主張を平気ですることです。組織の不利益・都合の悪いことを全部一身に引き受けよ。ただし、おれは何もしない。横綱の品格を主張する輩というのはそういうことを主張しているという自覚があまりにもなさすぎる*3

 過去記事で言及したことがありましたが、かつて、武田鉄矢氏が大鵬の事例を持ち出して、行事が差し違えて大鵬の連勝記録をストップさせてしまった時、「そもそも横綱というのは互角の攻防などしてはいけない、ギリギリの勝利などあってはならないのだ」と大鵬が述べたという美談を持ち出して白鵬の態度を批判してことがありました。しかし、それは大鵬の偉大さに甘えることであって、大鵬の器量を褒めることはいいにせよ、我々がそれに甘えっぱなしではいけない。二度とそういうことを起こさないように我々は態度を改めなくてはいけない。
 横綱の品格という論理を持ち出す際、横綱の偉大な精神性を求めるのであれば、我々はそれに応じて偉大な横綱に対する同等の礼節を取らなくてはならない、行動をしなければならない。にもかかわらず、横綱にのみその度量の大きさや、過失の責任を押し付けて自分のことは知らんぷりするという卑怯な手合があまりにも多すぎる。
 であるからこそ、個人的に横綱の品格という論理を持ち出す人間は、卑怯な輩と認定して一顧だにせず無視します。現代の横綱白鵬が仮に品格のかけらもない卑怯で邪悪な横綱だとするのならば、それは横綱の品格を守るために、横綱を育ててこなかった現代人の精神性の低さの現れなのです。そういう論理を認識しないで横綱の品格を持ち出す輩こそ卑怯極まりない醜い存在だと個人的に考えます。

白鵬はなぜ好ましくない相撲を取るようになったのか?モンゴル国籍のまま一代年寄になれないから
 さて、こういうことを論じていると、これまでの論理もあって、白鵬支持であり、貴乃花否定派と捉える方も多いでしょう。まあその要素を否定はしないのですが、それだと片手落ちに思われるので、最近の白鵬の汚い相撲についてもコメントしたいと思います。

 最近*4白鵬の取り組み、変化・猫騙しに、挙句の果てにはエルボーと、横綱としての魅力のかけらもない醜さが目立っているといえるでしょう。今場所では立会不成立をPRするという有様ですからね*5
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 一体なぜこんなことになってしまったのか?それは白鵬一代年寄を協会サイドが認めないからですね。先代理事長の北の湖も、次期理事長候補の貴乃花白鵬日本国籍なき一代年寄を認めようとしなかった。故に白鵬は協会に従わなくなったのですね。これまで何度も語ってきましたが、白鵬朝青龍と違って、品行方正なタイプだった。郷に入りては郷に従えというか、元々出自・毛並みが良いので問題を起こすタイプではなかった、優等生タイプだったのでしょうね。だからこそ上の言うことにハイハイ従っていた。しかしどこまでもルールやマナーを守っていても、偉大な記録を打ち立てても、特例が認められないわけですね。他の外国人力士親方を見ていても、日本人力士と平等であるとは言い難い。日本人力士と外国人力士では見えない壁がある。じゃあ、もう自分の好きなことを好き放題やろうとなるのも当然でしょうね。白鵬にとって何のインセンティブもないわけですから、かくあるべきルール・マナーに従う必要性を感じないのも当然でしょう。マナーが悪ければ、白鵬の首に鈴をつけて飼いならす意味で懐柔策が取られる可能性が僅かでもあるのならば、尚更ですね。そもそも将来協会に残る可能性がない海外籍力士にとって、日本のルールを守ろうというインセンティブが働くはずがないんです。メリットや特典がないのに義務だけ課してもそれが守られないのはやむなきことでしょう。
 そもそも白鵬が礼節を守らなくなったというよりも、朝青龍のように横綱を品格という棍棒でとにかくぶん殴りたぐる傾向があった。妖怪品格ジジババ共が、モンゴル人を見下して品格棍棒を振り回す傾向があった。朝青龍という避雷針が消えた結果、今度は白鵬に対しても品格棍棒が振り下ろされることになっただけかもしれません。別枠で後述するように「物言う横綱白鵬にたいしては注目が集まりやすいものですが、精神性・根源に「たかが一力士が」「伝統という文明をわきまえない野蛮なモンゴル人」がというものがあるのもそうなのですけどね。

日本国籍よりも横綱にふさわしい資格を証明するテスト制度を採用せよ
 日本国籍というよりも、神事・伝統芸能としての横綱を求めるというのならば、それこそ宗教としての神道の理解度や行事の作法を完璧にこなせるかという点だったり、伝統の歴史などの知識をちゃんと知っているかどうか、そういう点こそテストされるべきだと思うのですけどね。横綱審議委員会についてもそう、親方・理事についてもそう。その資格があるかどうかテスト・免許制度を導入すればいい。そういう厳格な審査をパスしたものだけが白鵬横綱を批判すべきでしょう。まあ、そんな当たり前の話が通じる組織ではないので今更ですけどね。

