てくてく とことこ

15/12/18にアメブロから引っ越してきました。書評・時事ネタ(政治・社会問題)で書いていく予定です。左でも右でもなくド真ん中を行く極中主義者です。基本長いので長文が無理な方はお気をつけを

外国人にワサビたっぷりの寿司を出した話

 大阪の寿司屋で外国人の客がワサビを大量に入れられるという事件が話題になりました。ワサビを多めに入れられて、その反応を従業員が楽しそうに見ていたとか。そういう話は昔からあるようで、つい最近始まった悪習ではなく、寿司業界に広く見られるとのこと。 *1

 なんでしょうね?高級寿司店では外国人が来ると「てめえらのような味の分からないやつら」が来るんじゃねぇ!とばかりにワサビを大量に入れるという不文律というか文化があるんでしょうかね?

 そういえば小林よしのりが銀座に中国人来るな目障りだとか言っていましたけど(※昔記事にしていたので覚えていました小林よしのり、中国人観光客は目障り発言について)、寿司が高級文化時代の特権意識を未だにもってるというのがあったりするんでしょうか?

 良い悪いの価値判断はおいといて、銀座のような高級寿司店だったら、「味もわからないくせにこんな高い店に来やがって!!」となってこういうことになるのはわかりますが、そういう高級店でもないのにこういうことをやるんですかね?

 大阪のミナミですか…。土地柄外国人が多くて、日本人というか、その土地周辺の人達的に外国人に迷惑している。ヘイトが高まっている。そういう背景があったりするのでしょうかね?

 たむけん氏が「ワサビもタダじゃない。嫌がらせではないだろう」と言ってたらしいです。それについて、ツイートで次のような指摘がありました。昔学生が寿司屋で寿司を食いに行ったら「学生のくせに生意気だ」とどこかのジャイアンみたいに、ワサビを大量に入れられたという体験談から、たむけん氏の意見を否定するものを見ました。昔っから好ましくない客にワサビを入れるという悪習が存在するのは間違いないんでしょうね。

 ただ、そういう事例をひいて、タダでないワサビをわざわざ仕込んで、非日本人の評判を悪くして、それで売上を減らすことになってでも嫌がらせをしたいんだ―とたむけん氏の主張を逆手に取って見る意見があったのですけど、そこまで言い切っていい話なんでしょうかね…?寿司屋にそういう歪な文化があるにしても、そこまで言い切れるのかしら?大阪のそのミナミの土地柄を知らないのでなんとも言えませんけどね。

 当の会社の公式で「1年前から外国人に対してリクエストが多いのでわさびを盛って出していた。」という声明があったようで、その通り外国人というか特定の国だとワサビを大量に入れて欲しいというのは珍しくないようですね。韓国系・中国系の人はもっと入れてという要望もあることは確かだとか。

 そうすると微妙な話になりますよね…。ヘイトである・ヘイトでないと言い切るのは難しい話という気がしますね。セーフともアウトとも判断しづらい、現地の事情に詳しくないとどっちかには判断できないかと思います。また、そこら辺に詳しくても、この店だけが問題なのか、それとも大阪一帯にこういう空気が蔓延しているのかというのはまた別ですからね。そこを詳しく知りたいですね。

 雑な店だとか、外国人の人はワサビの分量が多くないと満足しないとか、色々あるようですけど、こうなったら問題解決のためには、ワサビを別の器においといて、勝手に本人がつけるようにでもしないとダメかもしれませんね。

 高級寿司店ならともかく、チェーン店だと、大量に客をさばく必要がありますから、いちいちこの客はこうとかやってられないでしょう。外国人=ワサビたっぷりという雑なマニュアルで対処する店もチェーン店なら出てきてもおかしくない気がします。またこの機を活かして、良いワサビを自分ですり下ろす別メニュー&別料金制にするとかも、ありかもしれません。


