議会の崩壊を機に憲政の常道再建を

　議会における討論とは、多数派の意見から少数派が一定の譲歩を勝ち取るものであるといえる。譲歩でなくとも、修正でもいい。少数派は修正を目標としないと多数派に押し切られるのだから、必ずどこかで折り合いを付けないといけない。少数派、野党の仕事というのは妥協することだといえる。

　55年体制では、少数派の野党・社会党などはかなりの議席を持っていた。議事進行・政策実現を妨害する程度の数はあった。そこで与党から妥協を引き出すことが可能だった。 「強行採決」というのは多数派が合意形成プロセスを怠った、野党を無視したことの表現だが、基本的に外国語には翻訳できないらしい。

　諸外国ではこのゲームの力学を双方が熟知し、妥協が成立するのが普通だから。少数派も多数派も不毛な対立を避ける慣習が根付いているわけだ。野党の審議拒否という馬鹿げた慣習、憲政の常道に反したものなどあるわけがないし、双方が国家のために大局的見地に立って判断を下すのが当たり前(無論、政局による政争は常にどこでもあるだろうけど)。

　野党がきっちり対案やら妥協に応じられる修正案を出してくるということですね。みんなとか維新とかそこら辺の政党がきっちり審議に応じた上で対応を云々かんぬんしたという点では、一応国会運営が一歩前進したといえるでしょうね。野党は国会において修正など是々非々で、与党の問題点をPRし自分達の主義主張が正しいことを時々の国会での自由討論において有権者に訴え、選挙で与党になることを目指すのですから、当然です。

　議会での自由討論で、野党の主張が「お、この政党はきっちりチェックしているな、与党が失敗した政策をちゃんと国会でその問題点を事前に述べていた。次はこの野党に政権を担わせよう」というふうにならない限り、議会政治は成り立たないということですね。

　また野党は、「これは重要な問題であり、どうしても譲れない！」という時には、「選挙で民意を問うべきだ！」という選択を迫る事が出来る。重要な案件であればあるほどこれを無視してはならない。また当然与野党は選挙の後、選挙結果を踏まえて合意形成をしなくてはならない。選挙結果を踏みにじって、合意形成に難癖をつけてはならない。選挙後にも問題があると言えるでしょうね。

　 まあ、言うまでもなくそういう大事な合意形成・妥協を怠ったという点で野党に大きな罪がありますよね。「とにかく何でも反対」に代表されるように建設的な議論が出来たというケースをあんまり聞きませんからね。そういう姿勢が野党の声なんか無視して構わないという現政権の姿勢の一要因とも言えますしね。

　当然、それで与党の軽率な議会運営が正当化されるはずもなく、憲政の常道に則った議会運営をしなくてはならないわけで。要するに冷戦終わったんだから、与野党とも、いい加減「正しい議会政治とは何か」と見つめなおして、ちゃんとやれよって話ですね。

　菅直人が「熟議の～」と散々言ってたけど、今はどうなんですかね？与野党の不毛な対立は避けるべきだ！と今こそやるべき時だと思うのですが、ちゃんとやってるんでしょうか？だとしたらその点はキッチリ評価したいと思うのですけどね。与党・総理の時だけ都合のいいことを言うのは勘弁ですよね。

　それと当然、議会運営・憲政の常道についてこれが正しい＆間違っているってきっちり報道がジャッジしないと、普通の人はそんなこと知りませんからね。ちゃんと報道しないメディアの責任は与野党の不毛な対立に加えて責任重大でしょうね。国会の内容をもっときっちり国民に伝えないといけません。

　今回、議会で多数派が強行的な採決をしましたが、それにより以後慣習として、強行的な運営が当たり前のようになっていくとしたら、少数派の拒否権が強く保障された55年体制が終わるということかもしれません。

　議会政治の根幹の一つとして少数派の意見を大事にする、無下にしないというものがありますが、それは多数派が合意を形成しないで強硬採決した場合、国民の目が厳しくなって次の選挙で危うくなるからなんですよね。今そうなってないという事は余程少数政党の言ってることに理がないと思われているのでしょうね。これを機に野党がちゃんとした政党政治下の政党になること、合意形成を重視すること、それによって国民から次はこっちの野党に入れようと思われるようになることですね。

　また与党がそれに応じてしっかりと議会運営を守ること。―このように憲政の常道が確立・再建されていくといいのですけどね…。そうでなければもうむちゃくちゃになりますからね、日本の政治は。まあ今現在十分めちゃくちゃなんで、今以上にさらによりひどくなるということですが。

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