 日本相撲協会(特に執行部)としては自分たちの方針に従わない貴乃花親方・理事、つまり貴乃花問題に引き続いて、横綱白鵬問題という二つの難問を抱えることになったといえるでしょうね。さあ、相撲協会は困った、大変だ。ということで次回に続きたいと思います。貴乃花改革はありえない、あったとしても必ず失敗するという話をしたかったのですが、白鵬の話で終わってしまいました…。あまりにも難癖をつける異様な意見が多すぎですね…。(ちょろっと先の話を書いておくと、相撲協会としては貴乃花白鵬、どちらを御しやすいかといわれるとまだ白鵬のほうが御しやすいわけですね。話・駆け引きが通じますから。しかし貴乃花親方はそうではない。こちらの常識が通じず・意思疎通が出来ない、会話が成立しない。そういう点では白鵬のほうが優位にあるかもしれません)

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*1:※追記、これについては協会への誓約書というものがあって、暴行死ない&暴行の場面にあった場合止める義務というものが各力士たちにあったようです。横綱に特別な責任があるという面があり、その点では白鵬鶴竜には暴行を止める義務が確かに存在していますね。それはそれとしてまた別の要素・一面があるということで以下の文章を読んでいただければ幸いです

*2:大鵬はそうだったかな?と気になって、あとで検索かけたら柏戸とともに拳銃を所有していたという事件もありましたね。品格なんてあやふやなもので、完全無欠な横綱なんてまずいないということです。そしてポイントなのはその拳銃所持くらいで特に世間は騒ぎ立てることもしなかったということ。何かあったらひたすら糾弾しようというのは自己批判の変種にしか見えません。ロシアや中国式自己批判文化がいつの間にか定着してしまったのでしょうか…

*3:これで連想するのはドラえもんですね。横綱をなんでも願いを叶えてくれるドラえもんか何かと勘違いしていると思います。ドラえもんの最終回とされた話で、未来に帰るドラえもんのために「僕が勝たなきゃ、ドラえもんが…ドラえもんが安心して帰れないんだ!」と身を挺して戦ったといういい話がありましたが、果たして品格を主張する輩にのび太のように行動した人が一人でもいるのでしょうか?

*4:とするとスパン的に不適切か?直近の相撲、全て横綱足り得ない取り組みになっているわけでもなく、かなり前の時期に相応しくない立ち会いもあったりするので

*5:まあそれはそれとして、依然として相撲の巧さ・強さは際立っているのですけどね。せっかくなので今場所の取り組みをチェックしてきましたが、張り差しなどどうかな?と思うものや、足をかけるなど、個人的に「?」と思うところはあれど、やはり他の力士と比較して飛び抜けた内容のある取り組みだったことは間違いないでしょう。唯一怪しかったのは、逸ノ城との取り組みくらいでしょうか。かちあげのような腕の遣い方をするということは、立ち会いの圧力などが弱まっているということなのかもしれませんね。

*6:張り差し・かちあげは美しくないだとか、横綱の品格に反するといった何か勘違いしたことを言っているお馬鹿さんがいたので追記しておきますが、そもそもなんですけど、なんで張り差し・かちあげが美しくないとされるかと言えば、奇策というか正攻法ではないんですよ、張り差しやかちあげという立ち合いは。
 若乃花が「張り差し・かちあげは脇が空くからそこをつけばいいから、却ってやりやすい」というコメントを出していたように、強い方がああいう手に出てくれるということはありがたいんですよ、実力のない下位の力士にとっては。むしろ勝率が上がるラッキーな話。そういう下手な立ち合いをやっている白鵬に勝てない今の力士の立ち合いの下手くそさを同時に指摘すべきでしょう。横綱相撲という言葉があるように、横綱・強い力士というのは立ち合いで相手を受けるんですね。圧倒的な実力差があるから、相手を見て立って受け止めるような形になっても不利にならない。それどころかそれが却って有利に作用するという技術を持っているわけですね。双葉山の「後の先」何かがまさにそれですね。
 まあ、じゃあなんで、白鵬も後の先やらないの?という話になるんですけど、「品格なんかクソくらえ!なんでお前らなんかの言うことなんか聞かなきゃならないんだ!」と敢えて反発している説と、後の先に必要な「柔綿体」が出来ていないこと。強い力士というのは体を布団のように柔らかく使える。ぶつかった瞬間、柔らかい布団に跳ね返されるような感覚になるんですね、大鵬関と立ち合いでぶつかった力士はそういうコメントを出していました。それが今の白鵬には出来なくなっている説。
 おそらく前者も多少はあるんでしょうけど、後者が理由でしょうね。立ち合いでぶつかることは体に物凄い負担がかかりますから、それを最小限に抑えたい故に=少しでも長く現役を続けるために、「美しくない相撲」に拘っているのでしょう。白鵬に美しくないから張り差し・かちあげやめろというのなら、「お前の体のことなんか知らない。どうでもいい。力士としていつ壊れてもいいから真正面からぶつかれ」と言っている畜生と同じだということを少しは自覚していただきたいですね。