 良い寿司屋は良い素材を使って、最高級のものを提供出来るが、最高級の店においそれと高いカネを払える外国人は来ない。よって「微妙に良いランクの寿司店」に「高級店に容易には通えない外国人」が「本場の寿司」を味わえる!と殺到する。

 上流文化・上流階級では発生しないことが、背伸びをした人達・店によって文化摩擦を起こすみたいなことも考えたのですけど、今回は大衆店なのであんまり関係なさそうですね。微妙なランクだけに妙にプライド&敷居が高い、ヘンな特権意識を持ってるとかありえそうだったんですけどね。

 高い寿司屋というのは、そういうお金を払える人しか行けないものですから、特権意識はあるでしょうね。マナーに異常にうるさくて、あれから食べろ、ああしろこうしろというのも上流社会・文化ではあるあるという気がしてますね。

 高級店ほどあまり変な特権意識はなく、そこにたどり着けなかった職人とかのほうが、こじらせてやらかしそうな気がします。寿司職人の世界知らないのでなんとも言い様がありませんが。


 まあ、昔の寿司は一軒の城みたいなもので、「大将」と言われるように、誇りを持ってやっていたわけですな。良い話だなぁと思って聞いたのは、一見で飛び込んだ寿司屋で注文したら、お得意さんの相手に夢中で適当な品を出されたと。

 で、食べてお勘定をしたときに、「これとこれは良いネタじゃない。こんなんでこの値段取ったらあかんよ」と指摘をして帰ったと。んで、しばらく間が空いて何気なく立ち寄った時、その大将は顔を覚えていて、見せつけるように値段以上にいいネタを提供したとか。

 人によっては良い話と感じるかわかりませんけど、個人的には良い話と感じましたね。つまり、客を「わかる人間」かどうかで判定する。「わかる人間」にはちゃんとしたサービスを提供する。職人としての誇りがあるわけですね。

 もちろん、じゃあわからない人間だからといってぼったくったり舐めた接客して良いのかと言われれば、当然そういうわけじゃないんですけどね。昔の寿司職人というのは「此奴出来るな!!」という値踏みとそれに応じたサービスをする裁量を持っていたわけですね。

 己も味わかりませんから、すっごく良いものを出されてもその価値をわからないでしょうからね。だったら別に無理しないで安いもの食っとけという話ですからね。金銭的な価値よりも、職人の裁量でわかる人間に応える。そういう世界は大将が粋なサービスをすればうまく回るわけです。

 逆に裁量が下手で接客態度もムチャクチャだったら、客も寄り付かないということになりますね。個々人が密接で、顔と顔でコミュニケーションしている。狭い地域・限られたコミュニケーションの時代にはそういう職人の裁量の方がよかった。無論、今のような世の中ではそれも無理、大衆による大量消費社会ですからね。

 そういう職人意識、「大将」というシステムの名残というのは確実にある気がしますね。高級店以外はもう消えてなくなってしまうのでしょうかね。そういえば子供のときは寿司行くときは、ちょっと遠い所の寿司屋に行ってましたからね。まだチェーン店もそんなにない時代は、「行き付けの寿司屋」というのが文化としてあったんじゃないでしょうか?


 まあ、そんな話もしつつ。オチとして今回の事件の危険な末路の可能性を指摘して終わりたいと思います。その土地によるんでしょうけど、「あそこの店は結構外国人の客がいるから嫌だ」(若い子連れの家族がうるさくて嫌だと同じ感覚で)と考える人が多い場合がありますよね…。そういう土地柄だったら、かえって「外国人の評判を下げて、外国人が寄り付かなくなることで、その分の利益は減っても日本人が安心して入れるようになって売上が伸びた。ああよかった、よかった」―になる可能性もあるわけですね…。

 今回の事件がそういう現地の人と非日本人との間の溝を深める結果にならなければ良いなと思いました。

*1:そういや、子供の頃わさび抜きを注文して二度もわさび入りが来たことがありましたね。それはそういうことだったんでしょうね。